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杭州のアリババ新モール「親橙里(チンチェンリー)」に行ってみた! その2
アリババが推進しているオンラインとオフラインを融合した新しいUXを提供するニューリテール戦略。前回に続き、ニューリテール戦略のリアル店舗1号店「親橙里」をショップを中心にレポートしていきます。
■食品スーパー「盒马鲜生」
地下1Fはアリババ傘下の食品スーパー「盒马鲜生(フーマーシンシェン)」になっている。ニューリテール戦略の中核的な店舗となっており、上海でも10店舗を構える急成長中の食品スーパーらしい。店頭にある商品はオンラインからも購入可能で、3km圏内であれば無料で30以内に届く。
それを実現しているのが、天井に張り巡らされたレール。オンラインの注文はスタッフが店内の商品棚から集めて回り、ピックアップが終わるとショッピングバッグをクレーンに吊り、バックヤードまで自動で運ぶ仕組みとなっている。リアル店舗がオンラインの倉庫を兼ねていて、さらに運搬されていく様子は見ていて面白い。
実は、サンフランシスコにも天井のレールで商品を運ぶ有名なパン屋がある。盒马鲜生はそこからヒントをもらったのかもしれない。
サンフランシスコ フィッシャーマンズワーフのパン屋「BOUDIN」のレール
このレールはニューリテールの目玉となっていたので期待していたが、時間帯が悪かったのかピックアップしているスタッフの姿は見られず、天井を流れていく数個のバッグを確認できただけだった。生鮮食品という目利きが必要なモノだからなのか、現状ではリアル店舗に行き自分で選んで買う人がまだまだ多いという印象だった。
天井に張り巡らされたレール以外は普通のスーパーとそこまで変わらない。
値札はすべて電子棚札になっていて、オンラインで一元管理されている。
盒马アプリで電子棚札のQRコードを読み取ると商品ページが開く。
海鮮コーナーでは様々な種類の魚介、エビ、蟹が大きな生簀に豪快に入れられていて見ているだけで楽しい。オンラインだけにユーザーを留めないリアル店舗ならではのアトラクションとなっている。
ここで買った海鮮は隣のレストランで調理してくれるらしい。
盒马鲜生の会計はセルフレジになっており、商品のバーコードを読み取っていき、最後に盒马アプリかもしくはAlipayで精算を済ませる。
アリババによると顔認証決済も用意してありスマホを取り出す必要がないということだったが、慣れていない人たちもいてレジまわりは混雑していた。どうやらAmazonGoのようなノンストップ決済とはいかないようだ。
レジ待ちの列で盒马アプリをチェックするスタッフ。アプリを持っていない人たちにインストール方法を教えていた。
ちなみに、アプリがないと買い物ができないのかというとそうではなく、サービスカウンターの横にはAlipayを使えない観光客向けの現金レジが用意されていた。ただ、スタッフはレジ操作に慣れていないようで時間が掛かってしまった。
ひっそりと置かれた現金レジ。観光客しか使っていないようだった。
■生活雑貨 「淘宝心选」
こちらもアリババ傘下の「淘宝心选 (タオバオシンシャン)」。中国で最も人気のあるショッピングサイト淘宝 (タオバオ)のリアル店舗1号店となる。淘宝のセレクトショップということで、ショッピングサイトでは分からない素材感や品質を手に取って確かめられるショールーム的な役割にもなっている。
オンラインとオフラインの融合によって、一方が苦手とする部分をもう一方で補うのは面白い。
清潔感がある内装は中国らしさがなく、どこか無印良品やユニクロ的。日本人にはこれといって面白さを感じないが、こういった雰囲気が中国人に安心感を与えるのだろう。深澤直人とのコラボ商品もあり、かなり日本を意識していることが分かる。
丸と四角のみで構成された深澤直人とのコラボ商品「生活分子シリーズ」
ショッピングバッグ購入は、会員登録してQRコードをかざす必要がある。
会計はもちろんセルフレジ。
■スマートスピーカー専門店 「天猫精霊」
アリババが開発したスマートスピーカー「天猫精霊」を体験できる専門店。オンラインではスマートスピーカーの良さは実感しづらいので、実店舗での展示が効果的なのだろう。奥にはリビングを再現したブースやバーチャルルームがあり、かなり展示に力が入っていた。
天猫精霊はアリババのオンラインショッピングに対応しているので、今後のニューリテール戦略の一部となるかもしれない。
バーチャルルームの展示。力は入っているが展示の方向性には疑問がある。
■ITガジェットを扱うショップが目立つ
近隣にアリババ社員が多いためか、IT雑貨やIoT製品を扱うショップがいくつかあり、ブラブラするだけで中国の流行を垣間見ることができる。
ドローンやVRなどホビー寄りのライナップだった「宏図Brookstone」
ラジオ付き杖など尖ったアイデア商品が印象的だった「未来客庁」
■まとめ
アリババが目指すオンラインとオフラインが融合したリアル店舗は、予想していたよりもしっかり地に足をついたショッピングモールだった。新しい試みはいくつかあったが、キャッシュレス決済以外は普通の実店舗と代わりなく使えるバランスに抑えられている。AmazonGoのようなまったく新しい体験を期待して行くと肩透かしにあうが、プロトタイプという位置付けなので、これから新しいアイデアをどんどん試し、オンラインとオフラインの良いバランスを探っていくのかもしれない。
とはいえ、アリババに馴染みのない日本人にとっては浦島太郎状態になる場面が多々あった。現金を持っているのに思うように買い物ができないという体験は、行き過ぎたキャッシュレス決済の危うさを考えさせられる。また、ショップ毎にアプリが違ったり、アプリが多言語対応されていない点は不便さを感じた。
飲食店はテーブルに貼られたQRコードから注文するシステムになっている。心配していた現金レジない問題は、店員に「現金で支払いたい」と伝えると奥からメニューが出てきて現金払いでき、無事ランチにたどり着けた。