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第2回 視覚障害のある教員として、小学生が社会に出る基礎を築く~片平考美さん~【後編】|マイノリティのハローワーク|現代書館
小学生から始まるキャリア教育 片平さんによると、障害の有無を問わず、キャリア教育は小学生から始まっています。クラスの仕事としての係活動に始まり、家のお手伝い、調べ学習を通し、働くことを考えていくのです。小学校高学年になると、将来の夢を見つけられるよう、授業を組み立てていきます。中高生になれば、内容はより現実的になり、給与明細を見て学ぶこともあります。 視覚障害のある小学生も仕事をする人について調べる学習をしています。「『13歳のハローワーク』(村上龍著、幻冬舎、2003年
第2回 視覚障害のある教員として、小学生が社会に出る基礎を築く~片平考美さん~【前編】|マイノリティのハローワーク|現代書館
片平考美(かたひら・ちかみ)さんプロフィール 視覚特別支援学校教員、日本視覚障害者団体連合(日視連)(注1)青年協議会(注2)会長。生まれつきの神経異形成症(注3)のほか、左目の緑内障(注4)、右目の白内障(注5)など眼疾患が重なり、元々ロービジョン(注6)であったが、小学1年生のときに左目を失明する。7回の眼の手術を経て、現在は左目失明、右目は視力0.4程度、夜盲(注7)もある状態。そのため、慣れない道や夜は白杖(注8)を使用する。 「みんなと同じでいたかった」小学校時
11.ローマのヴァッカーリ特別小学校:フルインクルーシブ教育のイタリアに残された特別学校|フルインクルーシブ教育の現場を訪ねて~イタリア・ボローニャ滞在記~|大内紀彦
2023年の春から始まったイタリア滞在だったが、クリスマスをトスカーナ州にある海辺の町ヴィアレッジョの友人宅で祝い、年の瀬をアパートのあるボローニャで慌ただしく過ごすうち、あっという間に新たな年が巡って来ていることに気づいた。年明けの1月の半ばには、今回の滞在では初めてミラノを訪れた。日本からやってきたイタリアの教育や福祉についての調査グループに便乗するかたちで、2泊3日の調査旅行に出かけたのだった。そして1月の末にはふたたびローマに向かった。いささか個人的な感慨を交えていえ
10.地域の専門機関が果たす役割:ボローニャのカヴァッツァ盲人施設が担う機能|フルインクルーシブ教育の現場を訪ねて~イタリア・ボローニャ滞在記~|大内紀彦
ボローニャの街の中央には有名なマッジョーレ広場があり、そこからわずかな距離にはこの街のシンボルとなっている2本の斜塔アジネッリとガリセンダが聳えている。この斜塔の足もとからは、旧市街を囲んでいる城門にむかって放射線状に主要な道路が何本も延びているが、そのうちの1本がカスティリオーネ通りである。斜塔を背にしてこの通りを南に20分ほど進むと、突き当りには城門の一つカスティリオーネ門が見えてくる。その少し手前にあってひときわ人目を引くオレンジ色の外壁の建築物、それがフランチェスコ・
番外編:ボローニャ近郊にあるC学校の校長へのインタビュー:イタリアの学校のインクルーシブな学習環境づくり|フルインクルーシブ教育の現場を訪ねて~イタリア・ボローニャ滞在記~|大内紀彦
5度にわたってC小学校を訪問するなかで、同校の校長にインタビューに応じてもらえるという幸運にも恵まれた。実際に学校運営の全体を担っている校長の立場から、イタリアのインクルーシブな教育をめぐる現状や課題について率直なご意見を語っていただいた貴重な証言となっている。インタビューは1時間半ほどの時間を割いて行われたが、ここでは日本の読者にとってとりわけ関心が深いと思われるものを抜粋し付載した。 C小学校の校長へのインタビュー ぜひ第9回とあわせてお読みください!
9.自閉症の生徒とクラスメイト:イタリアの学校のインクルーシブな学習環境づくり|フルインクルーシブ教育の現場を訪ねて~イタリア・ボローニャ滞在記~|大内紀彦
2023年の10月から12月までの3か月足らずの期間、2週間に1度ほどの頻度で自宅のあるボローニャから列車に乗り、アドリア海沿いのリミニからほど近い小さな町に通った。本連載の第3回と4回で取り上げたボローニャ大学の「支援教師」養成講座を担当していたアリーチェ・イモラ先生が、支援教師としてこの町の小学校に勤務していたからだった。実際にその町を訪ねてみると、その小学校は町一番の美しい広場に面していて、中央には円形の噴水が片隅には18世紀に建立されたアーチ型凱旋門が残されていた。
8.ICFモデルに根ざした個別教育計画と実践:サルデーニャ島での2度目の教育実習|フルインクルーシブ教育の現場を訪ねて~イタリア・ボローニャ滞在記~|大内紀彦
10月末のサルデーニャ島訪問からほどなく、11月初旬にこの島の州都カリアリを再訪した。拙訳書『イタリアのフルインクルーシブ教育』の原著者であり、カリアリ大学教授であるアントネッロ・ムーラ先生の指導のもと、2週間ほどの期間、現地の学校に潜入してフィールドワークを行うことになっていたからだった。「フィールドワーク」とはいえ、生徒たちが登校してから下校するまですべての活動を共にしたので、日本で10数年前に行った教育実習以来、さながら2度目の教育実習のようだった。 ぼくを受け容れて
7.インクルーシブな教育を継続させる「学校群」制度:ローマ、ボローニャ、サルデーニャ島の視察旅行|フルインクルーシブ教育の現場を訪ねて~イタリア・ボローニャ滞在記~|大内紀彦
まだ半袖でいられるほどの陽気だった10月24日(火)の早朝、深紅の車両の特急イタロに乗り込み、住まいのあるボローニャの中央駅を発ちローマに向かった。イタリア滞在を開始した4月から数えると、3度目のローマだった。古代ローマ帝国の遺跡が街中に溢れ、世界に名を馳せる無数の教会や美術館を擁する「永遠の都」ローマ。この類まれな都市を訪れる機会が幾度かあったのに、これまでの滞在では観光に費やせる自由な時間はいささかも捻出できないでいた。だから今回は、早朝7時台の列車でボローニャを出発して