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人材の流入を実現するには

6月15日の日経新聞で、「年75万人の外国人 いまの人口規模を維持するなら」というタイトルの記事が掲載されました。日本が今の1億2000万人程度の人口を維持するなら、毎年75万人程度の人口流入が必要ということを説明しているものです。

同記事の一部を抜粋してみます。

これからどのぐらい多くの外国人が日本に来るかは将来の総人口を左右する。国立社会保障・人口問題研究所が4月に公表した「将来推計人口」は2040年時点の外国人入国超過数を0〜100万人の範囲で8つのパターンに分けて分析した。

国勢調査によると、20年の日本の人口は1億2615万人。40年になってもこの水準を維持するためには年75万人以上の外国人に日本に来て生活してもらう必要がある。

それぞれのパターンごとに40年以降の人口の推移を試算すると、人口が1億人を割る年は外国人の入国超過が0なら49年、10万人なら53年、25万人なら62年となった。外国人が75万人以上なら70年まで安定して1億2000万人台を維持できる。

日本社会で外国人が生活しやすくするには賃金や雇用制度といった労働環境を改善する必要がある。身近な外国人とどうやって共生していくかという日本人の意識にも影響するとみられる。

移民受け入れ大国として実績があるのはカナダです。「移民・難民・市民権大臣」という専任のポストがあることにも表れています。6月5日の日経新聞記事「カナダ移民相「大量の移民受け入れ継続」 労働力補う」では、カナダのショーン・フレーザー移民・難民・市民権大臣への取材記事が紹介されています。(一部抜粋)

カナダが移民の受け入れを加速する。ショーン・フレーザー移民・難民・市民権大臣が日本経済新聞の取材に応じ「労働者不足を補うため、今後も大量の移民を受け入れる必要がある」と述べた。医療や住宅など特に人手不足が深刻な産業分野に、移民を重点配置していく考えだ。

カナダは2022年に過去最高となる43万人の移民を新たに受け入れた。政府は25年に移民の受け入れ人数を21年より23%多い年間50万人に増やす計画を掲げる。フレーザー氏は25年以降もこのペースを維持または上回るとの見方を示した。「カナダはより多くの移民を受け入れ続けるだろう」と述べた。

カナダが移民を増やす最大の理由は労働力不足だ。カナダの人口は4000万人弱だが22年4〜6月期には人口の2.5%に当たる100万人もの求人が発生した。フレーザー氏は「地域経済とその雇用を守るため、必要な労働者を集めなければいけない」と語った。労働力不足が続けば「税収でまかなう公共サービスの維持にも支障が出る」と懸念する。

人口動態の変化に伴い、必要とされるサービスが変わっていることも焦点だ。高齢化が進めば医療サービスの充実が不可欠となる。医療従事者のほか、住宅建設の人材も不足している。こうした課題解決のため「多くの移民を受け入れ続ける必要がある」。特に小規模な自治体では地元経済を守るために「長期間に及ぶ人材確保が必要」だ。

手は打っている。2022年に移民・難民保護法を改正し、カナダの経済的優先順位に基づき、受け入れる移民の属性を選択する権限を大臣に与えた。フレーザー氏は5月31日、医療、技術、農業、熟練工などで実務経験を持つ移民を重点的に受け入れる手続きを始めたと発表した。「特に人手不足が顕著で、その状態が今後2〜3年続く部門にした」という。

一方、不法移民に対しては厳正に対処する方針も示す。カナダ国内で移民受け入れに慎重な保守層への対応にも腐心する。「移民が社会問題を悪化させるのではなく、軽減させるのに役立ち、地域社会に利益をもたらすことを示す」。フレーザー氏は医療従事者などの重点的な受け入れ施策で、国内不安の払拭に努める。

カナダでは21年、人口の23%にあたる830万人以上を移民や永住者が占めた。1921年の22%を上回り過去最高の割合となった。2016〜21年にカナダに新たに来た移民のうち、最も多かったのはインドで、全体の19%を占める。フィリピン(11%)、中国(9%)が続く。

カナダの人口4000万人で年間50万人移民受け入れということは、人口1億2000万人の日本で当てはめると150万人相当ということになります。イメージとしては、カナダの半分ぐらいの取り組みが必要ということですが、カナダと受け入れ基盤が雲泥の差の日本では相当高いハードルとなります。

カナダは、移民からの選ばれやすさとして公用語が英語であることが挙げられますが、それ以外にも相応の賃金が期待できることや差別が少ないこと(局所的にはいろいろあるのかもしれませんが)があると言われます。上記の出身国構成を見ても、そのことが感じられます。

上記記事にあるようなカナダの取り組み例を企業活動という単位の組織に置き換えて考えた場合、例えば以下のように参考になる考え方が得られると思います。

・自社が今後必要な採用者数の見積もりを、会社の存続を左右する一大プロジェクトとして取り組み、計画的な採用を目指す。

・(最終的に採用の決定は会社が熟考し行うとしても)採用過程の判断で事業部責任者を巻き込んだり一定の裁量を持たせたりする。

・中途採用に慣れていなかった会社が中途採用をはじめるのであれば、社内でそれに不安を感じる保守層が存在する。そうした保守層に対して、中途人材が社内の問題を軽減させるのに役立ち、利益をもたらすことを示す。

・いろいろな属性をもった社員を色眼鏡で見ないようにし、機会公平に受け入れる。

・採用した人材を、いい意味で「自社化」する。すなわち、企業理念の浸透や求められる能力の開発を行い、社風をつくる。

・(英語を社内の公用語とした一部の企業のように)日本語以外を公用語にすることは多くの企業で難しいが、それでも会社として日本語以外の言語で対応できることも増やすようにして、外国人採用も積極的に進める。

国という最も大きな単位の組織で人員規模拡大の成果を上げている例は、参考になる視点がいろいろあると思います。

<まとめ>
人材の流入を実現するには、流入が必然となる取り組みが必要。

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