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チェルシーに見るプレッシング時のサイドへの誘導の仕方と、シティに見るビルドアップ時の独特な配置

20/21 プレミアリーグ 第17節
チェルシー vs マンチェスター
C

~チェルシーのサイドに追い込むプレッシングと、シティのGKを組織的に加えたビルドアップ~

 今回は、先日行われたプレミアリーグ第17節のチェルシーvsマンチェスター・シティにて見られた、チェルシーのサイドでアグレッシブに行うプレッシングと、シティの独特な配置のビルドアップの局面が非常に面白いと思ったので分析していきます。


スタメン(home : チェルシー)

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(away : マンチェスター シティ)

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結果 : チェルシー 1 - 3 マンチェスター シティ
( 前半 0 - 3、後半 1 - 0 )


チェルシーの守備
(プレッシング)

① 開始点
 チェルシーはプレッシング時、主に下図の黄色エリアがプレッシングの開始点となる「超攻撃的プレッシング」を行っていた。
※状況や時間帯によっては開始点を下げたり、ミドルプレスを行っていた。

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② 陣形
 陣形は、下図のように「4-3-3」となる。

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③ サイドへの追い込み方
 チェルシーはこの試合でのプレッシングの行い方として、ボールをサイドに誘導し、そのエリアでアグレッシブなプレスをかけていた。
 ここでサイドへの誘導の仕方は、まず、ボールが相手最終ラインの中央にある時、CFのヴェルナーが相手アンカーへのパスコースを消すように立ち、同時に両ウイング(ジエフ、プリシッチ)が内側に絞った位置に立つことでボールをサイド(大外)へ誘導する。

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④ スイッチと追い込み
 ボールをサイドに誘導し、大外に立つ相手にボールが出たのをプレッシングのスイッチとし、このボールホルダーに対しては主にウイングのプリシッチ(左)、ジエフ(右)が寄せていた。
 その後、ボールサイドに全体がスライドし、ボールサイドでマンツーマンとなることでプレッシングの強度を高く保つことが出来ていた。

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 また、下図のように相手アンカーに対して予めインサイドMFのコヴァチッチ(またはマウント)が監視(マーク)することで中央へのパスを防ぎ、ボールをサイドに誘導して、プレッシングを行うというシーンも多々見られた。
※プレッシングのスイッチや、サイドでのマンツーマンは上記と同様

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シティの攻撃
(ビルドアップ)

① 陣形とプレー展開
 シティはこの試合でのビルドアップ時、下図のような配置をとっていた。
 具体的に、最終ラインではGKのステッフェン、CBのルーベン・ジアス、ストーンズ、左SBのジンチェンコで4バックとなり、アンカーの位置にロドリが立つ。また、相手DFとMFの2ライン間にCFのデ・ブライネ、インサイドMFのギュンドアン、ベルナルド・シルバ、右SBのカンセロの4枚が立ち、前線の大外にウイングのスターリングとフォーデンが立つ。
 プレー展開としては、後方の4+1で左右にボールを動かしながら、ショートパスでポゼッションによるビルドアップを行う。

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② プレス回避
 プレス回避によって得点したシーンを紹介する。
 まず、上記で説明したような配置をとり、後方でアンカーの位置に立つロドリを上手く使いながらショートパスを繋ぐ。

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 このとき、2ライン間からギュンドアン、B・シルバ、カンセロが縦パスを引き出すように後方に下りる。(試合を通して2ライン間の4枚がランダムに下りてサポートしていた)

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 そして、CBからボールを引き出しに下りてきたギュンドアンへ縦パスが入り、CB→ギュンドアン→大外のSBと繋ぐことで相手の第1プレッシャーラインを効果的に突破する。

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 その後、相手DFとMFのライン間のハーフスペースに移動したデ・ブライネへ大外のジンチェンコから斜めのパスが入りプレス回避を成功させる。そして、この流れの中でシティはゴールを奪った。

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 まずチェルシーのプレッシングについて、サイドにボールを誘導し、そのエリアでアグレッシブなプレッシングを行うというプレー原則の中で、CFのヴェルナーが相手アンカーへのパスコースを消し、両ウイング(プリシッチ、ジエフ)が内側に絞りあえて大外へのパスコースを空け、時にはインサイドMF(コヴァチッチあるいはマウント)が相手アンカーまでマークすることで効果的にボールをサイドへ誘導出来ていた。しかしながら、中盤のエリアにランダムに下りてくるシティのギュンドアン、B・シルバ、カンセロ、デ・ブライネを捕まえることが出来ずに中央からプレス回避をされてしまうというシーンも目立った。
 一方、シティのビルドアップは、GKのステッフェンを加えて4バックにすることで、前線により多くの人を配置することができ、相手のDFとMFの2ライン間に4枚(デ・ブライネ、ギュンドアン、B・シルバ、カンセロ)、両サイドの大外に相手SBを引き付けるためのウイング(スターリング、フォーデン)を配置することで効果的に中央からプレス回避を成功させるというシーンが多く見られた。
 現代のフットボールを見ると、GKを加えて4バックや3バックを作るというビルドアップを行うチームは増えてきているように感じる。そのため、現在フットボールにおいて、GKはゴールを守るという能力に加えてボール保持の能力も重要視しなければならないと思う。

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