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その成功譚に再現性はあるか

書店を歩くと、多くの成功譚に出くわす。「私はこうして成功しました」といった類の本だ。この手の本は多くのジャンルに存在する。

本に限らない。現代のインフルエンサーたちは己の成功の秘訣について自信たっぷりに語り、数字を稼ぐ。

結論から言ってしまうと、この手の話は眉に唾をつけて聞くべきだと思っている。

何をもって成功というかの定義は難しいけれど、とりあえず「成功譚を語っている人」というくらいの適当な定義にしておく。

成功譚から得られるものもある

最初に念のため書いておくと、そうした成功譚にはもちろん価値もある。

まず、成功者のエッセンスを学ぶのは大事なことだ。突出して成功した人は、常人とは違った視点や習慣を持っていることも多い。勝利にかける執念も並外れている。成功者と同じ手法を、別の未開拓の分野で試して成功した例も多い。

モチベ向上につながることもある。個人的に、プロジェクトX的な話は楽しんで聞くことができる。

再現性はあるか?

じゃあなぜケチをつけるのかというと、成功譚は再現が難しいことがあるからだ。理由はいくつかある。

・そもそも環境や条件が違う

成功者の生まれ、育ち、人間関係、資産、学歴や職歴をまったく再現することはできない。仮に再現できたとして、同じ時代を生きることはできない。仮にバブル期に成功した手法をいま繰り返したとして、成功する保証はない。

・成功すること自体がとても難しい

成功者の数は限られている。極端な話、仮に世間の野球選手が全員、イチローや大谷翔平のようなパフォーマンスを残すのであれば、イチローや大谷翔平が特段話題になることはない。

成功者が成功者たり得るのは、彼/彼女らが突出した、再現が難しいことをなし得たから。それを「俺も再現できる」と思ったり「お前も再現できるはずだ」と押し付けるのはいかにも危うい考え方に見える。

繰り返しになるけれど、成功者(ここで言う例では野球選手)のエッセンスを学ぶことを否定するものではない。プロ野球選手を夢見ることも否定しない。

・サンプル数が少ない

基本的に、サンプル数が多いほどその話は信頼できる。たとえば、世界中の80億人が全員再現できた方法なら、十分に信用できる。極端な例では、「コーラを飲んだらゲップが出る」ならほとんど再現可能だろう。

しかし、成功者の話はサンプル数が少ない。仮にその人1人が早起きしてメモを取って瞑想をして筋トレをして成功したからと言って、別の人が同じことをしたら100%成功できるのか?

・先行者利益

先行者利益を得て成功する例もある。競合に先んじて市場に参加することで、市場を独占するなどして得られるメリットのことだ。成功者は、この先行者利益を得ていることがある。

たとえば今から必死こいてiPhoneのパチもんを作ったところで、ジョブズのように成功することは難しいだろう。すでにiPhoneのシェアは大きく、それを追い抜くのは並大抵のことではない。

・結果論、後知恵

成功者は理路整然と語るけれど、彼ら自身も「何のおかげで成功したか」を100%理解していることは少ないのではないかと思う。

この世は複雑怪奇なので、成功には多数の要因が複雑に絡まり合っている。「〇〇だけすればOK」系の本がよく見られるけど、それは物事を単純視しすぎだと感じる。もちろん、そんなことは承知のうえで商売のためにタイトルつけてるんだろうけれど。

このへんをおちょくった本がある。ビジネス書のベストセラーを多読すると、互いに食い違う教えが多いことを示している本だ。たとえば「同じことをやり続けろ」と言う偉人と「同じことは続けるな」という別の偉人がいるとか。

このことから、「同じことをやり続けて成功した人」と「同じことを続けないで成功した人」の両者がいることがわかる。要は続けたかどうかは結果論で、必ず再現できるものではない。「一つのビジネスに注力し続けたから成功できた」人もいれば「思い切って事業を転換したから成功した」って人もいる。ケースバイケースなのだ。

まとめ

なんか読み返してみると、成功者をひがんで斜に構えてる人みたいだな。思ってることを素直に書いたらこんな感じになってしまった。

我こそ正義って人の話を真に受けすぎないのは大事だと思う。身近な信頼できる人の話は別で、きちんと聞くようにしているけれど。

統計は相対的に信用しやすい。例外はあるし、統計が恣意的に扱われている可能性もあるけど、サンプル数が多いから自分に当てはまる可能性も高くなる。

余談だけど、社会人になって最初の飲み会で先輩から受けたアドバイスが「話半分に聞いとけ」だった。世間知らずの自分が受けたアドバイスとしては有用なものだったと思う。

まとまりませんが今回の記事は以上です。

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