PMIとDIを考えてみる

自民党新総裁も決まり、今後新たな政権運営が展開されていきます。その環境下で、先週も経済に関するニュースが発表されました。その中から、今日はPMIとDIについてテーマにしてみます。

購買担当者景気指数は、企業からみた景況感を示す経済指標です。「Purchasing Managers' Index」の頭文字をとって「PMI」と呼ばれています。購買担当者に生産や受注、価格動向などを聞き取り、その結果を指数化したもので、50を上回れば前月より拡大、下回れば縮小を示します。つまりは、50が好不況を判断する分かれ目とされています。

(以下、日経新聞のデータを参照)先週、中国の9月の製造業購買担当者景気指数(PMI)が49.6という発表がありました。50を下回っています。1か月前の投稿でも中国の製造業PMIを取り上げましたが、そのときは8月が50.1でぎりぎり50を上回っていました。50を下回るのは、2020年2月以来1年7か月ぶりということです。2020年2月というのは、中国が他国に先駆けてコロナ禍が広がり始めた初期の時期です。

購買担当者は取引先の動きや製品の需要、自社の生産計画などを見極めたうえで原材料を仕入れます。よって、これから先の景況感を映す先行指標となります。1か月前の投稿では、その先行指標の悪化をアラートと認識しておくべきということを取り上げたのですが、今回さらに悪化したということになります。

要因として、恒大への懸念とそれに関連しての不動産市況に対する懸念、電力不安、資材がうまく行き来しないことによる供給懸念などが挙げられています。中国に関しては、他にも学習塾やゲームに関する規制などもあり、これらも市況に影響していることでしょう。日経新聞によると、国慶節(建国記念日)を祝う大型連休が1日に始まったものの、直前に新型コロナウイルスの感染が一部地域で発生し、期間中の国内旅行者数は新型コロナ前の2019年と比べて8割程度にとどまる見通しとあります。個人消費も停滞しそうです。

他方、日銀が1日に発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)では、大企業製造業の現状の景況感を示す業況判断指数(DI)はプラス18となりました。前回の6月調査から4ポイント改善し、改善は5四半期連続となります。大企業非製造業の同DIもプラス2で小幅に改善しました。

業況判断DIは、景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた値です。今回の調査は、19都道府県で緊急事態宣言が発令中だった8月26日~9月30日での実施結果ということです。この期間中ながら前回よりプラスに改善したのは、ポジティブな材料です。

しかし、同時に懸念材料も見て取れます。
まず、上記は大企業です。中小企業の現状判断DIは製造業がマイナス3で4ポイント改善、非製造業は1ポイント悪化のマイナス10です。どちらもマイナス圏のままです。

大企業でも自動車に限ると、大企業・自動車の現状判断DIはマイナス7で6月調査から10ポイント悪化となりました。部品メーカーが多い中小企業・自動車も4ポイント悪化していて、供給制約等の影響をいち早く反映されていると見て取れます。

さらに、現状の景況感ではなく、3カ月後の見通しを示す先行き判断DIでは、大企業製造業が4ポイント悪化のプラス14、大企業非製造業が1ポイント上昇のプラス3となったようです。製造業は悪化となり、非製造業も上昇幅が縮まっています。中小企業・自動車の先行きに至っては、さらに6ポイント悪化する見通しと発表されています。

企業がどれだけの在庫を抱えているかを指標化した製品在庫率指数があります。直近の同指数は、5月108.8、6月108.5、7月109.8となっています。在庫がはけていくのが足踏みし、若干増え始めているようにも見えます。

これでも、コロナ禍の影響が最も厳しかった2020年5月の150.5と比べると改善されてはいます。しかし、アベノミクスの始まった2013年度の93.4や景気後退入り前の2018年度の105.1と比べると、企業が在庫を抱えている状況と言えます。半導体が品薄という情報からは在庫切れを連想しますが、全産業の企業活動全体でみると在庫が増える傾向にすらあるのが、最近の状況だというわけです。

こうしたデータ等を総合的に勘案すると、「緊急事態宣言も解除となり、政権も新しくなり、なんとかミクスが新たに始まってくれれば景気が浮上する」と単純には想定するわけにはいかないと思われます。もちろん、今後世界的にコロナ禍が急速に収束すればその可能性もありますが、いましばらくは慎重な見方をしておくべきでしょう。

他方、コロナ禍が世界的にも依然として収束せず、日本も第6波などが来れば、今後景況感が想定以上に急速に再降下する可能性もあります。

日本の経済は、以前にも増して海外市場に依存しています。海外市場の中でも、消費や生産活動の最上流に位置しているのが中国という面があります。その意味では、中国のPMIは、日本経済にとって最上流の先行指標ということができます。その指標が二期連続して悪化し、製造業PMIが50を割ったというのは、注意してみておくべきだと言えるでしょう。

企業活動においてもいましばらくは、運転資金確保や仕入れ活動の調整などに神経質になるべき局面が続くのではないかと思われます。

<まとめ>
景気の先行指標の今後に引き続き注意する。

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