【ショートショート】シンデレラの靴
魔法使いは、かぼちゃの馬車、美しいドレス、ガラスの靴を用意しました。
シンデレラは喜んでドレスを身につけ、靴を履こうとしました。しかし、サイズが合っていません。
「サイズがふたつ違うわ」
「数時間だけだ。頑張りな」
魔法使いは冷たく言い放つと姿を消してしまいました。
「痛い痛い。ああ、痛い」
パーティ会場の隅で椅子に座り込み、しくしく泣いているシンデレラの姿を見た王子様は、
「どうしたのですか」
とたずねました。
「靴のサイズが合わなくて足が痛いのです」
「可哀想に。おお、これはなんと。ガラスにこんな使い方があったとは」
王子様は靴を脱がせると、
「宮廷硝子職人を呼べ」
とお命じになりました。
「このお嬢さんにぴったりの靴を作ってさしあげよ」
「はっ」
職人はさっそくサイズを測り、工房へと戻っていきました。さすがは宮廷職人、あっと言う間にぴかぴかの靴を作って参上いたします。
「ぴったりですわ。まるで雲を履いているよう」
シンデレラはその場で踊り出しました。
「いやあ、これは美しい」
王子様はガラスで靴を作るという発想に夢中です。城下には特注品を作るガラス靴屋がたくさんできました。
いつまでたっても連絡がないので、シンデレラはおそるおそる登城しました
「おお、そなたはあの時の! 探していたのですよ。ガラスの靴は大評判です。売上げの一パーセントを差し上げましょう」
シンデレラは突然、金持ちになりました。
めでたし……なのかな。
(了)
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