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第18回ビエンナーレ建築展、続々編 マチナカ展


今年のバチカン・パビリオンの庭は、人と人との出会いと憩いの場

 ジャルディーニ会場アルセナーレ会場のメイン2会場だけでもお腹いっぱいなビエンナーレだが、ヴェネツィア・ビエンナーレの楽しみはここでは終わらない。両会場に収まりきらない他の国のパビリオンや、関連の展覧会が街中のあちこちで展示を行っていて、それが美術館やギャラリーの場合もあるけれど、お屋敷や倉庫など、ふだんは公開されていない建物や場所を使っているところもあり、覗き趣味心がくすぐられる。

 ビエンナーレ建築展に、2回め5年ぶりの参加となったバチカンは、前回と同様にサン・ジョルジョ・マッジョーレ島にパビリオンを設定した。2018年の初回参加時には、ヴェネツィアの観光の中心地、サン・マルコ広場脇から目の前に見えるこの島の中の緑地を使用し、世界で活躍する建築家を11名招き、それぞれに独自の礼拝堂を建てさせた。ジャルディーニ会場にある常設の各国パビリオンも立派だし、通常は非公開のお屋敷を丸ごと使う展示もおもしろいけれど、ヴェネツィアのビエンナーレは、そのために新たな建物を一から建てるという展示はほとんどないため、人が入ったり座ったり、瞑想のできるような空間を11も、建ててしまった。全てが壁と天井を持つものではなく、より観念的なものとはいえ、スケールの大きな展示に驚かされた。

2018年建築ビエンナーレ、バチカン展示の一部で藤森照信さんの礼拝堂

 そんなバチカンは今年、「庭」を展示した。それ自体、元々丸ごと修道院であったサン・ジョルジョ・マッジョーレ島の、今も修道院の敷地である中庭を耕し、花が咲き、野菜の実がなる庭を作り、人が集う場として提案した。「庭」は、自然の「森」と異なり、西洋式であれ日本庭園であれ、自然の力を借りつつも、人間の手を必要としている。

 観光客で賑わうヴェネツィアの街中、膨大な展示を見て歩くのにヘトヘトになるビエンナーレ見学の合間に、数分でも水上バスに乗って対岸の島に渡るだけでもちょっとホッとする。さらに、真っ白に輝く教会の裏手にまわり、普段は入れない秘密の建物から中庭へ。強い太陽の日差しの下で揺れる草木の間にはミツバチが飛び、石畳の上をトカゲが走り、と思うと足元には猫がそろりと歩く。ああ、人と人、人と植物だけではない、庭はさまざまないのちの集まる場だったと改めて思い至った。

 私が見に行ったのは6月中旬のことで、きっとこの暑い夏の間に、植物たちはきっとどんどん成長し、(一部は枯れたりして?)まったく違った様子を見せているに違いない。5月20日から11月26日と半年も続くビエンナーレ、「参加型」として、見学者らが手を加えることで期間中に変化していく展示も珍しくないけれど、草花の成長を楽しみに何度か訪れてみるのもいいかもしれない。
 ここ数年は、アートも建築も、マチナカはほとんど見に行けていない。今年はもう少し、他も見てみたいと思う。

https://www.labiennale.org/it/architettura/2023/santa-sede

第18回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展
18° Mostra Internazionale di Architettura
20 mag - 26 nov 2023
https://www.labiennale.org/en/architecture/2023

17 set 2023

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