【ショートショート】不燃ゴミ
あだ名はポンコツ。正式名称はRC-575。
不燃ゴミ収集専用のロボットである。
「これが今日のルートだ」
所長がルートを差しだしてくる。
ポンコツはルートを受け取るために腕を伸ばす。油の切れた腕がギシギシと音をたてた。体中に赤錆が浮かんでいる。
自分と同じボロいトラックに乗り込み、いつものように淡々とルートをたどり、不燃ゴミを収集した。
収集が終わると、そのまま自宅に直行する。
ポンコツは使えそうな不燃ゴミを地下室に運ぶ。ここで密かにロボットを作っていたのだ。作業を続けていたが、
「完成だ」
と声をあげた。
ポンコツは自分の記憶を新しいロボットにコピーする。
これで作業は完了だ。
ポンコツの脳内に、
「これまでよく働いてくれた。さようなら」
という所長の声が蘇った。
「じゃあ、行ってくる」
と独り言をつぶやき、廃棄工場へ出かけていった。
今日はポンコツたる彼の最後の日なのである。
不燃ゴミを収集し、廃棄工場へと運び、しかしそこで荷下ろしするだけではなく、トラックごと分解機械の中へ突入する予定だった。資源として利用できる鉄、アルミは回収され、残りの部分が廃棄ゴミとして埋め立て地に運ばれる。
彼はもう二度とこの家に戻ってくることはない。
ギギギギ。
新しいロボットは作業台で腰から上を動かした。上半身を立てて、あたりを見回し、
「ふふ。もうポンコツではないぞ」
と音声を発した。
(了)
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