【日御碕のウミネコ】
若かりしころ、当時の彼女と訪れた〈日御碕〉には、ウミネコが沢山いた。灯台の近くにある小さな島のようなところはウミネコでいっぱいだった。
〈日御碕〉に行く前に、彼女と2人で〈出雲大社〉を訪れて参拝したことを思い出す。
カップルで〈出雲大社〉に参拝すると、そのカップルは別れる、なんていう噂話を聞いてはいたが、そんなバカなことがあるはずはない。
ところが、以後数年も待たずに、彼女と別れなければならなくなってしまったのである。まぁ、それは偶然だとしても、縁結びを謳う神社なのに、変な「都市伝説」が噂になったもんである。
・・・・・・・
さて、そんな話は昔のことだ。
今日は家内と2人でドライブ。また〈日御碕〉にやって来た。
灯台に行く前に駐車場の近くのレストランで昼食を摂る。僕は〈かじめ蕎麦〉、家内が〈かじめうどん〉を食べた。〈かじめ〉という海藻が入ったもので、チョッとヌルヌルとした食感が身体に良さそうだし、味も中々のものであった。
カウンター席の窓からは外の景色が良く見えた。青空の下を歩く観光客の姿を眺めながらの、風情ある昼食のひと時となった。
「この〈かじめ〉って美味いなぁ、蕎麦も流石、蕎麦処だし、これにして正解だったな」
「父さん、うどんも美味しいよ」
「S子はうどん派だもんなぁ」
「しかし今日は天気がいいなぁ。ウミネコがいたら綺麗だぞぉ。青い空と真っ白いウミネコ❗️」
「そうだね❗️」
「昔さぁ、彼女とここに来た時はさぁ、ウミネコがいっぱいいてさぁ、ウミネコ島がウミネコで真っ白になるくらいだったんだよ」
「へぇ~彼女とね・・・それで〈日御碕〉に来たがるんだね、父さん」
「そんな訳でもないけどな。カップルで出雲大社に来ると2人は別れるって話があったけどさぁ、結局別れた訳よ。ま、そんなことがあったってことよ」
「ハハハッ❗️分かってるわよ」
還暦を過ぎた夫婦には、昔の恋愛なんて時効なのだ。
・・・・・・・
レストランを出ると、左右に土産物店が連なる道を下りながら、灯台の方へと歩いて行く。
何度訪れても〈日御碕灯台〉は真っ白で美しい。今日は特に天気がいいので、青空の中にクッキリと浮かび上がっている。
灯台を愛でた後、自称〈ウミネコ島〉の展望台に行ってみたが、昔、彼女と見たような、島を真っ白にするくらいのウミネコはいなくて、数羽が空を舞っているだけであった。
〈黄砂〉の影響からか、水平線がハッキリと見えないのが残念だったが、それにしてもいい天気だ。気分は上々、今日の晩酌は美味いだろうなぁ・・・こんなシチュエーションの中で、もう晩酌のことを考える僕なのであった。
そうだ、今から〈島根ワイナリー〉に行って、家内が大好きな〈赤ワイン〉でも買って帰るかぁ・・・
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