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仮面ブショウ会

前作はこちらです。
読み切りですので、
お時間のある方はどうぞ。

【前回】
新商品の変身フェイスマスクで、
芸能人に変身するめいちゃんに、
おどろいてばかりのみよちゃん。
 
「無料配布されてたなんて知らなかった。
 めいちゃんはどこで知ったの?」
「SNSで芸能人が、
 やたらとツイートしてたよ」
 
「私、最近SNSさぼってた」
「みよちゃんはきっちりしてるのに、
 SNSの更新だけは苦手だね」
 
「なんかね、情報が多すぎて疲れるの。
 本とかってこの1冊の空間に、
 限られた情報だけじゃない。
 閉じられた情報っていうのかな…。
 でもSNSの真偽しんぎの分からない情報に、
 一喜一憂いっきいちゆうしたり選別するの疲れるの」
「言ってることよくわかんないけど、
 間違った情報の判断は難しいよね。
 ほんとかうそかわからない記事を、
 書く人もいるし。気をつけないと」
 
「それにしてもそのマスクよく販売できたね。
 犯罪に使われちゃうんじゃない?」
「その心配はないってニュースで言ってた。
 色々制約せいやくがあるんだって」
 
「制約?」
「う~んとね。
 まずは全店舗内での使用禁止」
 
「ああ~。それはそうだね。
 別人の顔で窃盗せっとう強盗ごうとうとかありそう。
 でもお店の人って、
 マスクの人物どうやって見分けるの?」
「まずお店としては今まで通り、
 フルフェイス入店禁止の張り紙で注意喚起ちゅういかんき
 入店前の自主的な脱帽だつぼううながす。
 まあそれでも守らない人必ずいるから、
 入り口に監視用AIカメラを設置。
 それがマスク入店する人を検知し、
 知らせてくれるんだって」
 
「え?顔認証なの?」
「違う。マスクにIDタグがついてて、
 それが身体からだのどの部分にあるかで、
 判断するってSNSに書いてある」
「頭いいね。でもIDタグなんて、
 マスクから簡単に取りのぞけるでしょ?」
 
「みよちゃん。
 このマスクのタグは繊維せんいらしいよ。
 み込まれた電気を通す糸に、
 情報が保存されてるらしいの」
「なに、その未来的な技術。
 じゃあタグだけを外すことは不可能だね」
 
「すごいでしょ。
 タグはマスクの全体かもしれないし、
 一部かもしれない。
 私のタグはきっと…横の糸かもしれない…けど」
「プッ、急に中島みゆき?
 でもそこまで防犯対策が
 しっかりしてれば安心かも。
 ただ出入りのたびに、
 マスクをかぶって脱いではちょっと面倒かな」
 
「そこはね。
 でも調べたらマスク入店OKの店、
 すぐそこにあるんだよ。
 美味しいランチが食べれる店なんだって。
 今日はランチそこにしてみない?」
「行きたい」
 
古民家を改装かいそうしたような内装ないそうに、
座席数ざせきすうは約20席ほどの、
少し落ち着いたトーンのお店。
 
「良かったね、みよちゃん。
 マスク貸してもらえて」
「自分はノーマスクなの忘れてた。
 ネクタイ必須ひっすのレストランみたいに、
 入店拒否されたらどうしようかとあせっちゃった。
 でも貸してくれて助かった~。
 良心的だし良い店そうね」
 
「雰囲気いいよね」
「これってひょっとして、
 イベント中なの?」
 
「よくわかったね。
 今日は|仮面舞踏会《かめんぶとうかい》
 フェイスマスクで変身した人が、
 楽しむイベントなの」
「面白い!確かに色んな人いる~」
 
「お待たせしました。
 タラコアオリイカのパスタの方?」
「はい」
「こちらはポルチーニ茸と、
 パンチェッタカルボナーラです。
 ごゆっくりどうぞ」
 
「美味しそう!食べよ!」
「うん!」
 
「やっぱりカップル多いね。
 そうだ!うちらもやらない?
 みよちゃん今日、
 パンツでストリート系っぽいから、
 男役やって~」
「別にいいけど、どうやるの?」
 
「ちょうどつむじの部分にボタンがあるの。
 それを1回押すごとに性別が変更される。
 人を選ぶ時は耳たぶのボタンね」
「つむじ、つむじ…あった。はい!」
 
「おお~!横浜○星くん!
 なんか急に緊張してきた」
「そうなるでしょ?!
 私ずっとソワソワしてたんだよ」
 
「よし!
 せっかくだから私も変えよう。
 え~と何番目?…5番目か。
 じゃあ5回押して、はい!」
「深田○子~。はじこい~」
 
「可愛い。
 他のお客さんもこういう組み合わせ多くない?」
「ほんと!あそこは目○蓮と川口○奈だ!」
 
「そこは佐○健と上白○萌音。
 なんかドラマ見てるみたいで素敵」
「あれ?あそこって目黒○と道枝○佑」
 
「そういうのも自由なんだね。
 中の人の性別とか外の顔の性別も」
「なるほど~。
 あっちに比嘉○未と西野○未もいるし」
 
「またこのマスクのことで、
 ネットは論議ろんぎにはなりそうだけど」
「でも、なんで急に売りだしたのかな?」
 
スポンサーちからが強いからじゃない?」
「スポンサーって?」
 
大手芸能事務所芸能の業界団体が、
 巨額きょがくの資金を投資してるって」
「なんで?」
 
「芸能人が人目を気にせず
 街ぶらしたいからだって」
「ああ~そうか!
 東京だってあれだけ連日ロケやってても、
 見つけたら寄ってくるし撮影されるしね」
 
「このマスクで、
 みんな芸能人ならまぎれられる」
「やっぱり、これ流行るね!」
 
「でもね、このマスク。
 ひとつだけ問題があるの」
「なに?問題って?」
 
「マスクだから食事をすると、
 口周りがよごれるの」
「それ気付いてた。
 めいちゃん、めっちゃタラコついてる」
 
「そういうみよちゃんは、
 口の周りが黄色いソースで、
 泥棒髭どろぼうひげみたいになってるよ」
「他の席もみんなそうなの……ウケる~
 
 

この話はフィクションです。
実在の人物とは関係ありません。

お疲れ様でした。