昔から、日本人の暮らしと切っても切り離せない存在であった植物のひとつが真菰（マコモ）であったこと初めて知りました。稲作が伝わる以前の縄文時代より、食料にしたり屋根を葺いたりなど、衣食住すべてに利用された歴史と文化を再発見しています。

「神の宿る草」マコモ

• 古事記において真菰（マコモ）は、天地開闢（かいびゃく）の神々の一神として記述されています。『古事記』では、八百万神に先駆け、天之御中主神（アメノミナカヌシノカミ）、高御産巣日神（タカムスヒノカミ）、神産巣日神（カミムスヒノカミ）の 造化三神がまず現れます。その次に生まれた神が宇摩志阿斯訶備比古遅神（ウマシアシカビヒコジノカミ）と天之常立神（アメノトコタチノカミ）で、この宇摩志阿斯訶備比古遅神こそが真菰であると言われ（神名「ウマシ」は「うまし国」などと同じ良いものを意味する美称、「アシ」は葦、「カビ」は黴と同源で醗酵するもの、芽吹くものを意味する。「アシカビ」とは「葦の芽」であり活力を司る神が真菰と解釈され）ています。

• 日本で最も古い神社の一つである出雲大社で、毎年６月１日に「涼殿祭」という行事があり、この中で「真菰祭り」という神事が執り行われています。この祭りでは、神職によって青々とした真菰が一本一本敷かれ、その上を御幣を奉持した國造が歩みます。参列者たちは一斉にこの真菰を競ってもらい受け、もらい受けた真菰をお風呂に入れると無病息災のお蔭があり、また田畑に埋めると五穀豊穣のお蔭があるというのが古くからの言い伝えです。

• 歴史のある神社・格の高い神社において、御本堂のしめ縄として真菰が使われています。真菰で編んだ草枕が、宇佐八幡宮・神田明神、その他の神社のご神体とされています。川越八幡宮などの神社に川越のマコモ農家が毎年、筵やしめ縄を作って納めていると先日お聞きしました。

• 筵（むしろ）は今は稲わらで編むことが一般的ですが、菰で編む筵が真のむしろであることから、 真菰といわれるとの話もあります。お釈迦様は真菰で筵を編み病人の治療をしたと伝わっています。

• 祝い事などで見られる、日本酒の四斗樽を包む「菰被り（こもかぶり）」や、冬の金沢の風物詩「菰掛け（こもかけ）」などは、いずれも真菰が語源の言葉のようです。お盆の時にお供えを飾る盆ゴザ、精霊馬や精霊船などを真菰で作る風習も、近年まで各地にありました。これらのことから、真菰が日本の歴史や文化に深く根ざしていることがわかります。

• 真菰（マコモ）は古代より穀物（六穀）に分類され、古事記などでは主食となる穀類の１つでした。マコモダケからとれるマコモズミは漆器の顔料にも使われ、古くは眉墨やお歯黒の染料などに利用されました。

マコモを味わう

種子（ワイルドライス）や新芽が縄文時代以降に穀物として食べられてきたとのことですが、現在は黒穂（こくぼ）菌により肥大化した茎（マコモダケ）が主に食用とされています。マコモダケは皮を剥けばそのまま食べられます。

マコモには体内の毒素・老廃物・有害金属を体外に排出するケイ酸や酵素を含んでいて、脳の松果体を活性させ、デトックス作用があり、血液の浄化や自然治癒力を高めるなどの働きが期待されます。
コレステロールの減少、抗酸化作用など、いろいろな薬効作用があると言われています。

マコモの葉やマコモダケの皮もお茶にして味わえます。

入浴剤として利用する

マコモの葉をそのままお風呂に入れて入浴剤として利用するのもお勧めのようです。抗酸化作用により何十年もお湯を代えなくても入浴し続けられる特別のお風呂もあるようです。

しめ縄飾り

新年の神様をお迎えする準備として、真菰農家（および真菰の会）の市民ボランティアが川越八幡宮のしめ縄を飾りなおす作業を毎年行っています。

（八幡神社は全国津々浦々にありますが）川越八幡宮は管理が行き届いていて、地元の市民に愛されている神社と思いました。稲よりも古い縄文の時代から地元に生息している真菰が家々でしめ縄として使われてきたこと体感できました。

参考となるサイト

(1) 真菰（まこも）とは – まこもプロジェクト
(2) 古事記の植物 - Kurashiki
(3) お盆に用意する真菰（まこも）とは？使い方や購入方法など
(4) 秘伝の妙薬[マコモ菌]の原料の霊草[真菰]について
(5) マコモ - いずみこども園
(6) 新・出雲國まこも風土記
(7) 見沼たんぼの歴史ー「マコモ層」の存在が繁殖の証拠
(8) 食感がクセになる！マコモダケの人気レシピ10選