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三月さんと編集さん ~潜入~

1月某日
雨のち晴れ時々、スパイ
 
「ちょっと…
 三月さん?」
「ん?
 どうしたの変態さん
 
「誰が変態じゃ!」
「あ、ごめんなさい編集さん。
 どうしてあなたが、ここにいるの?」
 
「それはこっちのセリフです。
 ここ、どこですか?
 会社みたいですけど…」
「見ず知らずの場所●●に、
 付いてっちゃダメって、
 教わらなかった?」
 
「それ、ですよね!
 いや、私はあなたが、
 締め切りなのに作業場にいないから、
 当社の情報網を駆使して、
 ここに来たんですけど?
 それに何ですか、その格好?
「これ?」
 
「そう。
 そのぱっつんぱっつんの
 黒のドレス
って…
 スパイファミリーのヨルさんですか?
「わかる!?
 やっぱりスパイといえば、
 この格好だよね!」
 
「違います。
 スパイは旦那さんの方です。
 
 え?!
 今、スパイって言いました?

 三月さん…
 何かヤバいことしようとしてます?

「べ、べ、べ、ぶべ、
 べうえ、別にぃ~」
 
ウソ、下手くそか!
 しかも、スパイって…
 ヨルさんの市役所の制服でくれば、
 こんなに目立たなかったのに」
「何で…
 何で、先に言ってくれないの!」
 
「知るか!
 っていうか、気付け!」
「まあまあ。
 スパイはそういう、
 細かいことは気にしない」
 
「気にしろや!
 準備をおこたるスパイなんているか!
 
シーーーーー!
 今、ターゲット確認!

 
「え?!
 あの女性…誰ですか?
「あの人?
 あの人はねえ…
 私のフォロワーさん♪
 
「はあ?
 フォロワーさん!?
 って、あの人を探りに、
 会社まで来たんですか?!」
「そうよ」
 
「三月さん…
 何か、あの人とあったんですか?
 それとも何か特別な仕事をしてるとか

「そうじゃないの」
 
「?
 じゃあ、なぜここに来たんです?」
あなた…
 それを知ったら…
 ただじゃ帰れないわよ

 
………
 覚悟の上です

「わかったわ。
 あなたがそこまで言うなら、
 私も全てを話すしかないようね
 
「………ごくりっ」
「実は…
 今回のターゲットは2人
 
「2人?」
ひとりはさっきのフォロワーさん。
 そして…もうひとりは男性

 
「男性?」
「いま私は…
 その男性をここから探っていたの」
 
「そうだったんですね。
 その男性はどこです?
 特徴は?
「知らない」
 
「知らない?!
 いま、探してるって言いましたけど?」
「言った…でも、大丈夫。
 私はアイコンの似顔絵だけで、
 フォロワーさんを見つけた女よ。
 並の観察眼ではないのよ
 
「おい!
 あなた…
 noteの公開されてる情報だけで、
 ここまで来たんかい!

「フッ。
 私をあまり見くびらないことね」
みんなが知ったら怖がるわ!
 
「あっ!
 あの男性!
 あの人に間違いない!」
「どうして、わかるんです?!」
 
「フォロワーさんを…
 ずっとチラチラ見ている…
 ほら!
 今なんか…ずっと見つめている!」
「………
 ごめんなさい。
 あの~これは一体、
 何をされてるんです?」
 
「これ?
 これは実態調査よ!」
「何の?」
 
片思い中カップルの、
 恋愛模様の現地調査よ

「おいおい!
 あなた、仕事をほったらかして、
 人の色恋沙汰いろこいざたのぞきに来たんかい!
 
「そうよ!
 だって記事を読んでたら、
 キュンキュンしちゃって、
 気がついたら、ここにいたんだもん♪

「もん♪じゃねえよ!
 今日、締め切りなんだよ!」
 
「だって…
 あのフォロワーさん…
 
 ずっと好きなのにその想いを、
 胸にずっと閉まっているの…。
 
 私たちには心の内を赤裸々に、
 話してくれるけど…
 
 これが実を結ぶことはなく…

 なかなかこの恋…
 進展しないの…

「………」
 
それでね。
 まずお相手の男性が気になったの。
 
 そのフォロワーさんはモテるのよ。
 でもその男性はアプローチしてこない。
 
 よってくるのは違う男性ばかり…。
 
 でも、その人のことが好きだから、
 他の人に告白されてもなびかないの…
 
 一途なのよ…
 全部、お断りしてるの。
 
 応援したくならない?

「………
 もう少し、詳しい話を聞こうか
 
「でねでね。
 
 私の見立てではその男性…
 脈アリだと思うの。
 
 きっとフォロワーさんのことが、
 好きだけど言い出せない系の男性と、
 私はにらんでる

「なるほど。
 あなたの観察眼では、
 そう見えるんですね」
 
「そうなの。
 彼女は純粋ピュアなのよ。
 
 そして…
 もしかしたらちょっと怖がりなのかも。
 
 でも、それって当然よね?
 
 どんな人だって、
 上手くいけばいいと思ってるけど、
 失敗した時のことも考えるでしょ?

「まあ、そうでしょうね」
 
「私は彼女のため…
 何かしてあげられないかと思って、
 ここに来た」
「三月さん…」
 
「私が寝ずに立てた計画、
 聞いてもらっていい?」
「どうぞ」
 
「もしものことも考慮して、
 今回の計画は、
 二段構えにしてみたの」
「二段構え?」
 
「1つ目が失敗に終わっても、
 もうひとつでカバーする。
 そういう計画」
「なるほど」
 
「この計画のコードネームは、
 【赤い糸】
「赤い糸?
 それはどんな計画なんですか?」
 
「説明するわね。
 
 まず私がフォロワーさんに近づき…
 小指に赤い糸を結びつける…
 
 そしてすかさず相手の男性に近づき、
 また小指に糸を巻き付ける…
 
 どう?

「小学生か!!
 仕事中に部外者が入って行って、
 人の小指に赤い糸巻けるか!!」
 
「そんなの…
 やってみないと分からんだろ!」
「やらなくても分かるわ!
 あなた…
 フォロワーさんと面識は?
 
「ない!」
「さっさと帰れ!
 そして原稿仕上げろ!」
 
「待って!
 まだ、もしもの時の二段構えが」
「………」
 
「これはもしもの時のため…
 できれば使いたくなかった。
 
 でもさっきの方法がダメなら仕方ない!
 編集さんも手伝ってくれる?」
「何を?」
 
「編集さん、
 この赤い糸の片方を持って
「こう?」
 
「そう。
 そして編集さんはそっちの壁に。
 私はこちら側の壁に。
 
 ここからが大事よ。
 
 2人がここを通ります。
 
 そして私たちの前に来たら、
 この赤い糸を思いっきり引っ張るの!
 
 すると糸に引っかかって、
 2人は転倒。
 
 そして男性が立ち上がり、
 フォロワーさんを優しく抱き上げる!
 
 どう?

「なるか~!!
 まず2人が一緒に通らん!!
 それに廊下に赤い糸持って、
 こちらを見てる不審者に、
 近づく人間、誰もおらんわ!」
 
「チッ!
 相手が一枚上手だったか!」
「あんたが幕下以下なだけだよ!
 くだらないことやってないで、
 さっさと帰って仕事しろ!」
 
「ああ~
 せっかく来たのに~
 
 ガンバレ~
 
 いつでも応援してるよ~
 
 告白なんて…
 してもしなくてもいいからね~
 
 でも…
 
 一緒に居られる時間を大切に~
 
 2人の良い思い出~
 たくさん作ってね~
 
 私~
 見守ってるから~

 
「行きますよ」
「うん」
 

このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。
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