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言葉を尽くすな、想いを尽くせ/『さよならくちびる』感想

解散を決めた人気デュオの“ハルレオ”。2人を支える付き人のシマと共に出発した解散ツアー。最後に生み出された曲は彼女たちの運命をどのように導くのか。あいみょんの楽曲提供も話題となった音楽ロードムービー。

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2人の歌が何よりも雄弁な映画だった。

ライブハウスの暗さも、夜の路上の暗さも、必然と迫る予感のイントロのように映るのに、そこに存在する彼女たちがただただ美しい。隠し切れないやるせなさは最後まで残っているのに、なぜかそれをどうにかなってくれと力技で手を加えたいとは思えない。

あくまで傍観者の1人として、あるいファンとして、そっと3人を見守りたくなる。

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想いは投げかける言葉の数よりも、ちゃんと伝わるかどうかが大事だ。ハル、レオ、シマの3人はそれを本能的に分かっている。必要以上に足したような台詞はどこにもない。終始、静かな演出の中で3人の関係性と心の内がスクリーンからこぼれ落ちる。三角関係といったら本来もっといびつな三角を描くものだが、ここでは不思議と完結をしている。

綺麗に重なり合っているわけじゃないし、ぶつかり合ったりもする。なのに一人ひとりが残り2人を想う気持ちが澄み切ったように明らかで、互いが互いを想う気持ちに全員が気付いている。

だから3人はまた同じ車に乗り込んで、次のライブハウスを目指す。不器用な3人は同時に涙を流すことはないが、誰かが傷付いてる時にはそっと寄り添うことだけは忘れない。

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シマがハルに「自分のことをもっと考えろよ」と言って「考えたらどうにかなんのかよ!」とハルがノータイムで返すシーンが象徴するように、自分のことを後回しにして相手を想う3人だからこそ成立するバランス。

黙々と食べたカレー、指が忘れないGやCのコード、沈黙を埋めるアメスピの煙。エモい。

門脇麦、小松菜奈、成田凌。このトリオを揃えた時点で勝ち戦同然の映画。門脇麦と成田凌の相性の良さはこれまで何度も見せ付けられてきたが、さらに小松菜奈が絶妙なスパイスとして調和を見せる。

スクリーン映えする3人による芝居の三重奏は邦画の輝きを証明する。成田凌に至っては散々いけ好かない俳優と評してきたが(褒め言葉ね)、もはや段々と好きな俳優の一人として数えられるようになってしまった。

言葉を尽くすよりも、想いを尽くせ。
そんなワードが頭に浮かんだ観賞後だった。

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サポートが溜まったらあたらしいテレビ買います