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Re:便利屋花業 ⒑通常営業 恋愛小説

猫動画の見すぎで、今日は全身がだるい。
急ぎの仕事は入っていなかったが、まどかは気まぐれに事務所に顔を出した。

「まどかさん。いいところに」
いそいそと綾が寄ってきて、メモを取り出す。
どうしたら、色気は出せるのか。
あくびの涙をぬぐっていたまどかは、目をぱちぱちさせた。

「人選ミスだろ?」
廃人まがいとけだるさを、はきちがえているようだ。
「なんかいい匂いするのは、香水ですか?」

あまりにもまっすぐな目をしていることから、からかわれているわけでは
ないらしい。
やれ血色がいいだの、くびれがキレイだのとおだてられ、まどかは困惑する。

「綾ちゃん、大丈夫?PMS?」
女性ホルモンに良いという、豆乳でもすすめようか。
秘訣を聞かれても、なんのことやらわからない。
食事の話になり、カレーや麻婆豆腐、あったかい鍋料理をよく食べていることに気づいた。

「わあ。それ、冷え性改善レシピですね。タンパク質も豊富だし」
「代謝はいいほうかも。食べたらすぐ暑くなるし」
なるほどと、綾は感心しきりのようす。
土いじりが運動代わりになっているかも、と思いつきも付け足した。

***

「色気のある女って、どんなの?」
家電の業界誌を読んでいる秋葉に、疑問を投げかける。

真意をはかりかねたのか、彼は軽く首をかしげた。
「綾ちゃんがやたらほめてくるんだけど、ズレててかわいいよねー」
膝に常駐している陸のあごを指先でウリウリしながら、今日の顛末てんまつを話してきかせる。

秋葉の耳の後ろあたりに鼻を近づけ、クンクンしてみる。
「このへんからフェロモン出てるって、ほんとかなあ」
雑なしぐさで、引きはがされた。
「危険人物だから。相当」
「ん?なんで」

抱きたくても抱けない期間というものがあり、今はその真っ只中ただなかだと、教授ばりの凛々しい表情で講釈を垂れる。

「おまえのご主人無頓着むとんちゃくだから、オレが大事にしないとなー」
いつのまにやら、陸をなでる手つきも堂に入っている。
「把握されててコワ…って思ったの、撤回しとく。一応」

(つづく)
▷次回、第11話「まどか、相棒とまったり」の巻。



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