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松本まりか×情熱大陸「自分らしさが自信に変わるまで」

たびたび「恐怖心」を口にしているのが印象的だった。

「また埋もれてしまうのではないか」という恐怖、「嫌われること」への恐怖、「ひとりになること」への恐怖。「興味を持たれなくなること」への恐怖。

ブレイクするまでに途方もない歳月を費やし、いよいよ多くの人に知ってもらえる立場になった。でも今度は、ようやく当たったスポットライトから外されてしまうという恐怖が付きまとう。

今年の初め、まりかさんが尾崎豊の「僕が僕であるために 勝ち続けなきゃならない」というフレーズをSNSで引用していたのを妙に憶えている。

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『情熱大陸』出演の吉報を聞いた時から待ち遠しかった。

彼女の今の心のうちや、パーソナルな部分が明かされるドキュメンタリーをそろそろ観たいと思っていたからだ。

『アナザースカイ』でも『A-studio』でも良かったけれど、やっぱり情熱大陸はブランドも歴史もある。MCがいないナレーションベースである分、密着対象者の輪郭も、より浮き出る。

「今輝いている人」重視のキャスティングがされるから、"女優・松本まりか"がピックアップされるのも当然といえば当然だった。

あざといとは思っていない

個人的には別に「あざとい」とは思っていない。バラエティやSNS、インタビュー等を拝見する限り、とても繊細で真面目な人という印象がある。

10代の少女のような純粋さを保持していて、彼女にとっての自然体が、時に世間からすると不自然に映ることがあり、その微妙なズレが良くも悪くも「あざとい」と評されているのだと思う。

実際、20〜30代の女性から強い支持を得ていることが、ただ「あざとかわいい」だけではない証拠だ。仕事にも年齢を重ねる自分にも、真摯に向き合う生きざまが共感を呼んでいるのだろう。

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かつては同性である女性から受け入れられづらい自分の声や容姿がコンプレックスだったらしい。それが今はオセロがひっくり返るみたいにすべてがそのまま武器となり魅力となり「松本まりか」を象徴する個性となっている。

おそらく時代が味方したとかではない。

目の前の現実から逃げることなく、自分にも仕事にもとことん向き合って、内面から磨き上げ続けたものがようやく仕事のご縁とリンクして、強い光を帯びたのだ。

松本まりかの魅力

僕が勝手に思う彼女の魅力は以下の3つ。

・甘さと湿度を宿した替えのきかない声
・繊細さと透明感が同居した雰囲気
・仕事と、そこで出会った人たちへの愛の深さ

年齢よりも若く見えるのは、自分の中にずっとピュアな少女を飼ってるからだろう。黒柳徹子さんがずっとチャーミングなのも同じ理由だと思う。

内面から滲み出る繊細さやひたむきさが、美的なルックスに紐付いているし、人知れず研ぎ続けた感性が女優としての世界観、その強度に繋がっている。

まりかさんが『with』で連載しているエッセイ『吐き露わ』はとても読み応えがあってオススメだ。地道な積み重ねの果てに導き出された価値観は、だてに20年も女優を続けていない説得力を持っている。

とりわけ「自分に負荷をかけ続ける」ことの大切さを書いた記事は興味深かった。文字通りただ無理をすることではない、その言葉の本当の意味を捉えることができる。

日々をたいせつに生きながら、いつか自分で思ってるよりもずっと遠くにたどり着き、強くなっていたい。そんな想いを抱くひとには、きっと心の芯に響く内容だ。

たとえば日本刀も、打てば打つほどに鉄の余分な成分が外に出て、純粋な鉄に近づいていく。純粋な鉄は強くて錆びにくい。まるでまりか様だ。

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人生で初めてサイン付きの写真集を購入した

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消えない灯

けっして最短距離で華々しい道のりだけを経てきたわけじゃない彼女の今の活躍は、過去の軌跡も含めて、多くのひとに勇気を与えると思う。

番組の最後の場面、まりかさんは気になっていた家具屋さんを訪れた。家具屋のご主人と椅子に座り、一緒に座って記念撮影をした。

個性的なデザインの椅子は、当初なかなか受け入れられず、嫌われたという。あわせてご主人は言った。「でも、嫌われたら一流」だと。

「私はまだまだ半人前ですね…。嫌われることが恐いんです」と語る彼女に、ご主人は優しく穏やかな口調で言った。

「嫌われていい。嫌われても、ひとりは見てる」

その一言で、何かが氷解するようにまりかさんの目には涙が溢れていた。彼女の背景をよく知らないであろう家具屋のおじいさんの言葉と、まりかさんの心境が、奇跡的に美しくリンクしたのだ。

作られたドラマや映画よりも、よっぽどそれっぽいワンシーンで感動してしまった。

SNSでの投稿やインタビューを読めば、彼女が仕事で関わってきたひとたちにどれだけていねいに感謝を伝えているかはよく分かる。

だからきっと、美しく鮮やかなその灯は、もうそう簡単に消えはしない。

僕が僕であるために
勝ち続けなきゃならない
正しいことはなんなのか
それがこの胸に解るまで
僕は波にのまれて...
『僕が僕であるために』尾崎豊

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インスタライブで自分の写真集を満足げに眺めるまりか様。かわいすぎる。

サポートが溜まったらあたらしいテレビ買います