Sketch等でUIを写経することは著作権法に反するのか? その2

こんにちは、がくとんです。

今回は前回に引き続き、Sketch等で既存のUIを写経することは著作権法に反するのか というテーマについて考えていきたいと思います。
(前回のnoteはこちら)


UIの写経は著作権法上の「複製」に当たる

さて、まず初めに写経という行為が法的にどう捉えられるかを考えていきます。

写経という行為は、著作権法でいう「複製」という行為に該当します

複製 印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製すること
(著作権法第2条第15号より抜粋)

そして、この複製という行為は、基本的に著作物を初めに作成した著作者のみが持つことになります。(これを専有と呼ばれています)

著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。
(著作権法第21条)

ここで「え、じゃあSketchで写経することは権利の侵害になるの?」と思う方もいるかと思いますが、直ちにそうと判断されるわけではありません。

ここで「私的複製」という概念が登場します。

(私的使用のための複製)
著作権の目的となつている著作物・・(中略)・・は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、・・(中略)・・その使用する者が複製することができる。
(著作権法第30条より抜粋)

つまり、私たちが個人的に好きな画家の絵をコピーしたりするぶんには侵害にならない、というわけです。

なので、個人でUIを写経(複製)するぶんには、全くもって法律に反することはないということですね。


アップロードする行為は著作権の侵害に当たる?

「あーよかった。じゃあこれからもnoteでUIをあげても大丈夫なんだ」と思った方、まだ安心はできません。
次に問題となるのが、写経したUIをインターネットにアップロードする行為です。

インターネットのアップロードは著作権法では「公衆送信」に当たります。

公衆送信 公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信・・(中略)・・を行うことをいう。
(著作権法第2条7号の2より)


そして、この公衆送信は複製権と同様、著作物の初めに作った著作者のみが持っています。

著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
(著作権法第23条)

そして、この公衆送信権に関しては、先ほどの私的複製のようは侵害から外す規定はなく、本当に侵害となってしまいます。
(まぁ、不特定多数の人に見せる時点で「個人的、家庭的」とは言えないですからね・・・)

これらの法律の条文から考えると、Sketch等でUIを写経すること自体は私的複製とされ侵害には当たりませんが、それをインターネット上にアップロードしてしまうと、著作権(公衆送信権)の侵害になってしまう、と考えられる可能性があります。

いやーこれは困りましたね。


Sketchで写経したUIは本当に権利の侵害になってしまうのか?

ここまでの話を読んで、一刻も早く自分の投稿したUIを削除したい、と思っている方もいるかもしれませんが、もう少し話に付き合ってください。

一方、UIの写経が侵害にあたらない理由も複数考えられるのです。
理由は主に3つあります。

まず1点目。私たちの行なっている写経(複製)は営利活動でないということです。
UIの写経はなんら営利活動ではなく、あくまで個人的な練習として行っており、このため一般的な感覚として侵害の度合いはとても小さいと言えます。

参考として、営利を目的としない上演等が著作権の侵害にならないことを示した条文を参照しましょう。

公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金・・(中略)・・を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。(以下省略)
(著作権法第38条)

次に2点目です。
これは具体的な損害が発生していないということです。写経という行為によって、なんら著作物を作成した著作者が経済的不利益を受けていない以上、仮に侵害と訴えられたとしても、損害賠償等を算定することはかなり困難です。
せいぜい注意の中で削除をするよう言われるくらいに留まると思われます。

次が3点目です。
これは法律の規定とかではない一般論の話になりますが、これまでたくさんのデザイン初学者が、既存のUIの写経という行為を通じてデザインスキルを磨いてきた、という現実があります。
言い換えれば、この写経を通じていいデザイナーが生まれ、社会に貢献してきたといってもいいでしょう。

さらに、作ったものをインターネットにアップロードすることで、ネット上のデザイナーからフィードバックをいただいたり、新たな洞察を得られることを考えると、アップロードにも一定の妥当性が見られると考えられます。

これらを考えると、営利目的でない写経を著作権違反とすると、むしろ社会の表現全体の不利益となり、これは誰もが望む結果とは言えないと考えます。
したがって、「社会の表現の自由を守る」という観点から、この写経という行為は保護されるべきだと言えるでしょう。


まとめ ~正解のない部分を考える「法のデザイン」~

以上、侵害と認められる理屈と侵害とされない理屈の両方を述べました。
個人的には、写経したUIをアップロードすることが社会にとってもいい、という信念の元、作ったものをアップロードしていけたらいいと思います(有料としてアップロードしたら法律違反になる率が上がるのでしません笑)

この「UIの著作権」という分野はまだまだ法的には未確定な部分が多く、私たちが考えなければならない分野だと思います。
このまだ明確な正解のない部分を既存の法律の知識や社会の慣習から導き出すことを、「法のデザイン」と呼びたいと思います。

今回は少し長くなってしまいましたが、これからも法×デザイン の分野に果敢に挑んでいきたいと思いますので、応援よろしくお願いしまーす!

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がくとん

法学部の僕が、UX/UIデザイナーになるまで

大学で著作権を学びデザインに魅力を感じた僕は、UXデザイナー職の就職を決めた。このマガジンは、大学3年生の僕が0からUX/UIのことを学び、学ぶ中で直面した法律にまつわる問題を考察することで、「デザイナーを守れるデザイナー」になるまでの道のりである。
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