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【ショートショート】警告社会

 神社の前の小道を歩いていた。
 前方から交通ロボットがやってくる。
「あ、やばい」
 と思った瞬間、「どん」と大きな音がして、すぐ目の前の路面に爆煙が立ち上った。ロボットの腹が開いて、威嚇砲が突き出している。私は「ひっ」と情けない声を出して、頭を抱え座り込む。
 またやっちまった。
「ミギガワツウコウ」
 と人工的な音声が頭の上から降ってくる。
 交通ロボットはそのままなにごともなかったかのように道を歩き去った。
 私はこそこそと右側に移動した。
 いかん。まだ胸の動悸がする。ポケットからタバコを取り出し火を点けた。
 しゅっと音がして、咥えていたタバコが吹き飛んだ。
 道の角から風紀ロボットが睨んでいる。空気銃のようなもので撃たれたのだろうか。まるで狙撃兵だな。
「ロジョウ喫煙キンシ」
 人工的な音声が風に乗って聞こえてくる。
 ああ。なんて初歩的なルール違反を。
 もうよけいなことはなにもしないぞと私は決意する。
 右側通行をつづけ、ほうほうの体で自分の家までたどり着いた。
 ドアホンを鳴らすと、家庭管理ロボットの顔が表示された。
「オミヤゲヲ提示シテクダサイ」
「えっ」
「オミヤゲガナイト入室デキマセン」
 誰が決めたんだ、そのルール。

(了)

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