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透明な君へ『勝手にふるえてろ』

あらすじ

 中学2年生のころから、イチ(北村匠海)に思いを寄せる24歳OL、江藤良夏(松岡茉優)(以下、ヨシカ)。イチのことを好きすぎるヨシカは、脳内にイチを召喚したり、町の個性的な友達にイチのことを語ったり、圧倒的なこじらせっぷりを発揮していた。
 そんなある日、冴えなくもヨシカのことを好きすぎる男、通称「二」から猛アタックを受ける。
 ヨシカは、イチと二、どっちを選ぶのか。

自分の中のヨシカ

 ヨシカが歌っていた劇中歌の「この距離が私と世の中の限界 おじさんも私も透明だ」という歌詞にひどく共感し、そして感銘を受けた。
 人に迷惑をかけて嫌われることを恐れ、社会に参加せずどんどん透明になっていく感覚は、誰しも持っているものではないか。

 また、周りをあまり顧みない人たち、ヨシカ曰く、「本能型」の人たちを、内心バカにして、自分から遠ざけるくせに、離れていく二や月島来留美としっかり別れる度胸もない。
 来るものを拒み、去るものを追うという生き方は、自分たちの生きづらさを代弁してくれているようだった。

「勝手にふるえてろ」の意味

 最後にヨシカが放ったセリフ「勝手にふるえてろ」は、誰に対して、そしてどういう意図で言ったのか。

 私は、ヨシカが自分の恐怖心を克服するための、そして、これまでの自分との決別のための言葉であったと思う。
 二との喧嘩で、ヨシカは、二が自分を受け入れてくれる存在だと気づく。そんな二がいてくれたから、他者に、社会におびえる自分自身なんて、そんな恐怖心なんて勝手にふるえてろと、ヨシカは、自分自身から恐怖心を切り離すことができた。

イチとはなんだったのか

 イチの特徴を考えてみると、絶滅危惧種が好きで、自分のことを見て欲しがり、人の名前を覚えない。と、ヨシカとかなり共通点が多いことに気づく。
 しかし、明らかに違う点もある。それは、人望があることだ。
 つまり、人気者版ヨシカなのだ。

 こういったタイプは、周りからは問題がなさそうに見えても、本人は、ヨシカのように自己評価と自己愛のギャップに苦しんでいることも多い。
 周りが気づいてくれない分、案外ヨシカより危険かもしれない。

透明な私たちへ

 ヨシカは自己評価が低いくせに、自分への愛は一層強い、超こじらせ女子だ。そして、私(筆者)もだ。
 しかし、ヨシカはこれから、透明だと思っていた自分の色を、二に教えてもらう。
 そして、自己愛の強さゆえ被害者ぶっていた態度を、また二に気づかされることだろう。

 私も、自分の色を教えてくれる仲間を大切に、また、出会っていけたらいいなと思った。

感想

 松岡茉優の演技に感動。特に表情。

画像引用元
映画『勝手にふるえてろ』公式Twitter
https://x.com/furuetero_movie?s=21


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