見出し画像

日本での投資におけるマクロ環境の追い風

先日、2023年1月に単月での日本の経常赤字が、比較可能な1985年以降で過去最大の1.9兆円となったことについて考えました。2月は、2.2兆円の黒字となったようです。

4月11日の日経新聞記事「2月の旅行収支、コロナ前超え 訪日客回復で黒字に」を一部抜粋してみます。

訪日客の回復に伴い、旅行にかかわる国際収支の黒字が拡大している。財務省が10日発表した2月の国際収支統計(速報)によると、旅行収支は2239億円の黒字だった。前年同月と比べて16倍で、新型コロナウイルスの感染が拡大する前の2019年2月を上回る。貿易収支の赤字が続く中、訪日客の増加が日本経済の回復を下支えしている。

貿易や投資などの海外との取引状況を表す経常収支の全体でみると、2月は2兆1972億円の黒字だった。経常黒字は2カ月ぶりだ。

旅行収支は訪日外国人の消費額から日本人が海外で使った金額を差し引く。訪日外国人の増加は海外に出る日本人の勢いより顕著だ。

日本政府観光局によると2月の訪日外国人旅行者は147万人ほどで前年同月と比べて90倍近くになった。19年の6割弱の水準まで戻った。

2月の出国日本人数は53万人程度と前年同月比で10倍超だ。19年比では4割に届かない。19年2月より円安が進んだことも旅行収支の黒字幅を押し上げたとみられる。

ただ旅行収支を含むサービス収支全体では赤字が増えた。2月の赤字額は2204億円と前年同月比で79億円拡大した。ネット広告などの「その他業務サービス」の赤字が広がっている。

円安・資源高は足元で一服しているものの、輸入額が高止まりする構造は変わっていない。

貿易収支の赤字は6041億円と前年同月比で4091億円増加した。輸入額は8兆2484億円と9.8%増えた。石炭や液化天然ガス(LNG)などの価格上昇が響いた。輸出額は7兆6443億円と4.5%増だった。

経常収支=貿易収支(財貨の輸出入)+サービス収支(知的財産権等使用料、旅行など)+第一次所得収支(対外投資で得られる収益)+第二次所得収支(他国への援助など)です。

日本の貿易収支が恒常的に赤字の体質になっていることは変わっていませんが、旅行収支の黒字拡大も寄与して、2月は経常収支全体では黒字を伸ばしたようです。通年で経常収支が赤字になると日本国債等への信認が下がって大変なことになると予想されますが、今のところ通年では黒字のペースに戻してきたようです。

訪日外国人旅行者は、今後拡大が予想されます。

内閣府が10日発表した3月の景気ウオッチャー調査(街角景気)でも、3カ月前と比べての足元の景気を聞いた現状判断指数が1.3ポイント上昇の53.3で、2カ月連続で改善しています。家計、企業、雇用のすべてで、好不況の分かれ目となる50を上回りました。景気関連の指標は強弱入り乱れるものが出ており、しばらく神経質な展開が続きそうですが、前向きなものも見られます。

そのような中、同日付の記事「ウォール街、瀬踏みの来日」は、外国人投資家が日本へ再注目し始める中で、日本企業の動きの加速を促そうという内容です。(一部抜粋)

米ウォール街の大物が続々と来日している。マクロ環境には3つの追い風が吹く。第一は地政学。ロシアのウクライナ侵攻、米中対立、台湾や北朝鮮を巡る緊張は、マネーの関心を新興国から先進国に変えた。

第二は金融。9日に就任した植田和男・日銀総裁は金融緩和を続ける見込みだ。日本企業は資金が調達しやすく、割安に海外企業を買収して成長することができる。

第三は政策。2000兆円の個人金融資産を投資に導く岸田政権の政策は、研究開発や設備への投資という企業の成長戦略を支えるリスクマネーを株式市場に流す。

ところが、成長の担い手である日本企業が心もとない。「勇気を出すべきだ」。米投資銀行リンカーン・インターナショナルのジム・ローソン会長は、先月の日本企業訪問でチアリーダーのように振る舞った。金融環境が有利なのに、逆境の米ファンドと同じように買収を尻込みして成長の糸口をつかめない経営者が目立った。

様子見の余裕などないはずだ。株式市場に「価値破壊」と呼ぶ概念がある。現在の企業価値である純資産額を、将来の企業価値を映す株式時価総額が下回る状態だ。「今の経営が続けば企業価値が損なわれる」と成長性の低さを疑う投資家の警告を示す。東京証券取引所が先月、対象企業に改善策を求めたPBR(株価純資産倍率)の1倍割れはこうして起きる。

輸入価格の高止まりや賃上げによる人件費の上昇など、経営を圧迫するコスト増加の要因はいろいろあります。そのうえで、前述の景況感改善の動きもある中で、外国人投資家が日本に投資機会を見ているという状況もあります。賃上げをしながらも最高益を出している企業などは、さらに踏み込んで自社の成長領域への投資拡大を考えるべきだと言えるのかもしれません。

そのことが、経済全体の動きを底上げし、コスト増で苦慮する企業にもよい影響をもたらすことにつながるはずです。

以前は「ジャパンパッシング」(日本を素通り)と呼ばれていた状況もありましたが、外資による日本での半導体工場の建設など、以前とは異なる向きも見られ始めました。日本国内にいる私たちが、今が好機だということをもっと認識するべきなのかもしれません。

<まとめ>
外国人投資家は、日本に今投資機会を見ている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?