LOCAL PRODUCE BOOK (10) 「企画書論」
続いては、「企画書」についてお伝えします。
毎回書いている気もしますが、企画書づくりにも様々なノウハウとコツが詰まっています。ぜひ参考にしてみてください。
プロデューサーの「商品」 ≒ 企画書
プロデューサーになって15年が経ちました。デザインを作るわけでも、WEBサイトを構築するわけでもなく、何をやってるか一見分かりにくいプロデューサーという仕事。その「技術」はなかなか見えにくいものです。
プロデューサーの技術を言語化してみると、「考える」ことと「動かす」ことだと思っています。
◉「考える」は、プランニング/デザインディレクション/計画策定/方針/戦略/座組み/予算調達・管理など。
◉「動かす」は、実行/プロデュース/プロジェクトマネージメント。
その両輪が駆動しているのが、あるべきプロデューサー像だと考えています。
「動かす」方法は前回のプロマネ論で紹介したのでそちらを参照していただくとして、「考える」ことがプロデューサーの重要な仕事であり技術だとすると、その思考を可視化したものが企画書です。
つまり、企画書自体がプロデューサーの「商品」ともいえます。100万円の仕事であれば、その企画書自体が100万円の価値があるものとも言えますし、1,000万円の仕事であれば1,000万円の内容と顔つきになっていないといけません。企画書を作成する際は、もちろん場合によりますが、そうした考え方・スタンスを前提に、より価値ある企画書が作れるようになるといいでしょう。
そういうわけで、今まで様々な種類の企画書を作成してきました。プロデューサー歴15年で年間10本を作ったとしても150本以上の企画書。小さいものも含めると数えきれません。企画書を書くことは、プロデューサーの大事な仕事でもあります。
企画書 = カレーライス
ここで、唐突ですが、企画書が完成するプロセスをカレーライスの調理に例えてみましょう。
当たり前ですが、いきなり魔法のようにカレーライスが目の前に出現しないように、何カレーにするかを決めて、にんじん、じゃがいも、たまねぎ、肉、ルーなどを買ってきて下準備をしなければいけませんね。企画書も、まず企画書として必要な材料を整理するところから始まります。
企画書に必要な材料とはなんでしょう?
研修では、それを書き出してもらうところから始めています。
ざっと洗い出してみると以下のようになります。前半・中盤・後半に分けてみました。
前半は、「はじめに」や「目的」のような"そもそも論"から始まり、調査結果や仮説などが入るでしょう。続いて中盤は、曲でいうと「サビ」に当たる部分で、企画書のコアになる具体施策やアイディアをドーン!と伝えるパートです。盛大に歌い上げてください。
最後のパートである後半は、スケジュールや予算など、実際にやる・やらないの判断、またはどのぐらいの規模感でやるかを判断するための現実的な内容が入ります。ラストは、提案内容をまとめたページが入ると親切ですね。
大切な企画書のページネーション
上記のような企画書は、かなり基本通りのページネーション(ページ順)で作ったものなので、例えば "サビ" にあたる具体アイディアを真ん中ではなく冒頭にドーン!と持ってきた上で、「と、いうのもですね…」とその後に背景や目的を語る順番にすることもあります。むしろその方がわかりやすい時が多いかもしれませんね。
このサビをどこに持ってくるか問題は結構大事で、プレゼン論にも通ずることですが、企画書の書き手・話し手は、提案に至るまでに考えて考えて企画書を書いていますので、ついその思考の変遷を順番通りに伝えたくなるものです。
しかし、聞き手はその時はじめて聞く話なので、あまりにも前段が長くなりすぎると、「で、何を言いたいの?結論はまだ?」となってモヤモヤしてしまうのです。ここに大きな温度差があります(注意!)。
名付けると「前段にページを使いすぎてアイディア出てくるの遅い問題」。痛い目を何度も見ました。
とはいえ、前段の調査データの説明が重要な時もあるでしょうから、ケースバイケースでもあります。企画書も【なぜ、誰に、何を、どのように】という企画フレームと同じだと思えば、企画書を受け取る相手がどんな内容を求めているかによって、企画書のページ、フォーマットを変えるといいでしょう。
企画書のフォーマット
企画書を渡す相手の立場によって、それぞれ重視するポイントは異なります。相手がどんなところを気にするか、どんなニーズを持っているかを踏まえて企画書の要素や順番も整理していきましょう。
上記表の一番右に「仲間」と入れましたが、企画書は外部にだけ見せるものではなく、同じチームメンバーや仲間など、インナーに向けてもマニュアル的に機能するものです。外部に向けては、プロジェクトの本気度、思考の解像度を示すものであり、内部に向けては、行動を規定するマニュアルとなるのが企画書のいいところです。
ここまで、なんとなく「企画書=スライド形式」を前提にお伝えしてきましたが、何も企画書=パワポではありません。むしろwordなどのドキュメントタイプで企画シート的なものを作る業種も少なくないでしょう。
以下はプロジェクトの進捗に応じたフォーマット例。限りなく初期の頃は、がっつりとした企画書を作る必要は全然なく、意図が最低限伝わるようなテキストや箇条書きなどでも良いと思います。もっというと、手書きの状態で見せて伝わるのであれば、それでも良いケースもあります(状況や立場にも寄りますのでTPOに合わせて判断してくださいね)。
企画書の書き方、順番
なお、企画書作成でも最初は「手書き」をオススメします。手書きをオススメする理由はいくつかありますが、まず脳内の思考スピードと同じ速さで図を描けたり、言葉を書けたりすることが大きいです。
最初は色々な方向性や可能性を素早く検討したいので、どんどん数を描けるとよく、そのためには手書きが最も速いなぁと。あと、身体的に手を動かすと脳が動く感じがして良いです。これが一番目の理由ですかね。自分は紙派ですが、ipadでもいいと思います。
まずは手書きをオススメする2つ目の理由は、パワポなどのスライド形式(自分は人に共有しやすいのでGoogleスライドを使用)で資料を作る場合、ビギナーによくあることですが、無駄に色味やアニメーションにこだわってしまうため、肝心の「思考」にかける時間が少なくなることがあります。
装飾よりも中身がどれだけ詰まっているかの方が大事なケースが多いので、最初からスライドを使って作り始めるよりも、思考の道筋が見えるまで考えてから、一気にスライドを作り込んだ方が良い気もします。
ただ、慣れている方はいきなりガシガシとスライドを作り始めるでもOKでしょう。僕も今ではすぐにスライドで作り始めています。
手書きスタート派か、いきなりスライド作成派かは自分のレベルに応じて使い分ければいいと思いますが、いずれにしてもポイントがあります。それは、企画書の要素をうまくトリガーに使って、思考を動かしていくことです。
どういうことかというと、例えば、「目的ページ」には目的を改めて考えて書き出すことになりますし、「背景ページ」にはそもそもの前提を書き出さなければなりません。「具体アイディアページ」であれば、相手に伝わるように具体アイディアを整理して書かなければならない。このように、企画書の各項目に合わせて必要なことを考えていくと、自ずとプロジェクト細部の解像度が上がり、輪郭もハッキリしてくるのです。
企画書は、思考がまとまってから書くのではなく、むしろ書き出す中で、思考がまとまっていくものです。いつまでもウーンと悩んで手を動かさないよりも、企画書の項目に助けてもらいながら思考をどんどん動かしていった方が、結果的には早く仕上がります。
企画書作成の手順をまとめると以下のような感じかと。
ただし、繰り返りしお伝えしますが、慣れてくれば②から入る、または③から入るでもいいと思います。ただ、手書きで書き出すメリットもあるということも知っておくといいでしょう。
加えて上記の②と③の間に入るような簡単なフォーマットも紹介しておきます。大学の授業などでも紹介してますが、このように2枚ぐらいでギュッとまとめる方法もあります。長い企画書=良い企画書ではなく、むしろ要素が整理されていて、企画内容を確認する人が短い時間でもチェックできるようにしておくと良いでしょう。
企画書のデザイン
最後に、企画書のデザイン・見せ方について、幾つかコツを紹介します。書籍化した際には多くの実例を示せたらいいなぁと思います。
① 1ビジュアル = 1メッセージ
あえて強調したいページは文字量を減らして、インパクトを残します。プレゼン時などは、このようなシンプルなページを出しておきながらフリートークで力強く語るのをよくやります。パンチラインを繰り出すラッパーのようなイメージです。
②キーカラーを絞る
色味をたくさん使いすぎないことも大切です。色味が多すぎると幼稚に見えるので、大体3色ぐらいに絞るとシュッとしてきます。フォントもトーンに合ったものをセレクトしましょう。
③ 円や四角など図をうまく使う
視覚的に伝わりやすい図も活用しましょう。色々な企画書を見て真似するといいと思いますが、僕は円を二つ重ねたりすることが多いです。これも芸風なので自分なりの表現を見つけられるといいと思います。
④ まとめページをつけてあげると親切
忙しい相手に対しては、提案内容がまとまった1枚シートをつけてあげると親切だし効果的です。提案を受けた相手先の担当の方が、組織内の上司などさらに別の人に企画を説明する際も、このようなシートが1枚あると喜ばれます。
企画書論は以上です!
企画書に関してはとにかく上手な人のものを見て、真似して、盗んでいくしかありません。僕も新卒の頃などは休みの日に出社した際、よく先輩の机の上にある企画書を読み込んでいました(こっそりコピーも取って御本尊としてました)し、とにかくいいと思ったフォーマットはガンガンパクりました。そうするうちに自分のものになります。
身近にそういう人がいなければネットで検索すれば様々な企画書フォーマットがたくさん出てくるでしょう。そうしたものを真似して、とにかく数を作らないと上達しません。まずは、どんどん書いてみましょう。
今回もお読みいただきありがとうございました!
次回はプレゼン論についてお伝えしたいと思います。
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