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〜花巻ことば 覚え書き 1〜

『おら、田舎者だがら、おしょすぢゃ〜』

何しろ方言は恥ずかしいと思っていた。上京して、必死に標準語を話そうとしていた。

それでも、方言だと気付かずに使ってしまう言葉や表現があったり、イントネーションはどうしようもなく、時々指摘されて恥ずかしかった。

一方、関西出身の友達は、堂々と関西弁で話していたし、沖縄出身の仲間たちは、故郷を好きなのが滲み出ていた。

離れているけど、想っている、大好きな故郷。色んな地方から来た人に出会ううちに、土地の言葉(方言)が恥ずかしいって、ちょっと故郷に申し訳ないような気がした。誇りを持って、堂々と生きていけばいいのだ。

私は祖父母の言葉を聞いて育ったからいくらかわかるけど、だんだん話せる人、わかる人も居なくなり、いつかは消えていってしまうだろう。

そんなのは残念なので、離れてはいるけど、故郷の言葉を残しておきたいと思った。

岩手は広いから、方言は地域によって違う。花巻の方言は県庁所在地盛岡や隣の北上とも少し違うし、県南は旧伊達藩だから違う表現があったりするし、山を越えた先にある沿岸部もまた地域ごとに異なる。

東京で岩手出身の方と出会うと、違う方言が面白い。

花巻といっても、平成の大合併後に編入したが、私の故郷はもともとは小さな稗貫郡の一つの町だ。だから、花巻ことばと言えど、厳密に言うと花巻市のさらに小さい町の方言である。

いつまで続くかわからないけど、想い出の方言を呑気に備忘録として書いてみる。

☆花巻ことば 「あ」

◎あぃや〜!

→びっくりした時に出る表現。「あらっ!」とか「あーぁ⤵︎」とかの感嘆詞

※用例

『あぃや、なんたらや〜』.…いたずらされた後に大人が気づいた時、『あーぁ、なんて事だ』

他に、残念な結果にショックを受けた時『あぃや〜⤵︎』…『あららー残念だ⤵︎』

びっくりした時『あぃや!!!』…『まぁ!』

香港アクション映画なとでびっくりした時も「アイヤー」って言うけど。



◎あだる

→脳卒中で倒れる事。寒暖差や漬物など塩分高めの食事をを好むことから高血圧の方の多い土地ゆえ、あだる人が多い。岩手は悲しいことに全国ワースト1だそう。

※用例

Aさん『あそこのじっちゃん、あだったず』

Bさん『あぃや、なんたら、ことだこと!』

…Aさん「あそこのおじいちゃん、脳卒中で倒れたんだって』

Bさん「え!?なんて事だ、大変だなぁ!」



◎あのなは、あのなす

→あのねやあのさ。話始めにつける。

※用例

『あのなは、ぺっこ相談しでごどあるんだども』…「あのさ、ちょっと相談したい事あるんだけど」


◎あめる→食べ物が傷みはじめていること。臭いが悪くなり始めたり、すっぱくなったりしている状態。腐るの一歩手前。料理業界では、いかれる、いってると言う。炎天下常温で持ち歩いたお弁当が、ちょっとやばいなー、食べたらお腹壊すかもって状態になってるとき、あめでら(傷みはじめてる)と言う。

※用例

食べようと思ったおこわのおにぎりが糸を引く『じゃっ!!このおにぎりあめでらじゃ』…「わーっ!!このおにぎり傷んでる!」


◎あべ

→(一緒に)行こう!!一緒にお出かけしたり、同方向に向かったり、一緒に車に乗って行ったりする時、「行こう!」という意味で、『あべ』と言う。類義語に『行ぐべし』…「行こうよ」。

※用例

これから家族旅行、グズグズして、なかなか出かけられない子供に親が一言『早ぐあべじゃ!!』… 「早く行こうよ!」


出かける娘に父から一言『駅までてでってやるがら、あべ!』…「駅まで(車で)連れてってあげるから、行こう」

おまけ。『阿部、あべ!』…「阿部君も一緒に行こう!」乱用するとからかいになるので用法にはご注意を。





おいでくださりありがとうございます。 不器用な料理人、たぬき女将が季節の食材、料理、方言にまつわるよもやま話を綴っています。おまけレシピもありますよ。