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一人ぼっちと痩せ我慢 #2年上のお姉さん

 僕は初めて異性と異性として意識した時のことをはっきりと覚えている。小学3年生の時の出来事だった。当時僕が通っていた小学校では4年生以上だと学校のクラブに参加することになっていて、3年生以下はクラブがないので授業が終わった後、早めに帰る時間割になっていた。

 当時僕はいつも一緒に遊んでいたというかつるんでいた子が二人いて、いっつも3人で遊んでいた。男の子とか女の子とかそういうのが関係ないと思えるくらい当時は感覚とかが似ててほぼ毎日3人で遊んでた。その日も3人で遊ぶ予定だった。

「ねえねえ、授業が終わったらさ何して遊ぶ?」
一番仲が良かったNちゃんが聞いてきて、僕とYちゃんは答える。
「すぐに帰らないでさ、ちょっとグラウンドの森で遊んでいこうよ」
「あそこならさ、クラブ活動の邪魔にもならないもんね!」
なかなか珍しいことなんだけど、通っていた小学校には森と呼ばれる自然あふれた本当に森っぽい場所がグラウンド内にあった。高学年になると、その森で遊ぶこともなくなっていくのだけど、当時3年生の僕たちは飽きることなく森で遊んでいた。

「ちょっとさ、奥の方に行ってみようよ。前キツネがいたって警備員さんが言ってたよ!」
Nちゃんが興奮気味に言ってきた。
「キツネいるのー!すごいすごい!探そうよ!」
YちゃんもNちゃんのキツネ発言につられてテンションが上がっていた。
「キツネ、見つかるといいなあ」
探検隊気分で僕らは森を歩いた。
まあ御察しの通り、キツネなんて見つかるわけなく帰ろうかという話になった。

「あれ、体育着の袋がない?」
「がわ君どうしたの?」
「何がないの?」
「体育着を入れた袋がなくって!」
僕が慌てて、あわあわしているとYちゃんが落ち着いた様子で言った。
「きっと教室に忘れて来たんじゃない?まだクラブもやってるから学校入れるよ!」
「僕、取りに行ってくる!先に帰ってていいよ!」
「わかってーじゃあまた明日ね~」
NちゃんとYちゃんと別れた僕は、学校の中に戻っていた。

クラブ活動は色々なクラブがある。
運動系から文科系と幅広くあって、運動系の場合は担当している先生の教室が更衣室として使われてたりする。僕のクラスも、上級生の更衣室として使われていたみたいだった。

「教室真っ暗だ・・・カーテンも全部しまってるけど入れるのかな」
僕は独り言をつぶやきながら、教室の扉をスライドするとまだ鍵はかかってなかったみたいで普通に入れた。中に入ると、誰もいなかったけれども、机と椅子が全部後ろに下げられていた。きっとスペース広くしてそこで着替えていたんだろう。僕の席は後ろから二つ目だった。全部机を動かすわけにもいかないので、下から潜って自分の席に行くことに。

「うーんうーん、あ、あった。やっぱり忘れてたんだ」
体育着が入った袋を見つけて安心した直後に、扉が開く音が聞こえた。
それと当時に、上級生の女子3人が喋りながら入ってくるのがはっきりと分かった。どうやら、クラブが少し早めに終わったみたいで着替えに来た様子だった。

「今日早く終わったねークラブ楽しかった」
「早く終わるのも良いけど、クラブ楽しいからもっとやりたかったね」
「そうだねえ。汗かいたし、もう早く着替えようよ」

僕は机の下で体育着の袋を抱きかかえて固まってしまった。
すぐに出ていくこともできず、かと言って声をかけるわけにもいかない。
決してやましい事をしているわけでもないのに、息をひそめてしまった。
ただ3年生の僕は静かにやり過ごすことができず、ちょっと体を動かした拍子に椅子が"ガタガタ"と音を立ててしまった。

「!!」
「誰かいるの!?」
着替えいている上級生にもばれてしまった。
こうなると黙っているわけにもいかないので、僕は顔を下にしながら机の下から這い出てきた。

「・・・ごめんなさい。僕、このクラスで、今日体育着に袋忘れちゃって、それで取りに」
僕は体育着をギュッと抱きしめて、視線を下にして言い訳を言った。
すると上級生は問い詰めたりすることもなく、やわらかい雰囲気で話しかけてくれた。

「なーんだ。忘れ物しちゃったなら仕方ないね」
「机の下から潜ったの?きみ、身体小さいもんね」
「そんな下向かないで大丈夫だよ。私たち別に怒ってないから」
顔を上げると、笑っている上級生3人。しかし着替えが中途半端だったみたいでインナー姿だった。僕はどうしていいのかわからずあわあわしていた。

「このクラスってことは君3年生だよね?」
「はい、3年生です」
「そっか、体育着はあったの?」
「うん、あったんです」
「それならよかったね。ねえ僕、今度はクラブの時とかは気を付けてね。君のクラスは女子の更衣室になってるから。まあ君みたいな子が何かって思われないだろうけど、女子は嫌がるからね。」
「・・・・はい」
「ほら、遅くなっちゃうから早く帰りな~」

上級生3人に促されて僕は教室を出た。
ちゃんと体育着の袋も持っている。忘れ物はない。
この時初めて、男子女子っていうところの違いのようなものを感じた。
女子はいずれ男子とも距離を置く。着替えをの時は全部カーテンも閉めて誰にも見られないようにする。上級生になれば当たり前だけど当時の僕はそんなこともわからない子供だったわけで。

これを機に、NちゃんやYちゃんと仲が悪くなったりすることはなかったけど男の子、女の子で色々と違うところがあるっていうことを何となく考えつつ遊ぶようになった。上級生の話を聞いて、いつか二人とも自分から離れて行ってしまうのではないかと怖かったし、嫌われてしまうのが怖かった。結局そんなことが起こることはなく、僕が転向してしまい疎遠になったけれども。

この時に優しく接してくれて、諭すように説明してくれた上級生には感謝しかないなあと思う。ここで怒鳴られていたりされたら、色々とトラウマになっていたかもしれない。年上のお姉さんって優しいなあとも思うようになった。その後、この上級生たちとは関わることはなかったけど、僕の中では結構大きい大事件だった。いつかどこかでまた会うようなことがあれば、ありがとうございましたごめんなさいとお伝えしたい。

がわ

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