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ウルグアイ 9 政治歴史編

 ウルグアイといえば(?)世界一貧しい大統領とも呼ばれたムヒカ大統領。大統領になっても収入の90%は寄付にあてて本人は古い車に乗り畑も耕す素朴な生活を続けたことが有名です(一部の中で)。リオでの国連の会合でのスピーチは資本主義の社会を彼の視点で語っているスピーチは聞くたびに新しく思うことがあります。
 ムヒカ大統領も含めウルグアイ国民は左派政権が選挙で国の代表になり、それが15年続きました。 2020年3月に成立したラカジェ・ポウ大統領*は右派連合から久しぶりに当選しました(僅差で)。ウルグアイは南米の中でも格差が少なく教育水準も高い、政治に対する意識も高いのでそれぞれの大統領選での動きを知るのはターニングポイントを知れて面白いです。
この記事では中沢 知史氏の論文*を参考(ほぼ抜粋)しウルグアイの政治の歴史に少し触れます(日本の研究者の方の視点は欧米の研究者とも中国の研究者ともまた別の視点で、バランスがとれていてすごく面白いです)。

*トップ写真はAFPニュース記事より引用

*ラテンアメリカレポート

https://www.jstage.jst.go.jp/article/latinamericareport/39/1/39_32/_pdf/-char/ja


左派政権のレガシー

 左派は基本的に経済発展より社会的な平等な政策を優先するイメージですが左派政権 15 年間(2005~20 年)の実績については、右派連合も認めざるをえません。21世紀以降のウルグアイ経済は、2010年以降は下り坂の傾向にあるものの、コロナ禍直前まで持続的に成長してきました(図1、2)。
(左派政権を毛嫌いしている人も多くいる欧米の(?)政治家はこれをどうみているのか気になります。)



僅差での当選

軍人出身で、2019 年 3 月に陸軍総司令官を解任されたギド・マニーニ・リオス(Guido Manini Ríos)が新党「カビルド・アビエルト」(Cabildo Abierto:CA)を結成して大統領選挙に出馬し、主として軍人とその親族を支持基盤とし、ウルグアイ独立の英雄アルティガスに依拠した愛国主義や、家族を社会の基礎として重視する伝統的な価値観などを理念に掲げ、とくに首都から遠い内陸部で支持を広げていました。大接戦となった決選投票でカビルド・アビエルトはラカジェ・ポウを支持し、第一回投票で単独ではマルティネス(左派)に及ばなかったラカジェ・ポウの当選に貢献しました。


都市部と地方 リベラルと保守

 その後の選挙でも右派連合は19 県中 15 県で知事を当選させ、党勢を拡大することに成功しました。1989 年以来 6 期連続で拡大戦線が知事を務める首都モンテビデオ県については、今回の大統領選も拡大戦線が勝利しました。都市はリベラル、地方は保守が強いというのはわりと起きがちなのでしょうか(? もしこの点に詳しい方がいたら教えていただきたいです)
 ※ウルグアイの国民は政治に対する考え方は様々な歴史を経験しているからかしっかりしている気がします。右派が正しい、左派が正しいとかそれを超えている感覚です。チリのピノシェ政権と同じように過度に新自由主義を推し進めた(推し進めるように誰かにされたのかもしれませんが)軍事政権*を経験しているかもしれません。

 *1976年に大統領となったメンデスは、チリのピノシェ政権と同じように新自由経済政策を採用して経済成長を図りました。軍事政権が軍政を正当化するために憲法改正を目論んで国民投票に持ち込んだが、国民の多数が反対して失敗し、それを機会に軍政批判が強まった。

ラガジェ・ポウ大統領の政策

冒頭で紹介した論文では5つのポイントを示していました。
(1)左派のレガシーを受け継ぐ穏健路線
(2)実利優先の通商政策とイデオロギー上の方針転換
(3)治安強化策
(4)緊急法の制定

この中でも3と4はエルサルにも何か共通するところがあります。(ブケレ大統領は治安維持の政策が大きな支持の理由になっています。また4に関しては通常法を超えた例外措置を今も続けているところが(今月で第21回目、2年になりそうならそれは例外措置ではないのではというつっこみもあります)

その中でも治安強化という点はウルグアイでもキーになっているようです。

次回記事はそこについて掘り下げてみます(予定です)。

ムヒカ大統領のスピーチの記事はこちら


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