マガジンのカバー画像

小説「真夜中に目が覚めた」

15
「真夜中に目が覚めた」で始まる、結婚とは、夫婦とは、家族とは、幸せとはを綴った短編連作。
運営しているクリエイター

#すき焼き

【第九夜】探し物

【第九夜】探し物

 真夜中に目が覚めた。

 また夢を見た。行きつけの喫茶店を飛び出し、開かないドアをただ見つめて立ち尽くす自分。叶わない想い。届かない気持ち。あの時から、俺は立ち尽くしたままなのかもしれない。

「なんかあったら、まあなんもなくてもさ、あいつの代わりに手貸すから、いつでも連絡してこいよ」

 佐知子の告別式の時、俺は美幸ちゃんにえらそうにそう言ったけど、本当は人の心配をしている場合では

もっとみる