Re:脚本ユニット 一ノ瀬姉妹 ⒈天才と凡人 580字 全7話 目次 完結済み リンク有
私は妹に劣等感がある。
自称社会不適応者である伊織の日常をサポートしていると忘れがちだが、それはふとしたときに顔をのぞかせる。
ずっとここにいましたよ、とばかりに。
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「また爆買い?」
今日も今日とて横綱級の荷物が届き、純はうんざりしながら箱を開封した。
「えー、だれ注文したのー。あ、おととい酔っぱらいながら密林を徘徊したような…」
にゃは、と笑いながら、伊織は2、3冊取り出し、なかなかのメンツだとうなずいている。
そして、立ったまま集中モードに突入。
そのほうが血液の循環がよくなってはかどるのだと、PC作業用にスタンディングデスクも買わされた。
読み飛ばしているわけではないそうだが、とにかく読むのが速い。
常人の5倍のスピードで読みきったあと、そのへんの紙に思いついたことを書きなぐる。
残されるのは、半開きの本たちと紙の散乱した部屋。
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「せめてノートに書いてよ」
「開けるのメンドイ」
伊織用にコピー紙をあちこちに置いているから、いくら掃除してもすっきりと整わない。
その一枚一枚を拾い集めPCに入力して保存するのが、純の役目だった。
これはもう共同で仕事をしているというより、完全なる「天才とそのマネージャー」という構図である。
「来週、映画の舞台挨拶あるんだけど」
「純ちゃん、よろしくー」
言うだけ無駄か。
メディア対応や関係者との打ち合わせなどは、すべて純が受け持っていた。
(つづく)
*23年7月に公開していた作品です。
加筆・修正し、分割して再掲します。
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