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SaaS企業が地方銀行と提携するには?~ビジネスマッチングによる中小企業開拓の成功法~

「中小企業向けにSaaSを拡販するには、地方銀行と提携すればよいのでは?」

よいところに目をつけられました!

実は、地方銀行では、多くの企業より、そうしたビジネスマッチングの提案をいただいています。しかし、成就させるためには、さまざまなハードルを乗り越えないといけないのも事実。
では、何がその成否を分けるのでしょうか?
本noteでは、ビジネスマッチング成功のポイントをご説明します。


SaaS企業が地方銀行と提携するメリットとは?

提携先のみなさんに一番驚かれることは、地方銀行の”名刺の威力”と”社長との関係性”です。

地方銀行の営業担当は、日々、中小企業の「新規先開拓」を行っているのですが、名刺を受付に差し出すと、アポなしにもかかわらず社長が会ってくれます。通常のBtoB営業では考えられないですよね。

また、通常の商材であれば、担当部門へアプローチしボトムアップしてもらうことが多いですが、地方銀行の行員は最初から取引先の社長と話ができます。したがって、アプローチから商品採用まで、圧倒的なスピードで案件を進めることができます。

Web広告を出し、メール等で意欲を高め(ナーチャリング)、電話でアポをとり(インサイドセールス)、なんとか面談にこぎつける、でもなかなか案件が進まない・・・という悩みをよく耳にします。

地銀と連携すれば、こうしたプロセスをほとんど省略することができるのです。

地方銀行とのビジネスマッチングを成功させるには?

では、どうすれば、地方銀行とのビジネスマッチングを成就させることができるでしょうか?
まずは、取引先の金融機関等で成功事例を作り、横展開を目指すのが近道です。
地方銀行に営業をかける際には、次のポイントを押さえておく必要があります。

ポイント① 中小企業の関心の高いテーマか?

地方銀行のミッションは、「取引先企業の課題を解決し、ともに成長していく」ことです。
では、足元で、中小企業の関心が高いテーマは何でしょうか?

それは、「1に人材、2に人材、3・4がなくて5に人材・・・」

少子化や2024年問題等を背景に、中小企業の人材不足は深刻化しています。「採用の募集をかけても人が集まらない」「若手社員がすぐに退職してしまう」といった課題を聞かない日がないという状況になってきました。

地方銀行では、こうしたお客さまの悩みを日々聞きながら、人材紹介のサービスや、デジタル化・DX支援、また採用につなげるためのブランディング支援等につなげています。

SaaSであれば、どれだけ業務効率化につながるか、あるいはどれだけ働き方の改善につながるか等が訴求ポイントになるでしょう。

ポイント② 銀行のメリットが明確か?

他方で、銀行にとってのメリットも大切です。銀行の営業担当は、日々融資や手数料の目標に追われており、「お客さまのお役に立ち、結果として収益につながるサービス」でなければ優先順位は上がりません。

具体的には、1件成約あたり30万円から50万円以上の手数料収入が期待できないと、営業担当のモチベーションは上がりにくい傾向にあります。

ただし、銀行にとってのメリットは手数料だけではありません。
ビジネスマッチングに付随して、「融資やリース等の契約に結び付く可能性が高い商材」「お客さまとの関係性強化につながる商材」「若手行員の育成につながる商材」等は、仮に手数料が低くても採用される可能性はあります。

例えば、「太陽光発電設備」に関するビジネスマッチングは、融資やリースに結び付きやすい代表例です。また、「CO2排出量の可視化ツール」や、「エンゲージメントサーベイ(従業員満足度調査ツール)」等は、銀行にとって顧客の理解が深まるとともに、コンサルティングにつながる可能性もある商材です。

ポイント③ フォロー体制は万全か?

「銀行向け」「お客さま向け」双方のフォロー体制が大切です。

「銀行向け」では、しっかりとした提案ツール(わかりやすいパンフレット、できれば動画)を用意することに加え、一緒にお客さまへ訪問(オンラインでも可)できる体制や、勉強会の体制を整える必要があります。
銀行の営業担当者はできるだけ手間をかけずに成約に結び付けたいのが本音。一度紹介した後は、紹介先で責任をもって成約に結び付けてもらうことを望んでいます。

「お客さま向け」も重要です。中小企業の担当者はPC操作等に慣れていない場合も多く、導入支援やオンボーディングが適切に行われなくてはいけません。ここが不十分だと、銀行にも苦情がきてしまいます。

また、前提として、SaaSの可用性・機密性などが、銀行が自社でサービスを導入する場合の水準をクリアしていることが必須となります。この点はFISC(金融情報システムセンター)の安全対策基準が参考になります。

成功事例(ラクス×西日本シティ銀行)

ここで、株式会社ラクスと株式会社西日本シティ銀行の提携事例についてご紹介します。

ラクスと西日本シティ銀行は、2021年4月にお客さまのデジタル化支援を目的とした連携協定を締結しました。
https://www.ncbank.co.jp/noren/news/2021/__icsFiles/afieldfile/2021/04/23/210427-1_1.pdf

両社は、滝藤賢一さんと横澤夏子さんのCMでおなじみの経費精算システム「楽楽精算」を中心にお客さまへ提案活動を行っています。

では、先ほどの3つのポイントに照らして成功の要因を確認していきましょう。

ポイント① 中小企業の関心の高いテーマか?

経費精算システムは、経理部門の業務効率化に大きく寄与することはもちろん、2024年1月から必須となった「電子帳簿保存法」の改正にも対応するものです。従って、中小企業の「人材不足」と「法対応」のいずれのニーズにも応えるシステムとして、高い関心を引き出すことに成功しています。

ポイント② 銀行のメリットは明確か?

詳細はお話しできませんが、初期費用と月額費用の一部を銀行がラクスよりいただく契約となっており、一定の収益に貢献しています。

また、それだけではなく、「経費精算システム」を導入することで、付随的にその会社の「法人向けクレジットカード」を獲得しやすくなるというメリットがあります。

経費精算システムとクレジットカードを連携することで、経費精算の手続きが非常にスムーズになるからです。

中には、導入した中小企業の全社員にクレジットカードを配付するため、100枚以上のカードを一気に獲得できた事例もありました。

ポイント③ フォロー体制は万全か?

ラクスから複数名の社員を派遣いただき、西日本シティ銀行専属担当としてエリアごとに張り付いてもらっています。彼らには、営業店を地道に訪問して勉強会を開催したり、同意していただいたお客さまへ一緒に訪問するなど、最大限のフォローをお願いしています。
また、ラクスと西日本シティ銀行で共同でDMを発送するなど、プロモーションの面でも協力関係が進んでいます。

おわりに

地方銀行との提携は、ハードルは高いですが、うまくいけば売り上げ大きく伸ばせる可能性があります。
例え、スタートアップであっても、地元の取引先金融機関であれば、話を聞いてくれる可能性は高いと考えられます。ここでお示ししたポイントを押さえ、積極的にアプローチしてみましょう。

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