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水からいちばん近いところで【日記】

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なにかしらが欠落している僕ら。 楽しく過ごした1日。
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水からいちばん近いところで⑤ 【日記】Where is the key?

水からいちばん近いところで⑤ 【日記】Where is the key?

そしてようやく温泉へ。

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ただもう正直に言うと、今となってはこの頃の記憶が定かではない。結末を先延ばしにしたからこうなったんだ。3週間前の出来事を日記として書くこの苦難は、預言者イザヤも想定出来なかったことでしょう。日記の続きを楽しみにしていただいてた方には大変申し訳ないのですが、ここから先は、実際にあった出来事と虚構とが混在した日記というか、与太話としてお楽しみいただけたら幸いです。

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水からいちばん近いところで④【日記】ロイヤルエクスプレス

水からいちばん近いところで④【日記】ロイヤルエクスプレス

僕らは車から降りて駅に向かった。
高架上の駅のホームにロイヤルエクスプレスが到着したのを目にしたから。
この滅多にお目にかかることのできない超高級列車を間近で見てみようと急いで駅に向かった。

しかし近づけば近づくほど、見上げる角度がキツくなってぜんぜん見えなくなってきた。この近づけば近づくほど見えなくなるジレンマが、人生における何かを示唆しているのかもしれない。たぶん愛とか恋とかそういうもの。5

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水からいちばん近いところで③【日記】危うさとか儚さとか

水からいちばん近いところで③【日記】危うさとか儚さとか

「まだ水道が復旧してないところはだいぶ困ってるらしい」

カーテレビに映る被災地の現状を見て彼は言った。僕は「そうなんや」って言って視線を窓の外に向けた。

そこには平和な海浜公園があって、その向こうに整備された砂浜があって、その砂を瀬戸内海の穏やかな波が連れ去ったり押し戻したりしている。連れ去られたまま戻ることのない砂はどこへ行くのだろう?その砂の行方を辿るうちに、僕の意識も暗い海の底に引きずり

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水からいちばん近いところで②【日記】ゴシップをお与えください

水からいちばん近いところで②【日記】ゴシップをお与えください

僕らを乗せた車は海沿いの道を行く。
海はコバルトブルーで、沖合いでは無数の白波が一定のリズムで明滅している。

「風が強い日はこの道にまで波しぶきが飛び散ってくるんよ」

彼も海を見てそんなことを言った。しかしながら今の彼は運転をしている。彼はよそ見をしながら運転している。

僕は彼の目線をふたたび前に向けるために、この先にある石油工場で写真を撮りたいから、そこまで来たら車を停めてくれって頼んだ。

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水からいちばん近いところで①【日記】伊予柑をあげるよ

水からいちばん近いところで①【日記】伊予柑をあげるよ

僕らはコンビニで待ち合わせた。
遅れてやってきた友達は買い物するって言ってコンビニの中へ入っていった。
僕は大きめの空のダンボール箱を持っていたので外で待っていた。
少したって友達が缶コーヒーを持って出てきた。
そして彼は言った。

「サンドイッチを買わなくてよかった。危なかった」

「なんで?」

と、僕は彼に訊いた。

「財布をあけたら160円しか入ってなかった」

僕は彼が缶コーヒーとサンド

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