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ガーシュイン・ナイト、ローマにて


 暑い日が続いている。日中は30℃、いや今週は連日35℃前後と、うっかり外を歩くのは危険なレベル、日陰や朝晩も涼しいとは言い難い。
 暑い暑いと言いながら、友人に誘われてコンサートに出かけた。
 会場はローマ北部にある「パルコ・デッラ・ムジカ(音楽公園)」、2002年にイタリアの建築家、レンツォ・ピアノの設計で建てられた施設で、ローマ映画祭などもここで開催されている。今回は、3つある劇場のうちの1つ、屋外劇場で、初めてだったのだがこれがまず、入って驚いた。

 ステージから半円状に土間席と、そこから扇状に広がる階段席は、今でもイタリアのあちこちに残るローマ遺跡の劇場そのもの。つまり、ステージの出し物を屋外で楽しむには、このスタイルが今でも最適ということか。座席に特に椅子もつけず、ベンチ状のコンクリートの地のまま。確かにこれなら、清掃も簡単、忘れ物もしづらいだろう。体の大きな人も小柄な人も、子供連れにも便利、例えば松葉杖などでも問題なく動けると思う。車椅子は階段席は難しいかもしれないが、折り畳み椅子が並べてあるだけで全く段差のない土間席は自由自在と思われる。
 お尻が痛くならないよう、入り口で小さな座布団を貸してくれる。最後にはちょっと腰が痛くなったけど、この開放感を考えたら、どうってことない。
 ヴェローナのアレーナや、タオルミーナなど、遺跡をそのまま劇場に仕立てた演奏会やイベントは、イタリア各地に数多くあるけれど、21世紀に入ってなお、これを作ってしまうローマ人・・・いや、イタリア人・・・さすが!
  屋外とはいえ、FFP2またはサージカルマスク必須、ソーシャルディスタンスで座席はほぼ3席に1人、だがそのおかげで、席に着くといい具合に風が流れて心地よい。やはりこれがぎっしり満席になってしまうと暑いだろうが・・・。

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 夜9時、まだ少し薄明かりが残る中で、夏の夜へといざなうように、艶やかでコミカルなクラリネットにリードされて流れてきたのは「ラプソディー・イン・ブルー」、華やかでキラキラで、とびきりエンターテイナーな(古き)よきアメリカン。ああ〜楽しいなあー・・・。耳を澄ますと、ジリリ、ジリリとセミの声、といっても音楽の邪魔になるほどでもなく。空には一番星。ときどき、飛行機も飛んでいく。幸い、その音も気にならない程度で。やがて夜の帳が下りて、星がいくつも煌めき始める。バイクか車か、エンジンをふかして走り去る。座席の間を通り抜ける風が心地よい。
 ステージの正面で、縦向きに置かれたピアノを弾きながら指揮をしているのは、ウェイン・マーシャル、すみません、実は今回初めて知ったのだが、指揮者でピアニストとして国際的に活躍する人らしい。ソーシャルディタンスも、バイクの音も、さらっと取り入れた軽妙なMCもさすが、だが、なんといってもその演奏がすばらしかった。
ジャズにミュージカルにオペラ、とまさに夏の夜にピッタリの楽しいプログラムで、気持ちのよいすてきな夕べを過ごした。

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Gershwin Night
Orchestra e Coro dell’Accademia Nationale di Santa Cecilia
direttore e pianista Wayne Marshall
soprano Jeanine de Bique
baritono Simon Shibambu

programma
Garshwin Rhapsody in Blue, versione originale per Jazz band
Broadway Overtures & Songs
Porgy and Bess: A Concert of Songs, arrangiamento Russell Bennett

#ローマ #エッセイ #gershwin #夏の夜 #屋外コンサート #ガーシュイン #ポーギーとベス #ラプソディインブルー #イタリア

08.01.2021

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