2月17日の日経新聞で「ヤマダ、EV・住宅でセット拡販 4月から、車種拡大も 個人向けに大型店で展示」というタイトルの記事が掲載されました。家電以外に住宅や電気自動車の販売に力を入れ始めていましたが、それらの取り組みをさらに強化するということについて取り上げた内容です。
同記事の一部を抜粋してみます。
同記事からは、3つのことを考えました。ひとつは、顧客に受け入れられやすい提案・売り方を考えることの大切さです。
「EV」と言われても、従来のガソリン車に慣れた人にとっては、まだまだイメージもわかず敷居の高い感じがあります(私もその1人)。住宅と合わせて提案することで、その敷居の高さを下げてくれそうです。
住宅という商品・サービスを探している人に、既に持っている(あるいは買い替え時期に来ていた)車という商品・サービスを同時に提案することで、新たにEVに興味を持ちやすくなります。
あるいは、これまで車にあまり関心がなかった人も、住宅という商品・サービスを探す過程で新たに車にも興味を持つかもしれません。車所有が生活上当たり前の概念の人も多いかもしれませんが、首都圏を中心に車所有をしていない人も多くいます。同記事のスキームがあることで、住宅購入のタイミングで新たに車所有に興味を持つ、という流れも一定数期待できるのではないかと思われます。
2つ目は、ひとつめと関連しますが、商品・サービスの定義を変えることの有効性です。
関連記事「仕掛け人は元トヨタ社員、EVを「蓄電池として売る」」では、次のように説明されています。(一部抜粋)
上記からは、自社による商品・サービスのカテゴリーとして、EVを「車」ではなく「電池」と位置づけていることがうかがえます。
車を取り巻く環境も変わっています。かつては、車の個人的な利用=自己所有かレンタカーぐらいがその形態でしたが、カーシェア、リース、サブスクなどの形態も出てきました。かつてのような車の自己所有をするべき理由が減っています。
しかしながら、「電池」と位置づけることで自己所有するべき新たな理由となります。これまでの車ユーザーに加えて、これまで車に縁遠かった消費者(私もその1人)も新たに惹かれる理由になりえます。
自社・自身の提供している商品・サービスに対して、別の意味づけをしたうえで提案できないか。考えてみたい視点だと思います。
3つ目は、車という商品・サービスも今後二極化の動きが進んでいくだろうということです。
ヤマダグループで住宅と合わせて車を購入しようとする層は、蓄電池あるいは移動手段という生活ツールの目的で、車に利用価値を見出す消費者だと想像されます。おそらく、これまで以上に、車に対して「良いものを安く手に入れたい」という視点を持ち込むものと思われます。
他方で、移動手段という目的もあるものの、運転を楽しむ、あるいは自身のステータスという目的で車を購入しようとする層も、少なくとも当面の間は一定数存在し続けます。この層は、高級車と言われる価格帯を従来通り、あるいは従来以上に意欲的に選び続けると考えられます。
「車持つなら、今はカローラ、いつかはクラウン」といった、車の消費者をひとくくりにするマスマーケティング的なアプローチは、今後ますます通用しにくくなると思われます。同じ車でも、何を目的として買う消費者を自社のお客さまと見立てて、それに合った車をいかに提案していけるか。これは、どんな商品・サービスを扱う事業であっても、今後さらに必要となる共通の視点だと考えます。
<まとめ>
商品・サービスの定義を変えて、これまでと違った提案をする。