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【美食家気取り】

自慢する訳ではないが、ホテルの宴会課に勤務した経験がある僕は、一応、グレードの高い〈和〉〈洋〉〈中〉の料理の味を知っているつもりである。

そのホテルの料理人たちは、性格は兎も角としても、業界の中でもトップクラスの腕前を誇っていた。

僕は料理人ではなくて、宴会課のウェイターとして勤務していたのだが、大抵の料理を口にすることができたのである。まさか料理人達がウェイターの為に料理を食べさせてくれる訳ではない。色々な手段を駆使して味を知る訳なのだ。これはウェイターとしての勉強でもあり、仕事とも言えるのかもしれない。料理以外でも、1本が100万円もするブランデー〈レミーマルタン・ルイ13世〉の味見をしたこともある。

だから、決して気取って言っている訳ではないが、フレンチ・和食・中華の殆んどの料理の味を知っている訳なのだ。中華に至っては、幻の〈海燕のスープ〉まで味見した程である。

因みに〈海燕のスープ〉というのは、海燕が断崖絶壁の岩場の隙間に作る「巣」を具材にしたスープのことである。飽食の〈秦の始皇帝〉あたりを喜ばせる為に作られた「珍しい料理」なのだろう。〈海燕の巣〉がどんな物かと言えば、鯨の〈おばいけ〉を柔らかくしたような感じで、味は無い。

ところで、こと一流ホテルの料理に限って、例えば〈ローストビーフ〉〈コンソメスープ〉や〈サーモンヒューメ(スモークサーモン)〉などの、一般でも割と食される料理でも、ホテルの物は美味さが異次元なのだ。これは素直に認めざるを得ない。

当然、ホテルの料理人たちは、何れも高いプライドを持っていて、余程の高名なレストラン等を除いては、街中まちなかの料理全般を「街場まちば」と呼んで、格下に見ていたくらいである。

だからと言って、〈海原雄山〉じゃあるまいし、普段食べている外食や家庭料理を不味いと言っている訳ではないのだ。僕は〈スシロー〉の大ファンだし、家内の焼いてくれる〈お好み焼(広島風)〉に至っては、下手な店よりも美味いと認めているくらいなのだから・・

タマに家内が言うことがある。

「父さんはホテルで美味しいもん食べてきたから口が肥えてるよねぇ」

「当たり前じゃ❗️ホテルの料理はレベチだからな❗️肥えとるのは料理だけじゃないど❗️女だって少々の女じゃアレがピクリともせんわぃ❗️S子という最高の女房がおるからな❗️ガハハハハッ❗️」

「はいはい・・心にも無いことを」


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