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読書感想 夏目漱石 永日小品

 芥川龍之介の随筆に、たびたび「小品」という言葉が出てきまして、私は小品とは掌編と随筆の中間のような、短い作品なのかなあとなんとなく思っていました。

そんな折、夏目漱石の新潮文庫「文鳥、夢十夜」を購入したところ、最後の解説に小品についての解説がありました。

日本の近代文学には、「小品」と呼び慣わされた独自のジャンルがある。小説ともつかず、感想ともつかず、いわば短編小説と随筆との中間に広がる曖昧な領域なのだが、小説のように身構えることをしない、いたって自由な語りくちが、逆に、小味ながらあざやかな感動をたたえていたり、ふかい情感に裏付けられた新鮮な表現を手に入れていたりする。

新潮文庫「文鳥、夢十夜」
322ページ

なるほど。そうなんだ…と納得しました。

永日小品は、小品の部類に属する25の作品群です。
日常のなんでもない風景を切り抜いたものから、短編小説に近いものなど、作風の幅が非常に広いのが特徴です。

「夢十夜」に近い、怪異で幻想的な雰囲気を帯びた掌編のような作品もある一方で、
だから何なんだっていうような、オチのないエッセイみたいな作品もあります。というより、「だからなんなんだ」っていう作品しかないような気がします…。

それでもやっぱり、随所に「おかしみ」が感じられまして、ただの随筆ではないのだなあと感じます。

私はホラー好きなので、「蛇」「印象」「火事」「霧」「声」「心」が好きです。とても短い作品ですか、物語の輪郭がつかめないまま、すべてが謎で終わる儚い雰囲気が大好きです。

あとは、「変化」「クレイグ先生」という、随筆に近い作品も「おかしみ」が感じられて好きです。


筋書きがはっきりしない、短い小品という文章は、解説にもある通り身構えなくて良いぶん直球に、なおかつ新鮮に心に入ってきます。また、随筆のような傾向も備えているので、「そういう事あるよね…」という共感に近い不思議な読後感が残っていいですね。


読んでいただきありがとうございました。皆様の幸運をお祈り申し上げます。


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