見出し画像

アナタの責任

男性二人。
 
「ついにここまで来たかって、
 感じですね」
「今の時代、
 最先端を行かないとダメなんだよ。
 だからどこよりも先駆さきがけて、
 俺はAI脚本を採用したんじゃない」
 
「しかし、デジタル技術の進歩は、
 まさに光のごとき速さですよね。
 
 この前までは、
 ちょっとずれた文章生成してましたよね。
 
 それが今ではこっちがうなるほどの、
 作品を書き上げるんですから」
「だろ?
 あとは人の手でちょっと手直しすれば、
 もうオリジナル作品なんだから。
 
 AI危険だから使うなとか、
 規制しろとかスト論議ろんぎしてる間に、
 使いこなすのが正解なんだって。
 
 何でもルールが出来上がる前の市場が、
 一番もうかるんだから。
 そして日本はゆるから狙い目」
 
「さすがです…。
 これで脚本家への脚本料、
 かなりおさえられましたね。
 
 浮いた分をキャストや制作に、
 当てることもできましたし」
「お金をどこに使うかでしょ、やっぱり。
 
 ビジネスに倫理とか道徳とか、
 世間がさわいでるうちに、
 AIでスピードアップと効率化。
 
 今、ちんたらお話し合いしてる奴らは、
 気付いた時には技術も売上も、
 周回遅れだから」
 
「青田買いですね」
「当たり前!
 映画は投資だよ!
 
 こっちは金出してんだから、
 配当がないならやらないよ。
 
 削れるものは削る。
 それが俺の仕事。
 
 わずかな種で大きな実りを約束するのが、
 映画製作では一番大事なんだよ」
 
「じゃあ今回の作品の収益も、
 期待できますね」
「俺の力量だよ!
 当然でしょ!」
 
AI脚本による映画は話題性もともない、
ランキングに入るほどの興行収益を得た。
 
しかし…
数作品目になると客足は落ち、
AI脚本の神通力は通用しなくなった。
 
応接室。
 
社長。
 やはりもうAI脚本は駄目ですね。
 今後も収益が伸びる見込みがありません。
 前作もAIで手を加えずに、
 あのまま原作路線ならこんなことには…」
 
突然、入ってくるプロデューサー。
 
「よっ!」
 
「あっ、どうも。
 お呼び立てしてすいません」
「どうしたの急に?」
 
「あの~実は…
 社長とも話し合ったんですが…
 今回…」
「そういやさ。
 やっぱりAI脚本家止めて、
 次回作は前みたいに、
 人に書かせようかと思ってんの、俺。
 どう?」
 
「そうですか。
 いや、社長も私もその方がいいと、
 思ってたのでそのお話もあったんです」
「そう?やっぱりそう思った?」
 
「はい。
 AIの書くものは、
 完成度は高いんですけど、
 マンネリというか…
 人の創作物の枠からはみ出ない…。
 でも、はみ出すと意味が分からなくて…。
 丁度いい奇想天外きそうてんがいがないんですよね」
「そう?
 そんなことどうでもよくない?」
 
「は?」
「ここ何本か作品、大コケしたじゃん?」
 
「はい…そうですね」
「そしたらみんな俺をめんのよ。
 俺の責任?って、俺は思うわけ。
 みんなも関わってるでしょ?って」
 
「はあ…」
「だからさ、AI脚本を止めればさ、
 作品コケたら脚本家に文句言えるじゃん。
 ね?
 AI脚本はコスパはいいと思ったけど、
 大コケした時のはけ口までは、
 考えてなかったわ~。
 やっぱり脚本は人間に限るね!」
 
「その件なんですけど、
 ついでに言わせて頂きます。
 
 AI社長と私とで話し合いを重ねた結果、
 あなたは映画プロディースから、
 外れて頂くことになりました。
 
 これがこれからの当社にとっての、
 賢明な判断であると。
 
 残念ですが、そういうことです」

へえ~
 AIってかしこいんだね

 
 

このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。 

この記事が参加している募集

この経験に学べ

AIとやってみた

お疲れ様でした。