鍵盤ハーモニカが弾けなかった娘
「おかあさん、見ててよ!!ねえ、見てよ!」と得意げに娘は鍵盤ハーモニカを弾いていた。
すごく上手というわけではなかったけど誇らしげにドヤ顔をして夫の前でも披露してみせていたから、娘としてはいい線いってる!と思っているに違いなかった。何より楽しそうだった。
今日、娘の連絡帳に「鍵盤ハーモニカをもう少し頑張って欲しいので、家に持ち帰ってもらっています。お家で練習を見てあげて頂けますか。」と書かれていた。
連絡帳には、娘の字でも「けんばんハーモニカのれんしゅう」と書いてある。先生に書くように言われたらしい。
娘は一体どんな気持ちでこれを書いたのだろう?
クラスのみんなが持ち帰らない鍵盤ハーモニカを、どんな気持ちで持って帰ってきたのだろう?
イケてると思っていたのにイケてないとわかった時、娘はどんな気持ちだったんだろう?
鍵盤ハーモニカはそんなにきっちり弾けないと駄目ですか…?楽しんで弾けてたらよしとしませんか…?と親の私は思う。
でも。
大人になる過程で、こういうなんとも切ないというか、苦いというか、酸っぱい経験は避けて通れないし、そういう経験に身も心も晒しながら少しずつ強くなっていくしかない。最初は親に見守られながら。ゆくゆくは1人ででも受け止められるような弾力性のある人間になってほしい。
親になると自分が幼かった頃に感じた気持ちが今日みたいな時に蘇って、やたら甘酸っぱい気持ちにさせられたりする。
でも、経験していないとどういう声かけをしたらいいのかもわからないから自分の経験は一応役に立っている。
「めちゃくちゃ上手に弾けるようになって、先生をギャフンと言わせよう!」とお風呂上がりに練習した。
なかなかいい出来だと思う。
先生、ギャフンと言ってくれたらいいのに。
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