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壇蜜さんの結婚観が素敵だった

壇蜜さんのことは、結婚の際にテレビで話していたコメントを聞いて以来信頼している。

『東京都北区赤羽』で知られる漫画家・清野とおるさんと壇蜜さんが結婚したのは2019年秋。結婚のイメージなどまるで無かった2人が結ばれたのは新鮮だった。

壇蜜さんの過去のエッセイを読んでみても、さして結婚願望がなかったことはよく分かる。結婚のイメージが持てなかったのは、周囲以上に本人が一番自覚的だったのかもしれない。

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彼女は清野さんとの結婚に至った経緯について以下のように語っていた。

「現状維持のためになにができるか。このまま現状維持で2人でいるにはどうしたらいいか。それには2人が変わらなきゃいけない。現状維持のために2人が変わるとしたら結婚だなって。三軒茶屋の西友の駐輪場でそういう話をしました」
「ラーメン屋さんとかも、このお店のスープ全然変わんないねっていうのは、ちょっとずつ変えてるからであって。現状維持を私たちが生きていくには、内面をちょっとずつ、環境をちょっとずつ変えていかないといけないから。っていうのだと、自然と選択肢が無くなってきます」/『おやすみ日本』

僕は壇蜜さんのこの話にとても感銘を受けたし、共感もした。自分がこれまで言語化できなかったモヤモヤがストンと腑に落ちた感覚だった。

今と変わらず2人でいたい。そのためにどうしたらいいか。「変わらずにいたいからこのままでいいじゃん」ではなく、「現状維持のためには何かを変えなくちゃいけなくて、それが結婚だった」というのはとてもリアルだ。

法的にも制度的にも周囲を味方につける意味でも、結婚は有効な手段だと思う。

そう、結婚そのものは目的じゃない。
これからも末長く一緒にいたいと願う2人が、いつまでも一緒にいられる確率を少しでも高めるための一番シンプルな手段に過ぎない。

大きな変化に負けないための、小さなマイナーチェンジ。

全然たいそうな感じでもなく、現状維持のために結婚を選ぶこと自体がものすごくシンプルでかっこいい。積み上げた末の答えではなく、削ぎ落とした末の自然な答えというか。

そんなプロポーズじみた会話を西友の駐輪場でする辺りも2人らしいし、文学的な情景で素敵だと思う。

ちなみに壇蜜さんは何冊もエッセイを出していて、僕も3冊ほど読んだことがある。

世間的には「セクシーでミステリアスな綺麗なお姉さん」といった印象だろうが、彼女の文章を読んでみるとイメージよりずっと地に足のついた女性だというのがよく分かる。そしてとても繊細で傷つきやすい人だというのも。

おそらく彼女は自分の美しさに自信も自覚もあるけれど、それ以上にその恵まれた盾を容易に突き破られるほどの罵詈雑言の槍を向けられてきた。

女々しいようには書いていないものの、卑下や自虐の言葉の数々は痛々しさすら感じる。

短足、不潔、年増、下品などといったワードが頻出し、もはや諦めながらもアンチの存在を毅然とした態度で受け止めている。自分を守るための理論武装、先制防御の筆致は、彼女の脆さをよく表している。

僕は逆にその繊細さに惹かれたし、もっとファンになった。まるで夜の帳のなか、消え入りそうに揺らぐ炎のような女性。見た目の色気以上にその心の内に魅力を覚える。

年齢を重ねても相応に美貌を更新し続けているし、声も艶っぽくて好き。下品と捉えかねない売り出し方をしていたにも関わらず、品を感じるのは教養を備えているからだろう。

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エッセイシリーズ『壇蜜日記』は散文的な日々の綴りで抽象的な物言いが多い反面、彼女の私生活や思考回路が想像できて面白い。

2017年春あたりは男によく抱かれてるような描写もあり、この当時は「恋をしていたのかな」というのも分かる。

想うのも想われるほうも、おそらく人よりも多く多感に経験してきた彼女が出した結婚観は、結婚に対して重々しく捉えすぎてしまう人たちの心をきっと軽くすると思う。

サポートが溜まったらあたらしいテレビ買います