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カフェにて

「え〜っ!その人ホントに好きなんですか〜!?」
となりの机から元気な声が聞こえてきた。

今日は色々と調べ物や考え事をしようとカフェにきた。外を見ながらゆっくりしようと2階の端っこの机に陣取り、PCを開いてカチカチやって、やっと一段落ついたとき、入店してきたOLらしき二人の女性がやかましい。

1〜2時間ほど喋っていただろうか。本を読もうとした矢先だったのだが、何かと引っかかる言葉を連発するので無視することもできず、文字を目で追うふりをしながら聞き耳を立てた。

一人はアラフォーと言っていた。仮にAとしよう。もう一人は30歳前後といったところか。仮にBとする。化粧品会社に努める彼女たちの話題は転職と結婚だった。

Aはもうすぐ転職するらしい。40日ほども残っている有給を消化したあと、職業訓練校に通い、オフィスソフトを習うという。その後は彼氏がいる仙台に行くとか。

しかしこの彼氏、なんとも煮え切らない態度をとっているらしく、それを受けてのBの発言が冒頭の一言である。

奈良で生まれたAは東京で就職し、その後北海道に転勤。そののち、仙台にも転勤となり、そこで今の彼氏と出会ったらしい。今は更に転勤して東京におり、遠距離恋愛をしている。

Aは直接会っていないと彼氏に対する好きという気持ちを忘れてしまうらしく、「私、遠距離恋愛向いてないんだわ。」と乾いた口調で言っていた。

Bが質問する。
「じゃあ、今結婚してくれって言われたら、します?」
少し考えながらAが答える。
「う〜ん。私、仕事好きなんだよね。」

仕事を変えたいとは思っているし、恋愛もしていたい。「アラフォーもらってくれる男なんかいないよ。」という友人の言葉も突き刺さっている。だからこそ仙台に行くわけだが、仕事が好きだという気持ちを捨てきれず、こっちはこっちで煮え切らない。それがAの現状のようだ。頑張れ。A。

Bの生まれは九州。宮崎県である。彼女は転職して地元に帰りたいと思っているようだ。毎日残業で、家に帰る頃には23時を回っていることもしばしば。次の日もゆっくり起きられるというわけではなく、疲れがたまる。接客というものにも辟易しており、もっとゆったりと、自分の時間を保ちながら働きたいと考えている。

色々な働き方があるのだなと、改めて思った。私は普段テレワークで、どんなに残業をしても夜8時台くらいには終わることがほとんどだ。もちろん、お給料など比べられていない面は他にもあるが、自分は恵まれているのだろうと感じた。

「宮崎に行って何するの?」
とA。
「う〜ん。工場とかでも良いんですけどね〜。」
軽い口調でBが答える。
「全然違う仕事だな。とことん接客が嫌になってんだな。」
と私の心の声。

A「昔工場で働いたことあるけど、工場の女の人って…。みんなタバコ吸ってた。」
B「へ〜。じゃあ私合うかも〜。」
A「うん。合うかもね。」
心「へ〜。合うんだ。」

その後は職場の愚痴が続いた。あそこの店長は嫌われてるだとか。私には優しいだとか。店長総入れ替えは何の意味があったのかだとか。いくらでも出るものである。

しかしながら、何事も永遠には続かないもので、彼女たちは席を立ち、階下へと姿を消した。

私は本を読み始めた。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!