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映画「白爪草」観覧直後の感想

・電脳少女シロさんが主演の映画「白爪草」がオンライン上映中です。
・もともと2020年秋頃一般公開、その後ミニシアター系での上映がある(現在進行中)。
・まだ見ていない方への配慮はあまりありません。予めご了承下さい

上映券の購入はこちらから。踏むことで筆者が得をするようなリンクではありません。

https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2169564

また前回、および書き途中のnoteは以下。現在のページに書かれていることは観覧後の熱量を大切にするために、初期衝動を重視して残すものです。(以下本文内敬称等省略)

サスペンスだということは聞いていたため、どのようにその猟奇性が観客へ襲いかかってくるのかにかなり興味があった。

しかしながら(上映後:同一コンテンツ内での最終チャプターである監督・脚本・プロデューサによる歓談会でも言及がありましたが)「バーチャルYouTuber」が主役であるという先入観をいかにしてなくし、自然な入りで見てもらうかということがひとつ製作委員会側のテーマでもあったようで、たしかに上映開始語すぐに観覧側の印象に残ったのは圧倒的とも言える花組(舞台となる店舗名)内覧であったかも知れません。

あるいは男のものと思えるような声。声というよりは緊迫感を示すSEのようでもあり、女の子(ぼくの主観ですが、バーチャルYouTuberは性別を特に自ら言及していない限り無性別であることが多い。しかしながらこの映画では「電脳少女シロ」と名乗っておられる方が主役であるため、その限りではありません)が主役の映画なのに男の声が聞こえる、一体どういうことなんだろうという違和感が与えられそうです。

画面が非常に不安定であることで、観客が最初に見せられていた映像は幻覚か夢か、あるいは過去にあった事実かと徐々に認識できる。

あるいはこの映画の不穏さを思わせる舞台装置として機能しており、直後の花組店内に広がる、カラフルな花々を愛する趣向がある人にとっては楽園のようなあの光景に目を奪わせられることでしょう。

とはいえ、楽園とは言っても快晴の青空の下で思わずはしゃぎたくなるような明るさでは無い。おそらく人工光ですね。

植物に全く明るくないためわからないのですが、ある一定の光度を必要とする専用の部屋を花組は持っている。その灯りが観客の目には鮮明に映る。主演と思われる少女の髪型と鼻歌で、そういえばそういう映画であった、と「映画内の現実」に引き戻される。

映画は恐らく(明確に午前/午後について言及されてはいなかったはずであるため)PM8時からAM3時までの間で完結しています。本来であれば暗く、生き物は活動をやめる時間帯ですね。

ジャケットの猟奇について

またこの映画の印象的なジャケットですが、電脳少女シロが全面に写っているというわけではなく何かの群れの向こう側から電脳少女の役柄であると思われるキャラクタが目だけこちらを見つめているというもの。

題名は草花の中でも草に重点を置いているように思えますが、ジャケットに撮影されているのは薔薇、つまり花です。

花の中に何かが埋もれているという暗示なのでしょうか。

あるいは最大の謎をこのジャケットに対して無理やりあるいは自然に抱くのであれば、この人は蒼なのか紅なのかということ。

それも終わった後の紅なのか、終わる直前の蒼なのか。

花組の猟奇について

埋もれているという表現をしましたが、舞台である花屋「花組」が商品として所有しているプランターの中には夥しい量の人の遺体が埋められている。

しかし観客から向こうの世界に干渉して確かめる手段はない(敢えて回りくどい書き方をしましたが、こちらの事情はバーチャルYouTuberが主演の映画でもそうでもない映画でも同じといえます)ため、俳優たちの劇中台詞を信じるほかありません。

……と思っていたのですが、最序盤で観客は店内を翔んでいる、恐らく羽虫のような者の視点を得る。その視界には平和で華やかな花屋を感じさせる色とりどりの花や、後々物語上でフレグランス系の商品だとわかる小洒落た瓶なんかも映り込む。

フレグランスは堆肥とか刺激のある薬剤の香りを中和するためにあるかもしれないし、土の中に埋まっている遺体の破片から漏れる腐りをカバーするために存在しているかも知れない。おそらくどちらが本当に正しいのかを知っているのは蒼だけでしょう。

もしかしたら後の紅が、蒼が存命だった頃から店内に残っている商品の腐葉土をすべてひっくり返して調べるという可能性はゼロではありません。

白爪草を誤字だと思っていた紅が、その後白詰草を白爪草と書くようになったあたりに、その事情に繋がるヒントが隠されているのかも知れません。

白詰草の花言葉なんかは、舞台上では一切明かされなかった。これはあの物語を最後まで見届けた観客なら、必ず白詰草の花言葉を調べるだろうと踏んでのことでしょう。

一旦の後記

このように、ぼくは予め何らかのサスペンスであるというふわっとした情報だけ得ていたため、単純に自分の常識に合わせて、予定通り何らかの流血があるものだと思っていた。

しかしながらエンターテインメントの象徴であり、実在しないとは言え、普段彼女たちが生きている中でその姿かたちを傷つけないし傷つかないバーチャルYouTuberの見た目をたとえ形而上学的にでも傷つけ、損傷を与える行為・表現について演出だとしても実行するかどうか、製作委員会は最大のポイントともいえるほど悩んだのではないでしょうか。

しかしながら流血や損傷を決して見せない状態で観客を怖がらせ、思い出すだけでも身の毛がよだつとか思わせる力がある映画だったように思います。この点を実現することこそが白爪草という映画を完成させることであり、そのような映画になった。

もちろんぼくは委員会は特にそんな事は考えておらず、こちらもまたさらに後日書きたいですが製作委員会代表3名による会話の中でも表現された、主演を決める前(つまりアクターとしてのバーチャルYouTuberをいかにして扱うかという問題に直面する前に)たった3日で出来上がった脚本の中でその状態だけは既に完成されて居たとしても全く問題ない、とんでもない映画を見たと思えることでしょう。

一旦ここまでに致します。ぼくが白爪草を見たのはまだ1回であるため、本文にも書いたとおり更に考えたくなったら続きを書いて行くつもりです。

お読みくださりありがとうございました。

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