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5月7日(土) 熊本日記② 移住を考える

天草2日目。いい場所なので、もう1泊も考えたが、同じホテルの部屋が空いておらず、天草の西の果ての温泉宿を予約する。

でも今日は気になっていた「本屋と活版印刷所」さんへ行きたかったのでホテルに車を置かせてもらいてくてく歩く。その地でしか買えない本なんてほとんどないはずなのに、それでも旅先で本屋さんばかりに行ってしまう。丁度その頃、柿内さんがツイートで「この地で買ったという記憶」と紐付けられると言っていてほんとそのとおりだなと思う。

本屋と活版印刷所は、ミシマ社専門の本屋さんで、ここまでミシマ社の書籍が並ぶ場所に行ったことなかったので本棚を見ながらワクワクする。ミシマ社の書籍は、どこか「頑張りすぎない、まあいい感じで適度にやろう」というメッセージが根底にあることが多くて、本を読むとすぐ影響されるので、顕著に頑張る気が落ちていってきている症状を自覚している。こないだポロポロ書店で買って読み始めた「少し低い孤高」とかまさに。

ところで適当にやろう、というとS.L.A.C.K.を思い出す。いま、あれ5lackなんだっけと検索してみたらこちらのページが見つかって、ああやっぱりSLACKが誕生しちゃって検索ヒットしにくいからなんだ〜とマーケティングっぽい部分があることに楽しくなった。これでたーのしくなった!

ゆっくりと時間をかけてひとつひとつの本を見ていって、益田ミリの「今日の人生2 世界がどんなに変わっても」や、平川克美の「共有地をつくる」をとても読みたいと思い、しかし旅先の荷物が増えすぎるのもどうかと思うので、厳選に厳選を重ねる。

その結果、あまり手に入らなそうだったので、森田真生の「みんなのミシマガジン」を購入。表紙から立体的ですごい。カバーかかってないとすぐ折れてしまう感じで、本屋と活版印刷所のオリジナルカバーが嬉しい。

オリジナルカバーかわいい

本屋さんのおそらく店主の方とお話し、ミシマ社の本屋がなぜここにあるのか、と聞くと嬉しそうにこれまでの歴史を答えてくれてこっちまで嬉しくなった。天草は、活版印刷技術が日本で初めて持ち帰られた場所でもあり、そういう意味では日本初の本がつくられた場所という話でもあるので、この地に素敵な本屋さんがあることがとてもしっくりくる。

2階に「本屋と活版印刷所の屋根裏」というカフェがあると聞いていたので、そのままお伺いする。青い、コバルトブルーというのだろうか、神秘的な空間で、異世界感がある。コーヒーを注文し、荷物をおろしゆっくりと本棚を見る。しばらくするとお店の方が、「甘いものでお好きですか、と聞いてきてくれて、コーヒーと一緒に昨日お土産でもらった赤福を添えてくれる。なんかめちゃくちゃうれしい。

本屋と活版印刷所の屋根裏

幸せな気持ちになって買ったばかりの森田真生の本なんか読みながらゆっくりと過ごす。途中で3歳くらいの子供を連れた女性がひとりでやってきて、こんにちはーなんて話す。その方は、お店の人と知り合いだったようだが、赤福をもらって「うわー超ラッキー!!今日来てよかったー!!」みたいな反応をしてて、その大げさな反応でニコニコ笑ってしまい、僕もああゆう反応を見習いたいなと思う。かつて初対面で攻めすぎた反省があり、どうしたもおすましさんになってしまう。もっとうまく気持ちを伝えたい。

その女性から「どこから来たんですか?」など話していくと、その方も日吉から移住した旨が知れる。僕も、移住する具体計画があるわけではまったくないが、もしするんだったら熊本だろうと思っている中で、移住を決意したきっかけを聞く。
すると、彼女は少し考えた上で言う。
もともとは仕事で一時的に天草に住むことになって、そうしたらいい感じだったんですよね。仕事もまあまあうまくいったし、地元の人とも仲良くなったし。そのまま、帰る理由がなくなってしまったという感じで、そのあとこっちの人とも恋愛して、結婚して。

なんだかすごく腑に落ちる。

移住はどこか、「よし行くぞ」と決意をして行く/元いた地を離れるものだと思っていたが、たぶんそんな決意をして行ったとしてもその先でうまくいく保証もない。大手を振って出ていった手前、戻る意思決定もしづらくなるだろう。幸せになるためにしたはずの移住がいつぞや苦しいものとなっていく。

そうではなく、現在と地続きの先にあるのが移住だ。飛行機だとか、電車だとか地続きでないアプローチを生み出したゆえに、距離/時間軸としても遠い地にいけるようになってしまったが、そうではなく地続きな移動が縄文人のころからやっていた人間の自然状態だろう。もしその場があわなければまた移動する、それを繰り返して、しばらくここに住むと「いい感じだ」という状態をつくること、それが一番心地良い状態なんだろうなと思う。

とてもいい時間を過ごさせてもらったお礼とともに、せっかく熊本だしこの地に縁がある方を思って坂口恭平の「苦しい時は電話して」を購入。日々息苦しいので。600円。結局本屋さんとあわせて、2時間近くいてしまった。

ランチをイタリアンで食べ、ホテルに駐車させてもらったお礼をし、車を走らせる。目指すは、街自体が世界文化遺産登録されているという天草の南の﨑津集落。

途中でカカシの有名な村に寄って、寄る前から写真を見てミッドサマーぽいなと思って、SNSあげようと頭に浮かぶ。行く前からSNSあげよう脳を思い浮かんでしまう自分にうんざりする。それでも、「ミッドサマー村」だとカカシの写真をTwitterにあげてしまう。1時間後くらいに、やっぱ地元のものをディスるような行為をしてしまったことが恥ずかしくなりツイ消し。この前後2時間Twitterのことばかり考えていて、超マインドフルでよくない。

﨑津集落について、道の駅でこの街の歴史を学ぶ映像を鑑賞。キリスト教が広まった地で、禁教令が出されたあとに隠れキリシタンが多く住んだ地ということで、当時の人たちの生き様を想像するだけで涙が出てくる。隠れキリシタンというワードは中学高校の歴史の授業あたりから好きで、しかも今は「チ。」の読みすぎだからかもしれない、活版印刷といい天草の歴史は自分の人生にとって何だか重要なキーワードが多いなあと思う。

﨑津教会、天気良かったー


﨑津集落や、﨑津教会など、のんびりとした街を歩く。地元の住民の方にこんにちはーなんていいながら。隠れキリシタンが踏み絵をさせられたという﨑津諏訪神社が、整備されてないせいもあるのだろうか、なにか感じてしまって去る。

そのまま車を北に走らせ、今日の宿のあまくさ温泉ホテル 四季咲館にチェックイン。速攻温泉&サウナ。お風呂はとろとろだし、サウナはいい感じに決まり、水風呂はなかったものの海眺望のテラスでの外気浴が最高で整う。夕食は、鮑の踊焼きが楽しかった。真犯人フラグを見ながら眠る。


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