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ぞうさん歌ってみて

男女二人。
 
「ちょっと驚くことがあって」
「なに?どうしたの?」
 
「昨日は早番で、
 レクレーション担当だったの」
施設でね」
 
「昨日のレクは合唱にしたの。
 ゲームもいいんだけど、
 参加できない人もいるから。
 歌だと歌っても聴いても、
 楽しめるから私の時には多いの」
「なるほど」
 
「歌のレクは歌詞集あるんだけど、
 最近、歌う歌が固定化?
 歌う歌が決まってて、
 定番の曲ばっかりなの」
「みんなが知ってる曲とか?」
 
「それもあるけど、
 歌いやすくて、
 歌っていて気持ちいい曲って、
 感じがするなあ。
 やっぱりあまり暗い印象の曲は、
 歌われないかも。
 軍歌とかもあるけど、
 一度も歌わてないのもあるし」
「思い出すのかもね」
 
「そうなんだろうね。
 それでね。
 いつも同じ曲ばっかりだから、
 童謡だったら歌詞がなくても
 歌えるだろうと思って、
 【うみ】を歌いましょうって提案したの。
 季節も季節だし」
うみは広いな 大きいなあってやつ?」
 
「そう!そうだよね?!
 でも違うの!
 利用者の歌ったのは、
 その【うみ】じゃないの
「他にうみって曲があるの?」
 
「あるの。
 まつばらとおく なんちゃらってやつ。
 急にある利用者さんが歌い始めて。
 そしたらみんな歌えるの!
 こっちは予定外でビックリ!」
世代で違うんだね」
 
「あとで聞いたら、
 どっちのうみも歌えるんだって。
 でも歌った方のうみはなつかしいって。
 自分が思ってたものと
 違うものが出てくると驚くよね」
「でも世代間ではよくあるんじゃない?
 ちょっと前だけど、
 会社の人と映画の話をしてて、
 【君の名は。】観たって言ったら、
 部長が食い付いてきたけど、
 同名の別の映画があるって、
 初めて知ったよ」
 
「そうか。
 同名タイトルなんて、
 これだけ世の中に作品があれば、
 かぶらないものの方が珍しいのか」
「うちらだって4つ違いだから、
 そういうジェネレーションギャップ世代間相違
 あるかもよ」
 
「4つである?
 昭和と平成とかならわかるけど。
 でもさっきの話の童謡で言うなら、
 忘れられない衝撃的な歌があるの」
「衝撃的な童謡って何?」
 
「一度、聴いたら頭から離れないの。
 あっ!しまった!思い出しちゃった!」
イヤーワームってやつだ。
 何、その歌?」
 
「フフフフフフンフン♪
 もうダメ!消えない!」
「その曲なに?」
 
【ぞう】の歌、知ってる?」
「ぞうの歌?
 ぞうの歌って言ったら、
 ぞうさんじゃないの?」
 
「歌ってみて」
ぞうさん ぞうさん お鼻が長いのね
 じゃないの?」
 
「私の頭を巡ってるぞうさんじゃない」
「違うの?うそ?」
 
「私のは、
 ひとりのぞうさん くものすに
 かかって遊んでおりました
 あんまり愉快になったので
 もひとりおいでと いいました

「何、その歌?
 初めて聴いたんだけど」
 
「知らないの?
 私の定番、これなんだけど」
「知らない知らない。
 でも…もう覚えた。
 凄い破壊力のある歌。
 まず象をひとりって数えてるし、
 蜘蛛の巣に引っかかってる
 象のインパクトが」
 
これは5番まであるんだよ
「5番?!」
 
「5番になると蜘蛛の巣、切れちゃうの
「え?!ちょっと待って!
 それって象が5頭も蜘蛛の巣に、
 乗ってしまったってこと?」
 
「そうだと思う」
「1頭乗って遊んでおりましたって…
 もしかして蜘蛛の巣から降りてないの?
 上に呼んで遊んでいましたって意味なの?
 何なのその愉快ゆかいな歌
 
「でしょ?楽しいでしょ?
 でもこの話を高校の友達にしたら…
 その子は隣町の子だったんだけど、
 10番まであったよって」
「じゅ、10番?!
 結末は同じ?」
 
「10番まで行くと、
 遅くなったからおうちに帰ろうって
 なるみたい」
「設定から全てが、
 ツッコミ要素満載!
 

このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。 

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