読書記録

 最近、引っ越しをして、徒歩で20分くらいの距離に最寄駅がある環境となった。その代わりに最寄り駅そのものがそれなりに大きくなり、駅のすぐそばに立っているビルの一角に図書館が入っていることが判明した。
 ものは試しと地元に住んでいる時以来、久方ぶりに図書館に通い始めると、そんなに期待していなかった分、その快適さに随分驚いた。地元にいた頃は親が図書館の利用カードを作っていたから、僕が図書館で本を借りたい場合は親からカードを借りないといけなかった。そもそもどこへいくにも車がないと移動できない環境だったから、図書館に行くのも親が車を出せる状況であった場合に限定されていた。
 それでも地元にいた頃は頻繁に通っていたし、蔵書数が多い図書館であればあるほどかなり快適に、楽しく過ごせた記憶があった。今の図書館は、規模的には地元の図書館には及ばないものの、いこうと思えばいつでも行ける距離にあり、自分でカードを作成しているから自分のタイミングで借りることが可能だ。これがかなり楽しい。最低でも週に一度のペースで足繁く通って、あれこれ探したり借りたりしている。
 必然的に読書がまた日常に溶け込むようになり、これを機に読書記録をつけてみようと思い立った。今は多機能を備えているスマフォの時代だから、読書のみならず様々なことを記録するツールには事欠かない。手始めのつもりで、手近にあったアプリを使用し、今までに読んできたものを含め、かなり遍歴を遡って読書記録をつけてみたところ、その想像以上の読書量の少なさに愕然としてしまった。

 元々、自分ごときが本を読んでいる、なんて宣うと本当に読書が好きな人に嗤われるだろうし、第一、ちゃんと読書をされている人たちに大層失礼にあたるだろうと重々承知はしていたつもりだったが、それにしても、である。本はどれだけ読んだかではなくどのように読んだか、量より質を問うのが本当の読書好きだとも思うが、これほどまでに読んでいないのでは質を問う以前の問題だろう。稀にTwitterで自分は本が好きな人間である旨をそこはかとなく呟いていることを大変情けなく感ずる。思わずそんな風に落胆してしまうほどに、およそ想定外の読書量であった。
 一般論だが、誰しもが社会人ともなると、学生時代のように自分の自由に使える時間というものが少なくなる。特に、僕のようにどこかの企業などに勤めに出ていると顕著だと思うが、日々追われる仕事や通勤・食事や睡眠などの生活に充てる時間を差し引くと、読書に割ける時間というものが必然的に限られてくる。これは大抵の場合、致し方ないことではある。
 だが、学生時代を通算したとていっそ危機感を感じるくらいの読書量だったので、今年の密かなる目標でもあったのだが、積極的に本に触れる機会を作っていきたいと考えている。今は過去に少しだけ触れて、気になりつつも本格的に読み込むまでに至っていなかった作品を一つずつ読んでいくことにしている。天童荒太氏「悼む人」とか。

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