虹をみたかい

引っ込み思案の少女がいた。勉強はいま一つ、運動神経もいま一つ。自分に自信が持てない。

その少女は、生まれてこのかた一度も虹を見たことがなかった。

虹、見てみたいな。

ぼーっと空を見上げると、天の声が降ってきた。

「待っているだけじゃ、虹には出会えない。自分から見に行かなきゃ、見ることはできないんだよ」

どこまで走って行ったって、見えないものは見えないもん。天の声の意味が、少女にはわからなかった。

あれから数年。

あるアイドルに、少しおませさんになった少女は憧れた。そのアイドルみたいに歌ったり踊ったりできたらいいな。お母さんに頼み込んでダンス教室に通い始めた。

初めて夢中になれる何かを見つけた。上手いとか下手とか関係ないもん。そんな気持ちでダンスに打ち込んだ。

一途に踊っている時の自分が、少しだけ好きになれた。

ダンス教室の帰り道。

雨上がりの夕空に、虹がかかっていた。

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