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朝起きて学校に行く話

目覚ましのアラームが鳴ったので、殴った。
うんと殴ってやった。
目覚ましはサンドバッグ。殴られるのが仕事である。彼はたまに僕の部屋から出て、渋谷の夜の街。ハチ公に見られながら、「一回100円」のスケッチブックを片手に殴られ屋をやっているらしい。だけれども、こんなご時世だから、スケッチブック代を稼ぐのもやっとで、始発までうんうん粘って、ほとほと疲れた顔でこの部屋へ帰ってくる。
あまりにも疲れた日は、僕を起こすのを忘れて眠っている。寝坊した僕は怒って、彼を殴る。無料で殴る。沢山殴る。
だけれども、少しだけ悪く思って、僕は学校帰りにコンビニエンスストアへ。レジの横にある、ガムマシーンからピンクの大きなのを捕まえてきて、ポケットに突っ込んで、彼の前に置いてやる。長すぎる夜を過ごすにガムはもってこいで、僕は彼が夜の街で出番を待つメジャーリーガーみたいにくちゃくちゃやるのを想像してくすくす笑う。
僕は目覚ましを殴り終わるとトイレに行く。朝だから立ってする。本当は座ってしなさいとお母さんに言われているけど、立ってする。朝だから。前に一度、構わずに座ってして床をびしょびしょに濡らしたら、めちゃくちゃに殴られた。お母さんの言うとおりにしたのに、と言ったらまた殴られた。お母さんは女だからわからないのだと思って見せたらもっと殴られた。
女という生き物はよくわからない。
今日は目覚ましを殴ったせいで時間がなかったので朝ご飯はパスした。女の作る飯はつまらない。お母さんが家でしたときにお父さんが作ってくれるチャーハンは面白い。ウインナーや豚の脂身が入っていてとにかく茶色い。とってもしょっぱくて、お肉が甘いってことに初めて気付く。だけれどもお父さんはそれしか作らないし、やっぱり毎日は食べていられないから、お母さんのご飯は必要だ。 でも、今日はパス。右手が痛むから。
家を出て自転車に乗っていたらやっぱりお腹がすいた。僕はコンビニエンスストアに自転車を投げて横倒しにして、勢い余ってちょっとだけ蹴った。夜勤明けの金髪がレジに居て居眠りをしていた。金髪は何の責任も持ち合わせていないから、僕はすがすがしい気持ちで梅干しのおにぎりをポケットに入れた。金髪は僕に気付いているけれど、何も言わない。金髪には責任がないからだ。だけれども僕は申し訳なく思って、ガムマシーンでピンクの大きいやつを買う。金髪はやっぱり何も言わない。
僕はコンビニエンスストアを出て、自転車の歪んだカゴをもう一回蹴って元に戻す。そしたら今度はハンドルが曲がってしまったのでまた蹴る。力いっぱい蹴る。思い切り蹴る。
そんなことをしていたら黒い野良猫がやってきた。
僕は猫が好きだ。
猫は僕の友達である。人間の友達よりもずっと賢いし、人間の女の子よりもずっと可愛い。人間の大人よりもずっと落ち着いているし、人間みたいに無駄に長く生きるなんてことをしない。猫は人間よりもずっと尊敬できる。
僕はさっきのおにぎりの海苔の部分だけを丁寧に剥いであげた。間違えても梅干しはあげちゃいけない。猫には毒だ。
僕は友達にさよならをして、梅干しご飯を食べた。
一日のうちでさよならをした後にまたおはようというのは変だと思ったので学校には行かないことにした。