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子どもを殴る人の理由

私は日常的に体罰を受けて育ったわけではありませんが、それでも子どものころに何回か叩かれたことはあります。叩いた人間はいずれも「しつけ」と称していました。

大人が子どもを殴る理由として「しつけ」とか「愛のムチ」とか「育児のストレス」とか言うことはよくありますが、これらは言い訳であって理由ではないと思います。

大人が子どもを殴る理由は突き詰めればひとつしかありません。

子どもは「弱いから」です。

その証拠に、
「しつけ」で組関係の人を殴ったり、
「愛のムチ」でヘビー級ボクサーを殴ったり、
「仕事のストレス」で上司を殴ったり、
といった話はめったに聞きません。育児にストレスがあるのは事実でしょうが、ストレスが暴力の理由になるなら、ブラック企業の社長はみんなボコボコにされているでしょう。

もし人間が産まれた瞬間からものすごく強くて、殴ったら必ず殴り返してきて、肋骨や鼻の骨をへし折られるのはほぼ確実、という生き物だったら、体罰や児童虐待は激減しているはずです。

いまだに運動部の監督が部員に暴力を振るう事件も後を絶ちません。
私などは「スポーツマンの男子高生がそろいもそろって、おじさん一人にやられっぱなしなの?ほかの部員は仲間が殴られるのを黙って見てるの?」と不思議に思ってしまうのですが、抵抗できない心理的な理由があり、だからこそ監督も安心して殴れるのでしょう。

「相手が弱くて抵抗できない」ことそのものが、暴力を誘発する引き金になっているのです。

私は小学校卒業以来人を殴ったことはありませんが、それはべつに聖人君子だからではなく、まわりに自分より弱い人が誰もいない、という境遇だからです。私が人を殴ったらもれなく報復のリスクがついてくるわけで、どう考えても勝ち目がないので最初からそんなことを考えないのです。

子どものころの私は「自分が悪いことをしたから叩かれた」などとかけらも思いませんでした。やり返せない自分に腹を立てただけで、弱いから叩かれたのだとわかっていました。
そして殴る大人が自分より強いものは殴れないことも。

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