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電車と文庫本

「この20年で変らなかったのは、本への思い入れを読者に伝えようとし続けた書店員たちの存在である。彼ら、彼女たちがこれからも書店を支え続けるのである。・・・」 学芸出版社営業部の名物社員・藤原がお送りする、本と書店をめぐる四方山話。

新聞、文庫本は通勤電車の主要アイテムだったが、今はゲームをしたり、メールやライン、ツイッター、フェイスブックをチェックするスマートフォンが主流になっている。

帰宅の電車内は夕刊紙やスポーツ新聞が幅を利かせていた。多くの人が新聞を広げているので、人が読んでいる新聞のヘッドラインを読むだけで時間を潰すことも出来た。こんなことは今では出来ない。

朝の通勤電車内で僕の前に座る男の人は、毎日文庫本を読んでいる。

ブックカバーが掛かっているのでどれぐらいのペースで本を読んでいるのかはっきり言えないが、本の厚さとページを繰るスピードから推測すると2日で1冊というところだろうか。

携帯電話はガラケーで僕が持っているのと同じタイプ。おっちゃんでもスマホゲームに夢中になる時代に文庫本はかなりの少数派である。

ブックカバーが掛けられているので何の本なのかは不明であるが、紳士然としたその雰囲気から時代小説であると僕は勝手に想像している。また、ブックカバーが一定しないので営業関係の仕事かな?とか思ったりしている。

あれやこれやと空想したり思いめぐらせたりすることはある知的な時間の過ごし方だが、電車の中でやるそれは単純に時間をやり過ごすための妄想だったりする。

でも妄想もいいじゃないか。文庫本からそれだけの妄想が呼び起されるのだから。

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