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「査定改革」を考える

先日、社員の評価制度を再構築している企業様と打ち合わせる機会がありました。

「これまでは、社員が何をしたら評価されるのか、明確でなかった。評価結果のフィードバックも十分になかった。互いの納得感がある中での評価ではなかった。今着手している制度リニューアルによって、評価すべき要素が評価され、かつなぜそれが組織として評価対象となるべきなのか理由が語れるようになると感じる」というお話でした。

4月22日のヤフーニュースで「【日本ハム】好調の裏に〝査定改革〟 新庄監督「やる気にさせるっていうことは大事」という記事が掲載されました。一部抜粋してみます。

今季の日本ハムは強い――。新庄剛志監督の就任以来、2年連続最下位チームが3年目にして大躍進中だが、その裏には新庄流の緻密な「査定改革」があるという。

21日現在、日本ハムは18試合を終え10勝7敗1分けの貯金「3」。新庄政権誕生以来、過去2年の同時期成績は2022年6勝12敗、23年5勝13敗で、比較すれば大変身ぶりは明らかだ。

要因として選手個々の成長や昨季失策を重ね続けた本拠地・エスコンフィールドへの野手の対応力が挙がる。新庄監督も「あの秋季キャンプの練習がね。やっぱり(選手の)脳に残ってると思う」と話すように、計12日間にわたって一軍選手ほぼ全員が「缶詰め状態」で猛練習した昨年11月の成果が表れている。今季ここまで1点差ゲーム計5試合を4勝1分と無敗なのもこの鉄壁な守備のおかげだろう。

だが、勝てる要因はそれだけではない。ここ2年で変わりつつある選手の「査定」も大きい。

新庄監督は選手のやる気を高めるため積極的に査定改革に着手。例えば投手であれば四球減や回またぎ、野手では四球による出塁や進塁打などが安打と同様な評価を得られるように改善させたという。

特に中継ぎ投手はこのところ防御率0点の金村、河野ら勝ちパターン組が酷使気味だが、この査定のおかげで高いモチベーションを維持している。指揮官もこの査定改革には手応えを感じ始めており、19日に回またぎを敢行させた河野について、こう話す。

「河野君にしてみれば『やったー』となる。査定が上がるからね。(選手を)やる気にさせるっていうことは大事なので。(査定担当にも)回をまたいだら上げてくれって言っている。」(新庄監督)

ある選手に聞いても査定に関しては納得済みで「べンチのサイン通りに動けば年俸に反映されますし、いろいろな部分が評価されるようになりましたから。選手にとってはうれしい限りです。中継ぎ投手などは他球団以上に細かい査定ポイントもあるようなので。みんな投げたがる? でしょうね」と明かす。

プロ野球で、上記に例示もある四球選びの意義を訴えて査定を上げ、成果に導いた例としては、昨年念願の優勝を果たした阪神球団の例が知られています。

プロ野球PRESS「「四球の年俸査定ポイントを上げてくれ」阪神・岡田彰布監督は開幕前にフロントに直談判…急増四球が“あの球界のエース”の撃破を生んだ」によると、次の通りです。(一部抜粋)

私が四球の増えた理由を聞いたら、岡田監督は「これまでボール球を振っての凡打が多かったんでね」と発言した上で、「開幕の前の日に球団に言うたんですよ。フォアボールの(査定)ポイントをちょっと上げてくれと。了解を得てね。前日のミーティングで選手に(四球の査定ポイントが上がったことを)言うたんですよ」と教えてくれた。

プロ野球選手の年俸は、一試合、一試合の「走攻守」のすべてをポイント化して査定し、その合計ポイント数をもとに来季の年俸が決まる。項目によってポイントの基本数が違い、シングルヒットよりも二塁打、三塁打、本塁打のほうが高い。タイムリーヒットとなると、打点のポイントが加算されることになる。

四球にも基本のポイント数が設定されているわけだが、その四球の査定ポイント評価をアップすることを岡田監督が球団に掛け合って、フロントの了承を取り付け、開幕戦の前日のミーティングで選手に伝えたというのだ。

ただ「ボールを振るな、四球を選べ」と指示するよりも、それが給料に跳ね返ってくるとなると説得力が違ってくる。もちろん、選手たちは査定アップを意識してプレーしているわけではないが、モチベーションアップにつながることは確かだ。また結果的に四球を選ぶことによって、チームの得点や相手に与える影響は大きい。

打撃の神様と呼ばれた川上哲治さんは、「ヒット1本打って、フォアボール1個、選んだら(打率は上がり)首位打者だ」とよく言っていた。ボール球を見極めることは、バッティングの成績を大きく左右するため、打者の調子にも影響を与える。打者はボール球を振ってしまって崩れていく場合が多いため、四球の影響は計り知れないのだ。

私はスポーツにはあまり詳しくなく、野球も何となく見ることがある程度です。年俸は「チーム成績への貢献もそうだが、目立つ個人成績や集客への貢献を残した人が、たくさんもらえるのでは」程度の認識しかありませんでした。想像以上に、同記事にあるような細かい査定項目で年俸が決まっていることを初めて知り、意外でした。

同記事を参照すると、四球にはチームの勝利につながる価値、及び選手本人にとってもシーズン通年の調子を整えることにつながる価値が高いことがうかがえます。

しかしながら、素人の憶測ですが、四球を選ぶよりヒットやホームランを打ったほうが、野手としてはうれしいだろうと思います。よって、四球を選ぶより、打ちにいってアウトのほうを選ぼうとする野手も少なくないのではないかと想像します。

ましてや、査定で四球がさほど評価されなければ、なおさら積極的に四球を選ぼうとする意欲は喚起されないのだろうと思います。そこで、年俸にも直結する査定方法を変えて、四球の価値をメッセージとして伝え、行動変容を促す。そして成果につながった、というわけです(同記事から、四球以外の要素も見受けられます)。

ショービジネスの要素もあり、会社員に比べて自己顕示欲も高い=自分のやりたいようにプレーしたがる人も多いだろうと想像されるスポーツ選手であっても、査定項目が行動変容を促すというわけです。会社員であればなおさら、査定の与える影響は小さくないのではないかと思います。冒頭の企業様のお話も、そのことに通じるものがあります。

査定がモチベーションの本質だとは思いませんが、査定は組織の考える、本人が取り組むべき大切な要素を伝えるメッセージとなるものです。軽視すべきではないというのを、改めて感じます。

<まとめ>
査定改革は、行動変容を促すメッセージになる。


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