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社員の子どもが入社してくる理由

先日訪問した企業様で、「(社員の)○○の息子です」と、社員の子どもも社員として入社しているという紹介を受けました。他の会社でも時々「社員の子どもが入社してくる」という同様の話を聞くことがあります。ここで言う「社員の子ども」は、経営者(雇用者)の後を継いだ親族の後継者のことではありません。従業員(被雇用者)である社員の子どもです。

社員の中に社員の子どもがいるということは、その会社がよい会社であろうと考えられるひとつの事象ではないかと思います。もちろん、これは結果としての事象です。必要条件ではありません(社員の子どもが入社してこない会社はよい会社ではない、というわけではない)。

社員の子どもが入社してくるには、3つの要件が必要ではないかと考えます。要件とは、欠くことのできない必要な条件です。3つのどれかひとつでも欠けると成立せず、すべて同時に満たすことが必要と考えられるものです。ひとつは、社員が、自身の尊敬できる良い指導者やリーダーのもとで働いていることです。

経営学者のドラッカー氏の言葉に「重要なことは、わが子をその人の下で働かせたいかと思うかである」があります。

社内で指導者やリーダーと言われる立場の人が、社内外から認められる成功者や良い仕事をしている人であれば、その指導者やリーダーについている人はその人たちを見習おうとします。

「私はわが子がその人のようになってほしいかを考える」とドラッカーは言っています。社員自身が「そのような人になりたい」と思える人が社内に存在していれば、自身の子どもにもそのようになってほしいと思えます。

成功者や良い仕事をしている人となるためには、その仕事をするための能力が必要となるのはもちろんですが、それ以前に、他者からも認められる誠実な人、信頼できる人であることが必要なはずです。そのような人でない人についている社員は、自分もそのようになりたい、自分の子どもにもそのようになってほしいとは思いません。

2つ目は、会社に将来性を感じていることです。

良き指導者やリーダーのもとで日々満足して仕事ができていたとしても、会社の将来性に不安を感じていたら、自分の子どもに自社に入ってほしいとは思いません。将来性とは、再現性と置き換えて考えてもよいかもしれません。縦と横での再現性の視点です。縦とは時間軸の視点です。

「今はよいが、この先の世の中でこの会社は通用しなくなるのではないか」と感じられたならば、自分の子どもにお勧めはできない職場となります。もちろん、私たちを取り巻く社会経済環境は変わっていきますので、今やっていることが未来永劫通用する会社などありません。

そのうえで、「この会社は、環境変化が起こっても通用する技術や何かを持っている」あるいは「環境変化を前向きに捉えてビジネスモデルを変えていける組織力がある」などがあれば、お勧めできる会社となります。

もしくは、「会社がどうなるかはわからないが、ここで仕事をすればその先どんな仕事をすることになっても通用するような貴重な経験ができる職場だ」と言える会社であれば、やはりお勧めできる会社となります。

横の再現性とは、局所的ではなく、全社的にそうであることです。「自分の部署や自分のついている指導者・リーダーはたまたま良いが、他の部署でははずれが多い」などだと、やはり子供にお勧めはできないでしょう。

3つ目は、子どもに対して自身の会社や仕事のことを話していることです。

当然ながら、親から聞かずして親の仕事や勤めている会社のことは知りようがありません。親が家庭内で、子どもに仕事や会社のことを話すということは、それだけ愛着が持てているということでもあります。

しばらく前から「ワークライフバランス」といって、就業時間と就業外時間をきっちり分けることが大切だということが言われてきました。確かに、物理的に体を仕事に従事させる時間は切り分けたほうがよいかもしれません。そのうえで、仕事や会社に関係することを考えることは、就業時間外の時間であっても積極的であってよいと思います。

というよりも、仕事や会社に対して前向きの状態であれば、就業外時間であっても自然と仕事や会社に関係することを考えようとするはずだと思います。家庭内で子どもに対して仕事や会社のことを話すということは、その延長線上にある行動だと言えます。だとすると、家庭内でそうした会話がまったく出てこないならば、今の仕事や会社がその人にとって主要な存在にはなりえていないということなのかもしれません。

子どもが入社してくる社員がいるならば、その社員に話を聞いてみるとよいのではないでしょうか。(親が)自身の尊敬できる良い指導者やリーダーのもとで働いている、会社に将来性を感じている、子どもに対して自身の会社や仕事のことを話している、が成立しているのではないかと思います。

マネジメントとしては、どうすればその状態が維持していけるか、あるいは、どうすればその人以外の社員も同様になるのかを考えて取り組むとよいのではないかと思います。

<まとめ>
わが子をその人の下で働かせたいか。

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