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距離感の代価

顧客との関係性で代価の基準を変えない。あくまでも商品(製品・サービス)の代価は価値と根拠を基準とする、という話

先日いただいた問い合わせをいただいた案件で、少しばかりレアなケースに遭遇した。

内容はあるエクステリア工事の依頼ではあったが、現地にお邪魔すると対象とする製品自体は最近取り付けたと思われるほど新しいものであった。

よく見ると部品の一部が破損しており、使用できない状態であったが他社が取り付けを行った工事だったため、先方に詳しい話を伺ったのだ。

「見ての通り壊れて使用ができなくなっている。設置したのは今年の春頃なんだけど」

ここまで聞いて思わず、であるならばクレーム事案として施工業者に修理を依頼しては?と言いかけたところ、どうやらその施工を行ったのは親戚の方が営む施工会社で、親戚のよしみで安く取付けまでしてもらった手前、このような事態になってしまったのも言いづらい間柄らしい。

私の所見では取り付け方も問題があり、言い方は悪いがプロの仕事とは言い難い仕上がりである。施工から半年も持たないのは完全な施工不良で、親族の間柄でなければ即クレームにつながる事態である。

致命的な部分の損傷が確認できており、お客様の方でも理解はしていたが新しいものに設置し直すほか方法はない状態である。しかしながら設置から半年での改修は弊社でもはじめてのケースであり、お客様も長く使えるようにしっかりと取り付け直してほしいとのご要望であった。

このようなケースは稀であるが、それでも親族や友人などの近しい関係でサービスを頼んだり、商品を購入するということはよくある話だ。しかしその際、決まって期待されるのが「値引き」である。

今回のケースは提供する施工会社側からの一方的で善意としての値引きらしいが「○○さんだから安くしとくよ」というセリフは実によく聞く。提供者が許容しているのならまだマシだが、発注する側がはじめから値引きを期待して近しい間柄に依頼するのはいささかおかしい現象ではないかと常々感じている。

他社より関係性が深い分、信用を担保しているというのなら依頼する動機も理解できるのだが、そこはあくまでもビジネスなのだ。近しい間柄ならなおのことしっかりした仕事に対して発生する代価はキッチリ払う、もっと言うならば少々多く支払ってでも仲のいい人に儲けてもらう、くらいの気持ちが欲しい。

関係性にかぎらず、提供者は依頼者のもとへ仕事として時間を割く。そこで行うことには当然のことながら時間以外に労力を必要とするのだ。それを信用を担保にしているのにもかかわらず、さらに値引きを要請しては提供者側は何ともいたたまれない。

同じ時間や労力を割くのならば赤の他人のところへ出向いた方が適正な代価を得ることができる。

よって、近い関係性での仕事はそうでない一般の顧客より気を使うのだ。今回のケースは提供者側の善意の申し出だが、関係が近い分、クレームになるようなことも伝えづらいということもある。

気持ちを考慮すると同じ内容の工事を行うので少しでも安く提供してあげたいのも山々だが、責任施工で適正な価値をお渡しする自信から値引きの申し出はしないつもりだ。その分仕事の内容で代価以上の価値を感じていただけるように努める所存。

それにしても工事を行った親戚の施工会社も間柄を考慮したしっかりした仕事をなぜしなかったのか、そこが一番の謎である。

価格設定に顧客との関係性を反映しない。価値は代価ではなく仕事内容で感じてもらう

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