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汝、星のごとく


読書感想文なので切り取り方も表現も個人的な感覚ですが、お許しください。

プロローグで立ったフラグを、
本編からのエピローグで回収するわけですが、それがまずお見事。

心理描写も深いし、文章も美しく、現代社会の問題もいくつも盛り込まれていて……読んでいて途中どんどん辛くなるのに、引き込まれ夢中になりやめられない。
そして最後は心が落ち着くべきところに何とか落ち着きました。

風光明媚ではあるけれど世間が狭くプライベートが無い様な島がひとつの舞台です。噂話が瞬く間に広がる、住んでいる限り逃げられないという……なんとも恐ろしい環境。

さらには、私の苦手なタイプの母親が2人も出てきました。
櫂の母は、心がひ弱で自分勝手、
それを隠そうともしないうえ自覚がない……
好きな男が出来ると小学校低学年の子供を何日も放置出来ちゃう人。
櫂はその母親が男に捨てられる度慰めて、
中学からスナックを手伝っていて、
中身が大人びるしか無かった男の子。

曉美の母親は夫が他の女性と暮らしてから精神を壊し……娘にあらん限りの精神的重圧をかけることになる人。
櫂の母親と同じく心が自立してなく、他者に頼るし他者のせいにしがち。
曉美の理想の母からは遠いにも関わらず娘には理想を押し付け期待で苦しめ、さらには精神的にも経済的にも頼ることで娘の人生を大きく変えてしまった人。

同級生の2人が高校生の時、あろうことか「お父さんを連れ戻してきて」と明らかに精神が不安定な母が曉美に無茶ぶり。成り行きで櫂が一緒に行くことに。殆ど話したこと無かった2人だけど、似た境遇だけに誰より楽な相手になるだろうこと惹かれあうであろうことは想像に容易く、2人にとって1番良い時期だったであろう島の高校生であった2人の関係がまず描かれていました。凄く良い感じ運命的に合いそう。

2人の母親とは対象的な、曉美の父のパートナー瞳は自立した女性。
皮肉にも曉美の人生にとって必要な言葉をくれ実際経済的精神的に自立した女性になる為のサポートをしてもらった相手となりました。

瞳さんが一貫して曉美の選択や人生を第1に考えて援助を申し出るのと対照的に、原因を招いた父親が母の世話を一貫して押し付けるばかりでなく、何かと理解が無いこと。
お父さんの恋がきっかけで、曉美がヤングケアラーになり、そのまんま大人になって、生活に追われて、運命の人とも遠距離恋愛になり結果心がすれ違っちゃったんだけど、って……これまた腹立たしかったです。

それまでの努力が実り、高校卒業と同時に漫画作家デビューを果たした櫂と、女性の自立にまだまだ厳しい地方の島で母の全てを背負って生活する曉美にすれ違いが生じるのもこれまた想像に容易くて。

2人も何度となくタラレバと考えを巡らせますが、一緒に上京して欲しかったなぁと、読者としてもとても口惜しく。それは自分が子を持つ母だから、余計感じるのかもしれない。

最後は穏やかに美しく小説は終わりますが、
どこか切なくやりきれない気持ちは、正直最後まで残りました。(個人差ありそうですが)

また、私は母親であり娘でもあり鑑定師でもあり、リアル社会でそうもの身近で多く見聞きしてるのもあるのかも。

置かれた状況や立場、考え方でまた感想は変わりそう……。

ヤングケアラー、同棲愛、SNSでの悪意や炎上、女性の自立問題、地方と都会との格差、
新興宗教、毒親等も絡めつつ、2人の人生が交互に描かれます。

2人と関わった魅力ある人々が登場して、そこはとても温かく心強く救いでした。編集者のお2人、瞳さん、そして北原先生……です。


とにかく凄い作家さんで
素晴らしい作品とも感じました。

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