Furitokoo

猫とテレパシーで交信中。フラフラさまよっています。ビチクソ文章製造機。

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最近の記事

ストローズがんばれ! ヤツをとっちめろ!

ビチクソ感想文:映画『オッペンハイマー』 ぜったいに不快な気分になるだろうと思ったが、いちおう現世で生きていくには見ておいたほうがいいだろうと思って超上から目線で「どれどれ~」という感じで鑑賞した。 というのも、日本で『オッペンハイマー』が公開されたとき、BBCのニュースとそれに対するSNS上の海外の反応が記憶につよく残っていて、こんなんじゃ世界平和なんて訪れることは金輪際ないと絶望したからだった。何よりもわたしのなかの憎しみが燃えがってしまいコイツらの上に爆弾を落とした

    • 中野くん、サンプラザはもう消えたよ

      のぼせ上がっている頭を冷ますために走る。いまできることは何もないと心身にわからせるために一歩ずつ踏みしめる。ランニングは趣味じゃない。だけど、なぜか縁があって市民マラソン大会に4度も参加した。今年も走ったし、来年も(可能なら)走ってみたいと思っている。今年は沿道の応援で爆風スランプの「Runner」を歌っている方がいて、感動しすぎて泣きながら走った。「ランナー」で泣くなんて思ってもいなかった。 * あたまのなかのおしゃべりが辛くなってきたとき、走りつづけることで、余計なこ

      • 国破れて山河ありに結論はない

        国がこわれるとはどういうことか。社会が崩れていくとはどんな状態なのか。国破れて山河あり。古代中国の話ではない。現代で「国が破れる」とはどういうことなのか。いろいろな文学を読み、歴史に触れてきたつもりだったが、まったく分かっていなかった。別世界の話だった。フィクションだった。いま、想像以上にひどいことなのだと思い知っている。 世界中でひどい内戦が起こっている。そのうちの一つの国と関わりがある。駐在していたこともある。どんどん戦いが激化していき、まさに国が破れてバラバラになりつ

        • スマホのなかにシェヘラザード

          寝つきがわるい。いけないと思いつつ布団のなかでスマホを眺めてしまう。ついにニュース記事で「よく眠る方法」がサジェストされるようになった。そしてそれをずっと読む。ぐんぐん読む。本末転倒である。まぁいいか。 とある記事いわく、眠るためには意識を減らして無意識に近づかないといけないらしい。無意識のスイッチを入れるには「お話」が効くという。なるほど、アラビアンナイトの時代から夜伽は眠りに効果があったわけだ。しらんけど。 そういえば幼いころ、夜寝る前に「桃太郎」とか「浦島太郎」とか

        ストローズがんばれ! ヤツをとっちめろ!

          ときどき考えるボクネンジン

          ビチクソ感想文:『NHK「100分de名著」ブックス パスカル パンセ』(鹿島茂・NHK出版) 人間は考える葦である。有名なことばだ。教科書では「人間はもろくて弱い存在だけど、でも考えることができる」という意味だと教わる。だけどパンセを読み通すと印象が変わる。「人間は考えることができると傲っているが、もろくて弱い存在なんだから謙虚になれ」と読める。わたしはそちらのメッセージの方がしっくりきた。だが、もう一歩ふみ込んでみると、そこからさらに裏返る。「むしろ考えることができるか

          ときどき考えるボクネンジン

          「わかる」がわかりたい

          ビチクソ感想文:『数学する精神 増補版 正しさの創造、美しさの発見』(加藤文元著・中公新書) 何かをわかるとはどういうことなのか。ちょっとヘンなことを言っていると自覚している。「生きているとはどういうことか」みたいな質問と変わらない。「わかる」「理解する」がわかりたい。そんなことより仕事に役立つハックの一つでも身に付けろと思う。 どうしてこんな疑問にこだわっているのか、動機を考えてみると、単純に世の中に納得できないことが多すぎるからだろう。わたしはわからない。だけどあの人

          「わかる」がわかりたい

          気分は崇高

          暑い。うちの Koo ちゃんは早朝には出かけてしまう。わたしが仕事に出るときには、もう床で寝転がっている。朝活は猫にとってもベストらしい。徒歩で駅に向かうとき、最近は雲が気になる。巨大だ。しかし巨大さを感じるにはコツがいる。心のなかでGoogleのマジック消しゴムのように建物を消さないといけない。すると背の低い木が数本と地平線だけになって、あとは青い空と入道雲になる。そんなふうに想像して、ようやく巨大な感じ、宇宙の果てしなさ、地球のデカさをイメージできる。圧倒的な風景を前にし

          気分は崇高

          知性はワイルド

          ビチクソ感想文『動物たちは何をしゃべっているのか?』(山極寿一 鈴木俊貴・集英社) シジュウカラの言語を研究し、動物言語学を創設した鈴木俊貴先生の飼い犬の名前はクーちゃんという。鈴木先生待望の初の商業書籍でありゴリラ教授こと山際先生との対談本でもある本書には、鈴木先生がクーちゃんと一緒に枝をくわえて四つん這いになって野道を進む写真が収められている。鈴木氏の真っ直ぐなまなざしもすばらしいが、クーちゃんの楽しそうな表情も素敵で、ずっと眺めていて飽きない。 わたしの家にいる猫も

          知性はワイルド

          焼き鳥とサンバ

          駅前の雑居ビルの小路に「銀座」という看板。もちろん銀座じゃない。こういう銀座が日本にはたくさんある。多くの店はシャッターが閉まっているけれど、軒先に屋台を出して、ビールやらハイボールを売っている。あめ細工や綿菓子も売っていて、神社の祭りのようでもあるが、宗教的な背景はない。銀座だから。 Mと連れ立って歩き、熱帯夜の賑わいに酔った。わが地元には数百年の歴史を誇る祭りがあるけれど、こうした商店街の小さなイベントを見ていると、こちらのほうが身の丈にあって親しみやすさを感じる。じぶ

          焼き鳥とサンバ

          もう一度めぐってきた夏

          ビチクソ感想文:映画「君たちはどう生きるか」 公開二日目の朝いちの回。同居家族と出かけた。三日前に予約したときはポツポツ席が埋まり始めている状況で車椅子用の座席はすでに完売だった。べつに車椅子の身内がいるわけではないのだが、将来そうなるかもしれないと思っているのでつい目がいく。わたしたちはスクリーンに少し近い真ん中の席をとった。席について周りを見渡すと満席。人々の期待感が雲のように膨らんでいる。人があつまるとそれだけでお祭りになるんだなと思う。 本編が始まる前に今年公開さ

          もう一度めぐってきた夏

          掃き溜めに精神

          玄関先の飛び石で杖をつきながら母が小さな草花をみつめていった。「この小さい花がかわいいと思ってスマホでしらべたら、なんとハキダメグサという名前だったのよ!」 掃き溜めの草! そんな名前があっていいのか。自分でも調べてみたら、たしかにそうだった。正確には「ハキダメギク」という。キーフレーズの「ハキダメ」は変わらない。なんてことだ。 名付けたのは牧野富太郎である。おい! いまの朝ドラじゃないか! スマホに向かって「おい!」といったのは初めてだった。いや友人から金を返してもらう

          掃き溜めに精神

          「こんにちは」のカミナリ

          ビチクソ感想文:『語学の天才まで1億光年』(高野秀行 著・集英社インターナショナル) どうして外国語に惹かれるのだろう。日本語だけでじゅうぶん生きていけるのに。なんでわざわざ異国の言葉を勉強しなければいけないのだろう。Google翻訳もDeepLもChatGPT-4まであるのに。どうしてわざわざ慣れない文字を覚えて書いて、舌や口や喉や腹の動かし方のわからない音を発さないといけないのだろう。単純に苦痛だし、見苦しいし、恥ずかしいのに。… いろいろ理屈はわかる。なんかメリット

          「こんにちは」のカミナリ

          ひとが変わるとき

          ビチクソ感想文:映画「生きる LIVING」 人が変わるとき、その人自身は変わったと自覚しているだろうか。していないと思う。自然とそうなってしまったのだから「変わった」なんて自覚するのは、だいぶ時間が経って自伝でも書きはじめたときだろう(自伝を書く人がどれくらいいるのかしらんが)。だから「変わった」と感じるのは、もっぱら周りの人間たちなのだ。 そもそも「あいつは変わった」なんて上から目線で他人を批評するのはどうなんだ? 「おまえだって変わったよ」といわれて「そうじゃない」

          ひとが変わるとき

          わたしの白い追憶

          春めいてきた。自宅に小さな庭があるんだけど、この時期になるとドクダミが繁殖しだす。放っておくと、庭全体をドクダミが覆ってしまうため、草むしりが欠かせない。 こないだの日曜、庭に出ようと戸をあけたら、いっしょに猫のKooちゃんも飛び出した。Kooちゃんは活発な猫で、朝昼晩とにかく外に出たがる。短いときは5分でもどってきておどろかされるが、長いときは1時間以上散歩している。ご近所に愛されているようで、いっしょに外に出たときは見知らぬ人から「あら、おたくの猫ちゃんだったんですね」

          わたしの白い追憶

          まじめさが狂気をなぐさめる

          ビチクソ感想文:映画『シン・仮面ライダー』 初日の夜に見に行った。まさか泣くとは思わなかった。 わたしなりにあらすじを書くとこうなる。 まず狂気の博士がいる。無差別殺人事件で妻をなくし、世の中から悲しみを消し去りたくてショッカーというあやしい組織に入る。ショッカーはなんだか知らないが人類の科学を大きく超えた技術をもっている。一人息子のイチローも自動的にショッカーの一員になり、なんやかんやあって、父親から手術を施されて、オーグメント(怪人)になってしまう。さらに狂気の父親

          まじめさが狂気をなぐさめる

          命がけのかがやき

          ビチクソ感想文2本。 『一九八四年』(ジョージ・オーウェル/ハヤカワepi文庫) いわずとしれた古典。ずっと積ん読状態だった。読むきっかけはLex fridmanのポッドキャスト。英語で読むのは厳しいので、まずは日本語でと読み始めたら、第二部から異様なほど引き込まれた。はやく読めばよかったなぁと思う反面、このタイミングだったからこそ響いたのかもしれないなぁとも思った。さて、わたしにとってどんなタイミングだったかというと「人恋しさが募っていたタイミング」である。なんじゃそりゃ

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