アーキテクチャーフォトというメディアでの気づき|『建築家のためのウェブ発信講義』【試し読み】

2018年4月初旬発売の新刊『建築家のためのウェブ発信講義』
建築系ウェブメディア「アーキテクチャーフォト」編集長の後藤連平さんが、藤村龍至さん(RFA)、連勇太朗さん(モクチン企画)、豊田啓介さん(noiz)など、ウェブを使いこなす建築家たちへの取材を交えながら、SNS時代ならではの新しい「建築家」行動戦略を解説した一冊です。

この記事では、1章「アーキテクチャーフォトというメディアでの気づき」の一部を公開します。

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建築家とメディアの関係を俯瞰する

今、建築家を取り巻く世界には、紙媒体・ウェブ媒体を含め、実に様々なメディアが存在しています。一般的には、伝統ある建築雑誌や、一流の編集者がディレクションする情報を「メディア」と認識することが多いでしょう。

しかし、ネットの発達した現在では異なる視点を持つこともできます。たとえば、あなたが日々つぶやきを投稿しているかもしれないTwitterも、メディアだと言えるでしょう。
そして、あなたの友人が、海外旅行中に有名建築家の最新作品をSNSに掲載したとすれば、その投稿でさえもメディアであると言えるのではないでしょうか。

もちろん、伝統ある建築雑誌に自身の建築作品が取り上げられることは、第三者から評価されたという実績になりますし、どんな建築家にとっても意義深いことです。
しかし、だれしもが発信者になれる現代において、建築家の皆さんは、三つのことを認識しておくべきだと思っています。メディア運営者の立場から解説してみます。

一つ目が、メディアに掲載されるまでの大きなハードルです。
それぞれのメディアごとに、掲載の基準や視点が存在しており、自身が価値あるものをつくりだしたと思っていても、それぞれの媒体の視点で内部の編集者に価値を感じてもらわなければ掲載に至ることはありません。

たとえば、時代の最先端を意識する建築メディアでは、大胆なプロポーションやクリエイティビティを明確に表現することで革新性を求める思想と対照的な“慎ましい”建築が評価されにくい傾向があるように思います。
良し悪しではなく、それぞれのメディアによって、その読者も異なりますし、編集的視点も異なるのです。また、掲載される作品はそれぞれのメディアの「編集」を経て読者に届けられます。

メディアによる編集という行為は、あなたの建築作品をより良く見せることに寄与するのは間違いありません。しかし、編集によって強く作品が方向づけられ、読者にとって特定のバイアスがかかるとも言えるのです。
それはつまり、良くも悪くもあなたの建築作品は、編集者の見せたい切り口で読者に届けられるということです。それはもしかすると、あなたの建築を伝える最適な方法ではないかもしれません。

二つ目は、作品を紹介するフォーマットの画一化です。長年親しまれた固定のフォーマットがメディアによって存在しており、自由度が少ないということが言えます。
特にウェブメディアで言えば、掲載できる写真のサイズや構成などはパソコンやスマートフォンの画面という制約があり、自由に考案できる範囲が限られています。
ちなみにアーキテクチャーフォトでは、そうした制約のなかでも、タイトルや写真の選択、引用する場所の選択によって、掲載する作品の良さが伝わるように毎回アイデアを練っています。

ただそれでも、個々の建築家の皆さんの作品の良さをメディア上で100%表現するのは困難だなと感じます (その可能性を高め続けることには挑戦していきたいと思っていますが)。
言い換えると、それぞれのメディアが、それぞれの建築家の皆さんと作品の特質に合わせてレイアウトを全面的に組みなおしたり、一つの作品に合わせてシステムを構築するということは、なかなかに難しいのです。

これはウェブ媒体に限ったことではなく、紙媒体でも同じだと思います。
紙媒体なら写真サイズや文字のレイアウトといった部分において自由度は増しますが、やはり、メディアごとに基本的(慣例的)なフォーマットは存在しており、それを守りつつ、編集が行われているのが現状でしょう。

三つ目は、どんなに世界的に著名な建築家であっても、雑誌にしろウェブにしろ毎号毎号連続してメディアが特集し続けることはできないというジレンマです。

どのようなメディアでも読者の興味関心を保ち続けられなければ、存続しないのは言うまでもありません。日々様々な企画や新鮮なアイデアを打ち出すことは、メディアがメディアである所以でもあり、特定の建築家を常時特集し続けるということはできないのです。

このような状況を踏まえると、建築家自身によるウェブ発信は、非常に自由で可能性があります。
まず、自身が完成させた建築作品を、間違いなく掲載することができます。そして、作品を自身が最も効果的だと思う切り口・見せ方で発信することができるのです。
ホームページならば自身の作品の特質に合わせたレイアウトをつくることもできますし、どの部分に注目すべきか自身で説明することができます。そして、自身のことを毎日でも発信することができます!

現代では、自身のホームページを持つことは非常に容易です。そのほかにも、無料で使用できるブログサービスに加え、無料で使用できるSNSなど様々なウェブ発信のためツールが存在しています。

もちろんそこには、2章で紹介するように自身の建築家としての価値がどこにあるのかを冷静に客観的に判断する視点や、常時発信し続けなければいけないという、他人任せにできない作業も発生します。

しかしそれ以上に、建築家自身によるウェブ発信が、これまで建築業界が築いてきた価値体系の枠を超える手がかりとなったり、異分野との連携などをスピーディに変化させていく可能性を持っているのは間違いありません。

ウェブ発信は「学問としての建築」と「ビジネスとしての建築」の両方に活用できる

多くの読者の皆さん同様、私自身も、建築学生として6年間アカデミックな場で設計・理論を学び、その後、東京の組織系設計事務所、地元静岡の小規模設計事務所での設計実務を経験しました。ですので、建築業界の事情は心得ているつもりです。

そのうえで、誤解を恐れず端的に表現するならば、建築の世界には、「学問としての建築」と「ビジネスとしての建築」という大きく分けて二つの側面が存在していると思っています。

建築メディアなどに作品が掲載されたり、それを業界内で批評したり、建築の歴史の中に位置づけようとする側面は「学問としての建築」と言えます。
そして、実際にクライアントとつながり、報酬をいただき設計することや、利益を上げるために試行錯誤する側面は、「ビジネスとしての建築」と言えます。

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▼ 続きは本書で ▼

建築家のためのウェブ発信講義

アーキテクチャーフォト・後藤連平 著

ゼロから仕事をつくるためのプロモーション、社会を巻き込む建築理論の構築、施主候補との信頼関係を築くコミュニケーション。建築家9名がウェブ上で打ち出す個性的な実践を手掛りに、読者各々の目的に合った情報発信の方法を丁寧に指南。建築メディアに精通する著者によるSNS時代ならではの新しい「建築家」行動戦略!

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(装丁:UMA / design farm 原田祐馬・山副佳祐)

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